情報整理や資料作成などあらゆる業務を
AIでカバーするプラットフォーム
2025年12月10日、アドビはAI搭載のプラットフォーム「Adobe Acrobat Studio」の一般提供を開始した。本プラットフォームは、同社が提供するPDFソフトウェア「Adobe Acrobat」の新たな製品ラインアップとして追加される。本記事では、PDFでのAI活用を推進して業務効率化に貢献するAdobe Acrobat Studioの特長と共に、AI製品を日本に先行して提供している米国でのユースケース・企業におけるAIトレンドを紹介する。
従来のAcrobatから進化した
生産性を上げるプラットフォーム
アドビは12月10日の発表に先行して、11月27日に「Adobe Acrobat Studio」(以下、Acrobat Studio)についての記者説明会を開催した。説明会ではまず、アドビ Document Cloud プリンシパルプロダクトマーケティングマネージャー 立川太郎氏が登壇し「営業やマーケティング、エンジニアといった専門性を持った職種を指す『ビジネスプロフェッショナル』は、Acrobat Studioのターゲットユーザーです。そしてビジネスプロフェッショナルは、生成AIの登場によって三つの大きな変化に直面しています」と切り出す。
「まず一つ目は仕事のペースが速くなったことで、より大量のデータを短時間に読んで理解する必要が出てきたことです。二つ目は情報が溢れていることで、より質の高いアウトプットを早く出さなければならなくなったことです。さらには、アウトプットをきちんと伝えるストーリーテリングも重要になってきます。三つ目は、複数の人やAIとコラボレーションをする必要が発生したことです」(立川氏)
こうしたビジネスプロフェッショナルの課題を解決し、大きな価値を提供するために登場したのがAcrobat Studioだ。PDF編集、AIによる情報整理・共有、コンテンツ制作を一括で実現する新製品になっている。また本製品は「Adobe Acrobat」(以下、Acrobat)の製品ラインアップで、最上位のプランという位置付けになる。

立川氏は、Acrobat Studioを以下のようにアピールする。「今までAcrobatというと、主にPDFの編集ツールという認識があったかと思います。ですがAcrobat Studioは、過去32年で最大の変革を行っています。PDFの編集だけでなく、資料作成、編集、文章の読解まで一気にカバーできる、包括的なプロダクティビティプラットフォームに進化しています」
資料の要約・翻訳も可能
回答の出典を引用リンクで確認
では、Acrobat Studioの詳細を見ていこう。本製品で使える機能は主に四つある。
まず一つ目は、Acrobatだ。Acrobat Studioでは、PDF編集や結合、スキャン、電子契約機能など、Acrobatの有料プラン「Acrobat Pro」の機能を全て使用可能だ。
二つ目は、複数の資料やWebページを一つのワークスペースに集約可能な「PDFスペース」だ。資料などをワークスペースに集約した後は、投入した資料の内容をAIが要約・翻訳してくれる。加えて、エージェント型AIアシスタントに質問して回答や提案を得ることも可能だ。回答にはクリック可能な引用が付いているため、出典をすぐに確認でき、情報の正誤検証も簡単に行える。さらにPDFスペースは共有が可能なため、チーム共通のナレッジハブとしても使えるのだ。ちなみに共有されたPDFスペースは、Acrobat Studioのアカウントを持っていない人物でも確認できる。

三つ目は、AIアシスタントのカスタマイズだ。PDFスペース内のAIアシスタントはデフォルトのほか、「インストラクター」「アナリスト」「エンターテイナー」といった特定の役割を割り当てられる。この役割によって、例えばインストラクターなら教師が生徒に説明するようなスタイルで回答を提示し、アナリストならロジカルなフィードバックを出してくれる。目的に応じて適した性格を選べば、より適切なアウトプットを受け取れるようになるのだ。

四つ目は、同社のデザインツール「Adobe Express」だ。同製品のプレミアムプランの全機能とアセットにアクセスできる。プロが作成したテンプレートを活用したり、承認済みアセットの保存と共有が行える「ブランドキット」を使ったりして、簡単にSNS投稿やプレゼン資料を作れる。

最後に立川氏は本製品の発表に当たり、Acrobatの生成AIに関するアプローチを以下のように説明した。「伝えたい点は四つあります。まず一つ目は時間の節約とツールの統合で、実質的なROIを達成できることです。二つ目は引用リンク付きの回答で検証を容易にし、情報の正確性と透明性を確保していることです。三つ目は顧客データをAIモデルの学習に使用しない設計で、ユーザーの情報を保護することです。そして四つ目は当社でAI倫理原則を策定し、製品開発に当たりAIガバナンスを徹底して、セキュリティを担保していることです」
Acrobatの認識が変わった
膨大なデータの活用を支援
立川氏に続いて、アドビ Document Cloud プロダクトマーケティングディレクター 山本晶子氏が登壇し、AI製品を先行販売する米国での導入事例とAIのトレンドを紹介した。
山本氏は「Adobe Acrobatの生成AI機能『Acrobat AIアシスタント』を米国で発売してから1年がたちました。その間にAcrobat Studioの販売も米国で進めていました。そうした中で幸いなことに、米国やヨーロッパなどさまざまな国のお客さまとお話しする機会があり、いろいろなフィードバックをいただきました」と前置きし、フィードバック内容の分析を次のように話す。「生成AIツールが日常的に使われているトレンドが見えてきます。特にビジネスプロフェッショナルの皆さまは、一つ、もしくは複数の生成AIツールを目的に応じて使い分け、日々の業務を行っています」
そうしたトレンドの中でAcrobat Studioは、顧客から好評を得ているという。「お客さまの声で一番うれしいのは、『Acrobatに対する認識が大きく変わった』というものです。Acrobatはおかげさまで32年もの間、皆さまに使っていただいています。だからこそ淡々とPDFを作成したり編集したりなど、日常業務の一部になりすぎていました。ですが、皆さまが扱う情報量はどんどん増えています。膨大なデータを使っていくために、Acrobat Studioは便利なツールになっています。慣れ親しんだAcrobatのUIでAIアシスタントやPDFスペースが使えるため、認識が変わったという声をいただきました」(山本氏)

続けて山本氏は、Acrobat Studioのユースケースについてこう語る。「一般的なユースケースは主に五つあります。まず一つ目は営業です。今まで膨大な時間を費やしていた事務作業や、新しい顧客についてのリサーチでAcrobat Studioを活用しています。これにより、より多くの顧客と話す時間が取れているそうです。二つ目は財務です。ファイナンスの用語は難しいものがあるので、PDFスペースを利用して、他部門の従業員が見ても分かりやすいレポートを作っています。三つ目は法務です。複雑な契約書の変更点を見つけるために、PDFスペースを利用しています。四つ目は人事です。研修資料の作成や、その資料の一括配布などでPDFスペースを活用しています。五つ目は調達です。PDFスペースで提案書、認証情報、ベンダーデータを一括管理したり、提案書の差分/コンプライアンスチェックをしたりといった使い方をしています」

最後に山本氏は、Acrobat Studioの展望を次のように話した。「PDFスペースをナレッジハブとして、当社のほかの技術の良い点も組み合わせながら、新しいものを作っていけるような開発を進めています。Acrobat Studioのユニークなユースケースは、本日紹介したもの以外にも多くあると考えています。ぜひ日本のお客さまにも使っていただき、日本独自のユースケースを勉強していきたいです」

