古いPCをChromebook化するOS

「ChromeOS Flex」は、Googleが無償で提供しているWindowsやMac用のOSだ。Googleのサイトによれば、「インテルまたはAMDプロセッサーを搭載したほとんどのPCでChromeOS Flexを実行できる」と説明されている。反対に、ARMアーキテクチャはサポートされていない。2023年4月10日時点で公開されているChrome OS Flexが正しく動作するかを確認した「認定モデルリスト」によれば、国内の代表的なPCはほぼサポートされている。

 ただし、機種によってはGoogleによる検証期間に制限があるので、更新するPCには注意が必要となる。例えば、レノボのThinkPadシリーズでは「ThinkPad X201」シリーズが2023年でGoogleによる検証サポートが終了する。反対に「ThinkPad E14 Gen 2」などは2030年まで対応が検証される。この検証サポートとは、Googleが対象機種を認定モデルとしてテストし続ける期限を示している。期限が切れた機種は、認定モデルリストに表示されなくなる。また、Googleのサポートの対象外となると、意図しない問題が発生したり、その問題が修正されない、というリスクが生じる。

 Googleでは、あくまで認定モデルへのインストールを推奨しているが、リストにない機種でも試験的な利用は可能だ。Chromebookのように、サポート期間が切れたらChromeブラウザーも更新されないといった制限はない。ただし、機種によっては、画面の自動回転、Bluetooth、タッチスクリーン、SDカードスロット、キーボードのショートカットやファンクションキーなどが利用できないケースもある。そのため、ChromeOS Flexの提案に当たっては、事前に客先のPCなどを調べておく方が良い。

ChromeOS Flex更新の準備と手順

 古いWindows OSやmacOSで動作しているPCをChromeOS Flexに更新するためには、起動可能なChromeOS Flex USBドライブを作成する。必要な準備はこれだけだ。USBドライブの作成には、PCとChromeブラウザーがあれば良い。

 作業手順は、Googleのサイトでも詳しく紹介されているが、その手順は大きく分けて三つのステップとなる。まず、Chromeブラウザーに「Chromebook リカバリ ユーティリティ」というChromeブラウザーの拡張機能を追加する。次に、拡張機能がオンになっていることを確認。そして、その拡張機能を実行し、リストからChromeOS Flexを選択、USBドライブを作成する。その後は、画面のメッセージに従ってUSBドライブを挿入して作成されるまで待てば良い。

 こうして作成されたUSBドライブをほかのPCに差し込んで電源を入れると、ChromeOS Flexが起動する。細かい注意点としては、対象となるPCが[USBドライブからの起動]に設定されているかどうか、事前にBIOSやシステムファームウェアのUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)をチェックしておいた方が良い。

得られるメリットと注意すべきデメリット

 ChromeOS FlexによってChromebookとなったPCには、多くのメリットと注意しなければならないデメリットがある。まずデメリットだが、キーボードの一部にWindowsやMacとの違いが生じる。特に、Windowsユーザーにとっては、変換と無変換のキーが変わる。具体的には、ChromeOS Flexでは、変換が[かな]モードに、無変換が[英数]モードへの切り替えになる。これは、MacやChromebookでは標準的なもので、Windows系PCでも一部のSurfaceなどが採用しているキー配列となる。

 そのほかにも、CapsLockキーで[半角/全角]モードが切り替えられないといった違いがある。さらに、ファンクションキーの対応も変わる。Windowsのキー操作に慣れたユーザーにとっては、細かい違いでも戸惑う可能性がある。しかし、反対に考えるとキー配列がChromebook準拠になるので、将来的なChromebook導入に向けた布石となる可能性もある。

 キーボードに加えて、想定されるデメリットとしては、機種によっては前述したように、SDカードスロットの読み書きやBluetoothなどに対応していないといった問題も生じるかもしれない。

 次にメリットだが、何よりも「起動が速くなる」ことが挙げられる。特にSSDモデルであれば、電源を入れてから1分以内にはログインの画面が表示される。厳密な起動時間の比較は、実行しているPCのBIOSやUEFIのブート時間にも左右されるので、数値で表現するのは難しいが、体感として“あっという間”だった。

 もう一つのメリットは「余分なソフトが要らない」点になる。具体的には、エンドポイントセキュリティ(EPP)ソフトは不要になる。ChromeOSそのものが、マルウェアなどへの感染対策が強化されたOSであるため、不正なアプリが実行される心配がなく、セキュリティ対策への投資コストを低減できる。

 こうした速さと安全性に加えて、Chromeブラウザーの快適な利用も獲得できる。これは、場合によっては少しデメリットにもなるが、ChromeOS FlexではChromeブラウザー以外は利用できない。もちろん、Chromeブラウザーとしては100%の互換性があるので、拡張機能などはWindows版やMac版と同様に利用できる。ある意味で、Chromeブラウザー専用PCをOSへの投資ゼロで手に入れられるのだ。

 ハードウェアをセールスする立場としては、古いPCを延命させるよりも、ChromebookをはじめとしたPCを新たに購入してもらった方がありがたいのは確かだ。しかし、日本の企業ではまだ実績や認知度が低いChromebookやChromeブラウザーだけによる業務の遂行を事前に体験してもらうためには、ChromeOS Flexによる古いPCでの予行演習は、とても効果があると期待できる。体験するだけならば、Windows 8の時代のPCでも、ChromeOS Flexは実用性がある。Chromebookによる快適さや安全性、そして真のクラウドファーストな世界を実感してもらうためにも、ChromeOS Flexの活用は、きっと効果があるはずだ。