「生成AI大賞 2025」で革新的なAI活用事例を表彰
エンタメ領域やナレッジの共有など用途と成果が進展
Generative AI Japan(GenAI:ジェナイ)は日経BPが発行・運営する「日経ビジネス」と共同で、生成AIの優れた活用事例を表彰する技術コンテスト「生成AI大賞 2025」を開催し、2025年12月12日にファイナリスト 8社を対象とした最終審査と表彰式を実施した。コロプラがグランプリを受賞したほか、ShippioおよびSHIFTの2社が特別賞を、デジタルハリウッド、東京都町田市、中原製作所、三菱電機デジタルイノベーション、NECの5社が優秀賞を受賞した。
生成AIの利用がタブー視される
エンタメ領域でAI活用を開拓
「生成AI大賞」は今年で2回目の開催となる。2024年に実施された1回目は、国内における生成AIのビジネス活用が本格化し始めた時期であり、業務での本格的な活用や全社規模での活用は進んでおらず、特に大手企業での生成AIの活用は出だしが鈍かった印象がある。
また活用事例についても作業の自動化など、既存のPRAを進展させた使い方が多く見られ、生成AIの真価を発揮させた革新的な事例を見出すことが難しかった。そんな状況下においても、前回の生成AI対象で受賞した事例は大手企業が実業務で活用していたり、鉄道という重要インフラを担う企業が日々の教務に生成AIを取り入れたりするなど、革新的な取り組みが見られた。
そして1年が経過した2025年の生成AI大賞の最終審査で発表されたファイナリスト 8社の事例は、想像を超える生成AIのビジネス活用が見られた。生成AI大賞 2025の審査委員長を務めた、GenAI代表理事で慶應義塾大学 医学部 教授の宮田裕章氏は「全ての発表が非常にハイレベルで、もはや生成AIに聖域はないと実感しました。どんな業種や規模であっても、またたとえ数十年変わっていない業態であっても、そこに改善すべき課題や問題があれば生成AIが活用できます」とコメントした。
グランプリを受賞したコロプラは生成AIをゲーム体験の核に据えたタイトル『神魔狩りのツクヨミ』を発表した。エンタメ領域での生成AI活用がタブー視される中で、著名クリエイターである金子一馬氏と共に独自AI「AIカネコ」を開発し、ユーザー行動を起点に唯一無二の金子風カードが生まれる体験を実現し、リリース2カ月で生成枚数は160万枚を突破したという。生成AIでエンタメの可能性を切り拓く新ジャンル「生成ゲー」を創出したことが評価された。


半世紀変わらぬ業務を
AIエージェントが変革
特別賞を受賞したShippioは国際物流におけるオペレーション現場主義でのAIエージェント活用の事例を発表した。同社が携わる貿易事業において「半世紀にわたって業務が変わっていない」」と指摘する。そして輸出入に必要な手続き、手配、調整等の専門業務を代行する、貿易における旅行代理店のような業務において36種類の書類と240部のコピーを手作業で扱い、30以上の関係者が電話やメールで個別にやり取りしているという。
こうした業務に対して同社は全体の業務を差配する司令塔AIエージェントと、海外代理店とのやり取りや通関、配送、支払いなどの各業務に対する専門AIエージェントが連携する「多層AIエージェント」を構築した。その結果、司令塔AIエージェントによって顧客からの連絡の7割を自動化し、専門AIによって各業務フローの9割を自動化することに成功したという。
特別賞を受賞したもう一社のSHIFTは生成AIチームと障がい者雇用チームが連携して生成AI活用を通じて働き方の質を向上させる取り組みを進めてきた。「AIを人に寄り添わせる」という活用によって、個々の適性に応じた業務担当とAI活用を推進した。その結果、生産性が1.7倍に向上したという。
社内のさまざまなナレッジをAI化
経営者が社員に評価される時代に
優秀賞を受賞した5社の発表は次の通りだ。まずデジタルハリウッドはneoAIと共同でクリエイティブ学習向け生成AI「Ututor」を導入した。制作物の分析・評価・改善提案を自動化し、質の高いフィードバックを提供する。目の前の作品だけでなく、その先の選択も提示するなど、受講生が"自分らしい進路"を描けるよう伴走し、スキル習得の効率化と教育サービス向上を図る。同社は「AIが"答え"ではなく"問い"を生む創造性を育む」と説明している。
東京都町田市はアジャイルなサービス開発を可能にする「マルチ生成AIプラットフォーム"AIナビゲーター"」を導入し、劇的に進化する生成AIをキャッチアップし、速やかなサービス展開を実現している。
岡山市の精密部品メーカーである中原製作所は事業承継でこれまで捉えにくかった会社の真の価値を、自社製造管理システム「加工屋けんちゃん」のデータと、トランスリーの生成AIツール「DataTranslator」で可視化・分析する取り組みを進めている。この取り組みによって業務効率化による技術承継の時間の創出や、会社の技術的価値の再認識という成果を得ている。
三菱電機デジタルイノベーションは生成AIを活用した薬剤師向け服薬指導・薬歴生成支援サービス「AnyCOMPASS」における生成AIの活用を発表した。東大発のヘルスケアAIベンチャーであるmediLabと、薬剤師の服薬指導・薬歴の作成を生成AIが支援するサービスを開発した。安全性に配慮しハルシネーション防止の観点でも工夫を加えた。保険薬局における薬剤師業務の効率化と患者サービス向上を両立する効果が得られているという。
NECは「経営コックピット×AI」による意思決定の迅速化や、問い合わせ業務のAI化など、企業が参考にすべき取り組みを発表した。これらの取り組みは専門知識を持つナレッジAIを社員が高速に開発して量産化できる同社が独自に開発したプラットフォーム上で提供された。
このプラットフォームを活用することで、例えば同社の取締役 代表執行役社長 兼 CEO 森田隆之氏をはじめとした役員のナレッジをAI化して、社員の意思決定の参考にできるという。同社では意思決定サイクルを96.7%短縮(1カ月から毎日に)、問い合わせを1件当たり60分から10分に削減などの成果が得られているという。
宮田氏はNECの発表に対して「社員が上司の信託を向上させる学びだけではなく、経営陣あるいはリーダー層こそ、言動が問われる、そんな緊張感あふれる時代になったなというふうに感じました。評価する側、される側の一方向ではなく、新しいコミュニティがこれから開けていく予感を感じました」と評価した。
なお本誌PC-Webzineの2026年3月号(2026年2月25日発行)では、生成AIやAIエージェントの最新かつ革新的なビジネス活用事例を紹介する予定だ。


