急成長する日本のGitHubコミュニティと
AI時代のソフトウェア開発の革新
ソフトウェア開発プラットフォームとして、グローバルで1億8,000万人以上の開発者が利用していると言われるGitHub。その日本法人であるGitHub Japanは2025年11月26日、日本市場における成長戦略と、ソフトウェア構築方法をAIとAIエージェントで再定義する取り組みについて説明会を実施した。AIコーディングアシスタントである「GitHub Copilot」に加え、複数のAIコーディングエージェントを統合するプラットフォーム「GitHub Agent HQ」を展開する同社の取り組みを見ていこう。
日本のGitHub利用者が増加
それに伴う二つの取り組み

日本・韓国エンタープライズ担当
シニアディレクター
角田賢治 氏
GitHubを利用する開発者が国内で増加している。GitHub Japan 日本・韓国エンタープライズ担当 シニアディレクター 角田賢治氏は日本におけるGitHubの利用状況について「日本のGitHubを利用する開発者は大きく増加しています。2020年時点では120万人だった開発者は、現在450万人を超えており、世界で6番目に大きい開発者コミュニティとなっています。特にこの12カ月においては、100万人以上の開発者がGitHubを新たに利用し始めています。この勢いは過去最も早い成長です。またAIへの貢献度ランキングでは世界第4位であり、日本の開発者が世界のAIエコシステムを形作っていることが分かります」と指摘する。
GitHubはAIによるコーディングツールとして「GitHub Copilot」をリリースしている。GitHub CopilotはAIコーディングツールという立ち位置から、コーディングエージェントへと進化している。角田氏は「現在、GitHubはエージェンティックソフトウェア開発の世界をリードするプラットフォーム企業であり、GitHub Copilotはより安全にソフトウェアを構築し、お客さまのビジネスをスケールするツールとして活用されています」と語り、国内での導入企業としてNTTドコモ、ソニー、ZOZOなどの名前を挙げた。GitHubの日本国内利用者は前述したように急増しており、2030年までには1,170万人を超え、世界で5番目に大きな開発者コミュニティを持つことになるだろうと角田氏は予測している。
このようなGitHubの日本市場拡大に伴い、同社は大きく二つの取り組みを推進していく。一つ目は、日本の全ての開発者と企業が制約なくソフトウェア開発に取り組めるよう、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を支援していく。それに伴い、開発者が適切なツールやガバナンス、セキュリティに柔軟にアクセスできるよう支援を進めていく。二つ目に、最も規制が厳しい業界においてもクラウドを導入でき、世界の同業他社と同等のペースでモダナイゼーションを推進できる環境を構築できるように支援を行う。「日本の全ての開発者の体験を変革し、何百万人の人々が開発を行える存在が、エージェンティックAIです。GitHubはソフトウェア開発のために、エージェンティックな未来を提供し、日本の全ての開発者と組織を支援して行きます」と角田氏は語った。
AIコーディングエージェントを
統合管理する「Mission Control」

アジア太平洋地域(APAC)担当
バイスプレジデント
シャリーン・ネイピア 氏
次に、GitHubのアジア太平洋地域(APAC)担当 バイスプレジデントのシャリーン・ネイピア氏が登壇し、2025年10月28日から29日にかけて開催された「GitHub Universe 2025」で発表した「GitHub Agent HQ」を紹介した。ネイピア氏はAIがソフトウェア開発手法を大きく変革した一方で、これまで存在しなかった複雑さや混乱が生じていると語り「現在のこのAI業界の状況は、GitHubが誕生する以前の環境と多くの点で類似しています」と指摘する。
そうした開発者コミュニティに対して、GitHubが提案するのがGitHub Agent HQだ。これまでのAIエージェントは開発者に対して、驚異的な計算応力を提供できる一方で、多くの開発ツールが連携されていないことから、その出力をワークフローに統合するが困難であるなどの課題が発生していた。しかしGitHub Agent HQは、開発者の選択の自由を担保しつつ、AI時代に秩序、可視性、ガバナンスを提供できるとネイピア氏は語る。
「GitHubでは、Anthropicの『Claude Code』、OpenAIの『Codex』、Googleの『Jules』を始めとする全てのAIコーディングエージェントを統合的に管理できるUIとして『Mission Control』を提供します。またサードパーティツールとGitHub Copilotの連携先を拡大します。加えて、新たに『Agent Control Plane』を導入することで、信頼性と制御性を向上させていきます。これにより、エージェントやモデル全体にわたってAIポリシーの管理や監査記録、アクセスコントロールが可能になります。Copilotの使用状況を可視化する『メトリック ダッシュボード』もリリースします。本ダッシュボードによって、自社内でのCopilotの使用状況を高度に可視化し、管理することが可能になります。GitHub Agent HQは開発者の選択肢を減らすことなく、新たなエージェント型AI時代に秩序とガバナンスを提供します。また、開発者と組織の開発をスピードアップさせ、これまで以上に自信を持って独自のやり方で開発を進めることが可能になるでしょう。特に日本ではテクノロジーにおける信頼性、コンプライアンス、ガバナンスが常に重視されてきました。だからこそGitHub Agent HQは日本の開発環境を大きく変化し、これまで以上のスピード感と自信を持ってイノベーションを推進できると確信しています」(ネイピア氏)
またネイピア氏は、エンタープライズ向けのクラウド型開発プラットフォームである「GitHub Enterprise Cloud」について、日本国内でのデータレジデンシーを提供することについて触れ「これにより、特定の場所にデータを保管したい要望のあるお客さまでもGitHub Enterprise Cloudを利用可能になり、業務に不可欠なエンタープライズグレードのガバナンスを維持できます」と語る。GitHub Enterprise CloudはMicrosoft Azureのインフラ上で展開され、高いセキュリティと柔軟な運用環境が提供されるという。
「今回紹介した内容は、日本の開発者、また日本の企業が直面する現場の課題を解決するためのソリューションです。GitHub Agent HQは全ての開発者が制限なく開発できる環境を提供するとともに、企業がデジタルの可能性を最大限に生かすことを可能になります。そして日本の企業の皆さまの進化にGitHubが貢献し、成果が出始めていることを非常に嬉しく思っています」とネイピア氏は締めくくった。
GitHub Copilotと協働する
NTTドコモのソフトウェア開発

R&Dイノベーション本部
サービスイノベーション部
クラウドソリューション担当部長博士(学術)
森谷優貴 氏
実際にGitHubやGitHub Copilotを活用することでソフトウェア開発の変革に取り組んでいるNTTドコモグループの事例も紹介された。
NTTドコモ R&Dイノベーション本部 サービスイノベーション部 クラウドソリューション担当部長博士(学術) 森谷優貴氏は「NTTドコモグループでは2021年1月からGitHub Enterprise Cloudを利用しており、現在の利用者は6,334名に達しています。また、2023年3月からはGitHub Copilot Businessも導入し、3,647名が利用しています。GitHub Enterprise Cloudを活用し、オーガナイゼーションを統合することで、一貫したガバナンスと運用コスト削減を実現しています」と語る。共用オーガナイゼーションで対応できない、特殊な要件に対応する場合は、一部個別オーガナイゼーションも併用して運用しているようだ。
NTTドコモグループではGitHub Copilotも積極的に活用されている。前述した3,647名の利用者の内、毎日1,000名ほどのユーザーがアクティブに活用している。GitHub Copilotには『Askモード』と『Agentモード』が用意されているが、NTTドコモグループで特に利用されているのは自然言語による指示で開発タスクを自律的に実行するという、後者のAgentモードだ。
「GitHub Copilotからは直近1ヶ月で毎日3万件程度のコード提案があり、その内25%程度が採用されています。GitHub Enterprise Cloudの管理機能を活用し、一定期間GitHubおよびGitHub Copilotの利用がないユーザーを削除対象としてリスト化し、月単位で自動削除したり、利用状況のダッシュボードを公開したりして、ライセンス利用の最適化を進めています。ナレッジ集約やAPIを活用した申請対応の自動化などにも取り組み、ガバナンスとセキュリティを担保した上で最新技術を活用できる環境の整備に取り組んで行きます」と森谷氏は語った。


