本格化する日本のデジタル改革を支えるために
AWSジャパンが投資する三つの領域

2026年は、AWSがクラウドサービスの提供を開始してから20年、そして東京リージョンが開設されてから15年という節目の年である。こうした経緯を踏まえ、AWSジャパンは2026年を、思いを新たにする転換点と位置付けている。同社が本年どのような事業戦略を描こうとしているのか、その方向性を追っていく。

ロボット基盤モデルの開発に特化した
新たな支援プログラムの提供を開始

AWSジャパン
代表執行役員社長
白幡晶彦

 最初に登壇したAWSジャパン 代表執行役員社長 白幡晶彦氏は、同社の2026年における事業方針を説明した。「当社は日本での事業を始めて以来、『日本のために、社会のために』という考え方を企業目的として大切にしてきました。そして2026年はこの『日本のために、社会のために』に、未来志向な思いを込めて『その先へ』という表現を加えました。私たちは、短期的な利便性や部分最適に偏るのではなく、長期の視点から日本と社会に今何が必要かを自問し続けるべきだと考えています。そのためには、あえて明示的に宣言することが必要ですし、それは同時に当社にとっての大きな目標になります」

 同社は日本の成長に向け、三つの領域に投資を行っていく。一つ目が技術への投資だ。ここでは「国内AI・クラウドインフラへの投資」と「AI技術への投資」の二つの観点が示された。

 まず国内AI・クラウドインフラへの投資では、東京リージョンおよび大阪リージョンの強化に言及した。2024年1月に公表した2027年までに150億ドル規模の国内投資計画と、それ以前の100億ドルの投資を合わせることで、両リージョンは最も堅牢でかつ最も安定したインフラとして、顧客のイノベーションの加速に貢献している。さらに、地震や火山噴火といった日本固有の自然災害リスクへの対応も見据えたレジリエンスの高いデジタルインフラであり、AWSが世界で展開する39リージョンの中でも投資優先度の高いリージョンでもあるという。例えば、生成AIアプリ構築サービス「Amazon Bedrock」は米国に次いで日本で提供が開始され、Oracleの共同サービス「Oracle Database@AWS」の東京リージョンでの提供も早期に進んだ。「こうした国内インフラへの投資は、業種や官民を問わず、さまざまな分野のイノベーションを下支えしています。当社では、日本のお客さまやパートナー企業と共に進めるイノベーションへの投資として、今後も国内インフラへの投資を続けていきます」と、白幡氏は強調する。

 続いてAI技術への投資では、AI技術に対するAWSのアプローチについて紹介された。AWSのアプローチの中核は「選択肢の提供」にあるという。例えばAmazon Bedrockでは、Amazon独自の基盤モデル「Amazon Nova」に加え、AI21 Labs「Jamba」やMeta「Llama」など多様な基盤モデルを提供している。さらにハードウェア面でもNVIDIAに加えてインテルやAMD、さらにAWS独自のAI専用チップを選択できる柔軟性を持たせている。

 またAI技術への投資における重要な取り組みとして、国内AI開発に対する支援についても触れられた。AWSジャパンは2023年以降、国内のAI開発を支援する各種プログラムを継続して提供し、国の施策に対する支援も行ってきた。
 そうした多様な支援を行ってきたAWSジャパンは2026年に新たな支援プログラムとして、日本におけるロボット基盤モデルの開発に特化した「フィジカルAI 開発支援プログラム」の提供を開始するという。

フィジカルAI 開発支援プログラムのサポートは、技術支援・コスト支援・コミュニティ形成・Go To Market支援の四つに分類される。

 提供開始の背景について、白幡氏は以下のように説明する。「日本でロボット開発を行うお客さまからは、ロボット向けのAI活用を見据えたモデル開発に取り組みたいという要望をいただいています。一方で、収集した大規模データの保管や前処理、学習用計算基盤のスケーリング、シミュレーション環境の構築に課題を抱える声も多く寄せられています。当社には、Amazonグループ全体として、世界中で蓄積してきたロボティクスのノウハウがあります。例えば世界300以上の施設で約100万台のロボットが稼働しており、世界最大級のモバイルロボティクスの製造元であると同時に運用者でもあります。こうして培った膨大な経験を、新しいプログラムにも生かせると考えています」

インフラの信頼性を強化
AI時代に向けた新たな取り組み

AWSジャパン
常務執行役員
技術統括本部長
巨勢泰宏

 二つ目が信頼性への投資だ。ここではまず、AIのワークロードを支えるインフラについて紹介された。「AIワークロードに最高のパフォーマンスを提供するには、高度にスケーラブルで安全なクラウドが不可欠です。堅牢なクラウドインフラこそが信頼のベースラインになると私たちは考えています。AWSは世界中にクラウド基盤を拡張し、現在までに39基のリージョンからクラウドサービスを提供しています。今後も二つのリージョンの拡張計画を発表しており、高まるAIワークロードの需要に応えていきます」と、AWSジャパン 常務執行役員 技術統括本部長 巨勢泰宏氏は強調した。

 続いて、セキュリティに関する取り組みも紹介された。AWSは、グローバルネットワークに多数のセンサーを配置し、毎日1億件以上のインタラクションを分析して脅威を自動的に軽減している。また、数十億ノード規模のグラフモデルを活用し、1日平均12万4,000件の悪性ドメインを検出・阻止しているという。「当社の基盤に対する攻撃情報を集積・分析することで、お客さまの基盤を保護するための情報として活用しています。そうすることで、当社とお客さまを攻撃者にとって最も手間がかかり、割に合わない標的にし、結果としてサイバー攻撃そのものを減少させます」と巨勢氏は語る。

 さらに厳格なセキュリティ要件に対応するための新しいサービスとして、「AWS AI Factories」を発表した。AWS AI Factoriesは顧客のデータセンター内に専用のAIインフラを展開できるサービスであり、最新のAIチップやNVIDIA GPU、Trainium、AWSのAIサービスなどにプライベートでアクセス可能だ。デジタル主権への対応の新たな選択肢となると巨勢氏は位置付けている。

 そのほか、AIエージェントの活用を支援するサービスとして「Amazon Bedrock AgentCore」も紹介された。本サービスは、AIエージェントを安全にスケールし展開するための実行環境、ツールとの連携機能、AIエージェントの監視と評価を行うといった八つのコンポーネントで構成されている。「AIエージェントはその自律性故に挙動の予測が難しく、運用面での不確実性が課題になります。Amazon Bedrock AgentCoreは、まさにこうした不安を軽減するために設計されたサービスです」(巨勢氏)

 最後に巨勢氏は「信頼性の獲得は重労働を伴いますが、AWSを利用してもらうことで基盤レベルでの信頼性を確保できます。ビジネスの差別化につながらない重労働は当社が担い、お客さまにはビジネス価値に直結する活動に集中してもらいます。さらに、サービスの提供にとどまらず、お客さまの環境に最適な形で実装できるよう伴走しながら信頼性の確保を支援し、日本のお客さまのイノベーション創出に貢献していきます」と意気込みを語った。

さまざまなステークホルダーと共に
日本全体の活性化に貢献

AWSジャパン
常務執行役員
パブリックセクター統括本部長
宇佐見 潮

 三つ目が人と社会への投資だ。AWSジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長 宇佐見 潮氏は「ここまで技術、そして信頼性への投資について紹介しましたが、これらの投資を実際に実行し、未来に向けて日本を支えるためには、それを活用しDXを進める人への投資と、その受け皿となる社会の投資が欠かせません」と切り出す。

 AWSジャパンでは、デジタル人材の育成支援に長年取り組んできた。具体的には、2017年からの9年間で80万人を超える国内人材に対し、クラウドスキル研修を提供してきた実績がある。また、地域創生を担うデジタル・AI人材の育成に向けて、高等専門学校との連携も開始しており、その第一歩として旭川高専および富山高専と包括連携協定を締結している。
 さらに、地域に根ざした持続可能な人材育成と、その人材やスタートアップ企業による地域課題の解決、そして成果を地域に還元していく循環の確立を目指すため、「デジタル社会実現ツアー」を全国7都市で開催している。あわせて、地域創生・社会課題の解決を支援するAIプログラミングコンテストの実施、AWSジャパンのパートナー企業とユーザー企業が協働して課題解決に取り組む「AWSエンジェル道場」による内製化支援など、多岐にわたる取り組みを進めている。

 またAWSでは、クラウド技術の民主化に向けて、20年にわたり誰もがクラウドサービスを利用できるよう支援を続けている。具体的な取り組みとしては、生成AIを安全に業務へ活用するためのビジネスユースケース集「Generative AI Use Cases(GenU)」を提供しているほか、AIを開発プロセスの協力者かつチームメイトとして位置付け、ソフトウェア開発ライフサイクル全体にAIの能力を組み込む新しい方法論「AI-DLC」も提示された。

2023年よりAWSジャパンの有志が開発・公開しているGenUでは、文書生成や要約作成、議事録作成、翻訳、画像生成、動画生成、映像分析などさまざまなユースケースをオープンソースソフトウェアとして公開している。

 最後に宇佐見氏は、「地域創生には自治体をはじめ、地域パートナーさまや地場の企業さま、金融機関、スタートアップ、教育機関、医療機関などのさまざまなステークホルダーと一緒に進めていく必要があります。当社のこれまでの経験や実績を共有し、地域創生、ひいては日本全体の活性化に少しでもお役に立てるよう進めていきます」と意気込みを語った。