物流の効率化に向けて、企業は物流データを把握し、継続的な改善につなげていくためのマネジメント体制の構築が求められる。
その一方、多くの企業では物流データが部門やシステムごとに分断されており、物流業務の実態を横断的に把握することが難しい。
そうした課題に対し、企業の物流データを一元化し、物流全体の状況を可視化するマネジメント基盤「CLOコンパス」をアイディオットが提供している。

多重の課題が存在する物流

アイディオット
井上智喜

 アイディオットは2022年、内閣府が推進するSIP第2期「スマート物流サービス」において、三つの実証テーマの採択を受けた。本実証を通じて同社は、在庫管理や配送プロセスの可視化・最適化をはじめ、それらのデータを活用した需要予測やシミュレーションを可能にする独自ツール「ADT」(アイディオット・デジタルツイン)を開発し、現在物流事業者向けに提供を行っている。2025年10月9日には、国土交通省が定めた「物流情報標準ガイドライン」に準拠した物流デジタルツインで特許を取得しており、先端技術を活用することで物流データの可視化と業務最適化を支援している。

 アイディオットの代表取締役 井上智喜氏は「物流やサプライチェーンには、経済の不透明性やインフレによる物流コストの上昇、物流の2024年問題を起点とする働き方改革による規制強化、人口減少・高齢化、CO2削減やBCPへの対応要求など、多重の課題が存在しています。一方で顧客から求められる要望は多岐にわたり、対応に苦慮しているのが現状といえます」と語る。

 井上氏が語った物流の2024年問題へ対応するため、政府は2023年10月6日に「物流革新緊急パッケージ」を策定。その方針を法制化するため、改正された物流効率化法が公布されたのが2024年5月のことであり、2025年度、2026年度の二段階に分けて本改正法が施行されている。

 2026年度の本格施行では特定荷主企業にCLOの設置のほか、中長期計画の策定や荷待ち、荷役時間の削減、積載率の向上、定期報告などが義務化される。井上氏は「中長期計画の初回提出期限は今年10月末に迫っています。計画の実行フェーズは来年3月ごろから本格化するとみており、CLOの役割も実質的にはそこから本格スタートすると考えています。当社では、CLO設置の義務がある企業は約3,200社とみています。それにプラスして、CLO設置の義務はありませんが、保有車両台数が150台以上の特定貨物自動車運送事業者等や、貨物の保管料が70万トン以上の特定倉庫業者にも中長期計画の作成・提出や定期報告の義務は課されています。これらの企業は800社おり、合計で4,000社程度が特定事業者の対象となる推計です」と語る。

CLOの意思決定を支援

 こうした事業者のデータ収集から分析、改善までをワンストップでサポートするツールとして提供しているのが、CLOコンパスだ。本製品は以下の三つのステップでCLOの意思決定をサポートする。

 一つ目がデータの統合だ。複数の形式が異なる物流データを、内閣府が策定した「物流情報標準ガイドライン」に準拠した形式で一元的に管理を行う。データはWMS(倉庫管理システム)、販売管理システム、TMS(輸配送管理システム)などすでに顧客先で運用中のシステムからの取り込みが可能だ。企業によってはデータが不足しているケースもあるため、アイディオットではそれらに対する補完などの導入サポートも行う。

 二つ目はデータの可視化・分析だ。集約されたデータから、物流業務で必要な情報分析や可視化が可能だ。例えば流量分析や物流三費、ABC分析、在庫分析、拠点別入・出庫量、GHG排出量などさまざまな分析結果をグラフィカルに可視化できる。

 三つ目はシナリオ分析や評価だ。例えば、拠点ネットワークの再設計を検討する際に、デジタルツイン上でAIシミュレーションを行い、新拠点を設置したり統廃合したりする方がよいのか、輸送モードを見直した方がよいかといった打ち手の検討が行える。拠点選定のほか、在庫の持ち方や輸送モードの選定、CO2削減シナリオといった分析も可能だ。

「CLOコンパスのダッシュボードでは、蓄積されたデータを基に、積載率や荷役時間、荷待ち時間の主要指標を一画面で可視化できます。実際にどの拠点や時期の積載率が悪いのか、といった情報も色分けされて可視化できます。今後は、ボトルネックを示す箇所をクリックすることで、生成AIが改善案を自動生成する機能の実装も予定しています。また、国土交通省に提出する物流管理に関する各種レポートを自動生成する機能も搭載しています。これにより、レポート作成にかけていた時間を、レポートを踏まえた戦略立案の時間に変えることが可能です」と井上氏は語る。

CLOコンパスのダッシュボードでは積載率の推移や荷待ち時間、荷役時間などをグラフィカルに表示し、CLOの意思判断を支援する。

データ連携で共同配送を実現

 アイディオットが物流事業者向けに提供するADTは、CLOコンパスと共通のデータ基盤を有しており、データ連携も可能だ。単一企業での利用にとどまらず、複数社でこれらの環境を活用することで、共同配送プラットフォームを実現できる(カスタマイズによる対応)。複数の企業に物流リソースを共有し、効率的で環境負荷の少ない配送を実現する共同配送の取り組みを、デジタル技術でさらに発展させた概念は「フィジカルインターネット」と呼ばれている。「当社はこのフィジカルインターネットのリーディングカンパニーとして、物流事業者と共に共同配送や荷物の標準化・効率化を推進する実証実験やシステム連携も行っています」と井上氏。このフィジカルインターネットは、物流課題を解決する次世代の物流システムとして注目を集めている。

 アイディオットが100社弱を対象に行った調査に基づき、独自に作成したCLO成熟度モデルによると、日本企業の多くが物流課題に対して解決の必要性や認識が不十分であるレベル0の段階だという。「業種別で見ると商材の長期保管が可能な家電、建築、部品メーカーは課題認識が薄い傾向にあり、成熟度モデルのレベル0やレベル1にとどまります」と井上氏は苦言を呈する。同社は今後3年間で法改正の対象となる企業の1割への導入を目標に、製品展開を進めていく方針だ。井上氏は「物流費は放置すれば年間5〜10%上昇する可能性があります。荷主企業が自ら物流効率化に取り組み、物流を持続可能にしていくために、今回の物流効率化法の改正を活用してほしいですね」と強調した。