AIエージェント時代に向けて
Copilotはオートパイロットへ進化
日本マイクロソフトは7月27日、「Microsoft 365 Copilot」の最新動向を紹介する記者説明会を開催した。本記事では、日本における生成AIおよびAIエージェント活用の現状をはじめ、2026年6月から一般提供が開始された「Copilot Cowork」や、プレビュー提供中の「Microsoft Scout」の概要を取り上げる。さらに、日本マイクロソフト自身の取り組みや顧客企業の活用事例を通じた、AIエージェント活用の最前線もレポートする。
生成AIとAIエージェント活用が加速
一方で組織変革の遅れが新たな課題に

業務執行役員
AI Workplace GTM本部
本部長
山田恭平氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 AI Workplace GTM本部 本部長 山田恭平氏は、日本の生成AIの利用が加速していると切り出す。「米国本社が5月に公開したレポート『Global AI Diffusion Q1 2026 Trends and Insights』によると、日本のAI利用の伸び率は約3倍と著しく拡大していることが分かります。その背景には、AIモデルの能力向上や日本語の品質の改善、AIエコシステムの拡大に加え、複雑かつ専門的なタスクをAIが処理できるようになったことが挙げられます。この数カ月で、AIは単なるチャットボットから、一定の範囲で自律的に業務を遂行し、業務を自動化するAIエージェントへと進化しています。そうした中、IDCさまの調査によると、2028年までに世界で13億のAIエージェントが展開される見込みです。日本企業でもグローバルと同様に、AIエージェントの活用が進んでいます。当社の調査によると、日経225企業の87%がAIエージェントを活用しており、それらの100%が、自社の社内業務に合わせて市民開発したカスタムAIエージェントを利用していることが明らかになりました。日本の企業においても、AIを業務に組み込んで成果を生み出そうとする動きが広がっており、そのスピードはさらに加速しています」
では実際に組織の中で、リーダーや従業員はこの変化をどのように捉えているのか。マイクロソフトが2025年5月に全世界のAIユーザーを対象に実施したアンケート「2025 Work Trend Index」によると、リーダーの82%が「今年は戦略やオペレーションを見直す重要な年」と回答した。また、53%のリーダーが「生産性を向上させる必要がある」と答えており、AIを活用して既存のオペレーションを組織レベルで見直そうとする動きが高まっている。さらに2026年5月に実施された「2026 Work Trend Index」では、グローバルで65%、日本で66%の従業員が「今すぐAIに適応しなければ取り残される」と感じていることが分かった。
しかしその一方で、仕事の進め方を変えるよりも現在の目標を守る方が安全だと感じているユーザーは、グローバルで45%、日本で30%に上る。また、AIを活用して仕事を再設計することが評価されると感じていない従業員も、グローバルで13%、日本で8%存在している。
「こうした調査結果から分かるのは、AI活用の課題がツールの有無にあるわけではないということです。むしろ、組織がAIを生かせる土壌になっていないことが大きな課題だと言えます。こうした背景からマイクロソフトでは、AI活用を進める上でのモデルケースを『フロンティア組織』として提示しています。フェーズ1は『人とアシスタント』です。まずはさまざまな課題や質問を『Microsoft 365 Copilot』(以下、Copilot)に投げかけるという行動変容を起こす段階です。すでに多くのお客さまがこのフェーズに到達していると考えています。フェーズ2は『人とエージェントのチーム』です。人がエージェントを“チームメイト”として迎え入れ、プロセスの一部をCopilotに任せる段階となります。そしてフェーズ3が『人が主導し、エージェントが実行する組織』です。人が“監督”としてエージェントを編成・育成し、自らAIを前提としたプロセスを設計するフェーズになります」(山田氏)

Copilotの進化
チャットボットからAIエージェントに
本記者説明会ではCopilotの進化についても語られた。一つ目が、Copilotで利用できるAIモデルの拡張だ。OpenAIのGPT-5.6やGPT-5.5といった最新モデルに加え、AnthropicのClaude Fable 5、Claude Opus 5、Claude Opus 4.8、Claude Sonnet 5など、複数の最新モデルを用途に応じて選択できるようになった。
二つ目は、「Copilot Cowork」だ。Copilot Coworkは、ユーザーの指示に基づいてマルチステップの作業を並列実行するクラウドホスト型の自律エージェントであり、2026年6月から一般提供が開始されている。山田氏は、「Copilot Chat」との違いについて次のように説明する。「Copilot Chatでは、人が必要な作業を考え、一つひとつ適切な順番で指示を出す必要があります。一方、Copilot Coworkはタスクを自動で洗い出し、計画を立てて実行してくれます。また、Copilot Coworkをさらに便利にする機能として『スキル』があります。専門業務や複雑な業務の作業手順を記述した『Skill.md』をあらかじめ作成しておくことで、目的を伝えるだけで自動的に作業を実行してくれます」

三つ目は、「Microsoft Scout」だ。Microsoft Scoutはバックグラウンドで常時稼働し、ユーザーの業務プロセスを学習しながら、自律的にタスクを遂行するAIエージェントだ。例えば、「先週の出張の経費申請をして」と依頼すると、Microsoft 365のデータとローカル上のデータを同時に検索し、領収書や関連ファイルの内容を解析して出張情報を収集する。その後、自動でWebブラウザーを起動し、経費精算システムを開いて領収書の登録作業まで行ってくれるのだ。

さらに、AIにビジネスの文脈を理解させる仕組みとして、「Microsoft IQ」も紹介された。Microsoft IQは、メールや会議の文脈を読み取る「Work IQ」、企業内の構造化データ基盤を整備する「Fabric IQ」、適切なデータソースへ自動的に案内する「Foundry IQ」、そしてWeb上の公開情報を参照する「Web IQ」の四つのツール群で構成される。これらを組み合わせることで、AIが業務の文脈を理解し、ユーザーごとに最適化された回答を提供できるのだ。
日本マイクロソフトや顧客企業の
AIエージェント活用事例
これらの技術を用いて、実際に顧客はどのような変革に取り組んでいるのだろうか。
りそなグループでは、業務部門とIT部門が連携し、現場の知見を生かしたAIチャットを開発している。融資などの照会業務をAIエージェントが支援することで、問い合わせ対応の効率化と迅速化を実現した。Teamsとの連携やマルチエージェント化を通じてAIエージェントの活用範囲をさらに拡大することを目指している。
一方、INPEXではCopilotを全社的なAI活用基盤として導入。社員自らがCopilot StudioやCopilot Agentを活用し、1,000を超える業務支援AIエージェントを構築している。情報収集や調査といった反復的な業務に活用することで、年間20億円以上の効果を見込んでいる。
また、日本マイクロソフトでも自らが顧客第一号となる「カスタマーゼロ」の考え方の下、業務プロセスにAIエージェントを組み込み、日々の業務で活用することで、業務プロセスそのものをAIドリブンなものへと再構築する取り組みを進めている。その一例が「Copilot Agent Contest」だ。
Copilot Agent Contestの上位入賞事例として紹介されたのが、技術営業部門が開発した、組織の技術ナレッジを資産化するAIエージェント「ASK PPSE」である。同部門では、製品知識の属人化が課題となっていた。そこで、過去のQ&Aや社内ナレッジ、公式ドキュメント、ベストプラクティスといった信頼性の高い情報を組み合わせて同エージェントを構築した。同エージェントは質問への回答機能だけでなく、対応できない問い合わせを人へ引き継ぐエスカレーションフローも備えている。エスカレーションされた案件には担当者が対応し、その内容はデータベースに蓄積される。蓄積されたナレッジは継続的に活用され、エージェントの回答精度向上につながるという。
最後に山田氏は次のように語った。「Copilotはもともと副操縦士という意味の言葉がベースになっており、皆さまが主役となる仕事を副操縦士として支援することがコンセプトです。今回、従来のCopilot Chatに加え、Copilot CoworkやMicrosoft Scoutが登場したことで、オートパイロットの世界へと進化しています。実現できることの幅が大きく広がっていますので、ぜひこの機会に触れていただければと思います」

