生成AIを導入しても、社内文書が部門やシステムを跨いで散在し、どれが最新版か分からないままでは、業務で信頼できる回答は得られない。法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」を提供するダイレクトクラウドは、企業データを一元管理し、権限とガバナンスを維持する基盤の上にAIを実装した。そして、データを生成AIが使える状態へ整える“AI Ready”を打ち出している。今回はプロダクトを統括する同社 石田圭一氏、パートナーセールスを率いる同社 日比野 明氏、販売パートナーとして顧客の導入判断に向き合うディーアイエスサービス&ソリューション 荒木邦洋氏に、AI時代のデータ活用と販売現場で寄せられる率直な疑問を語り合ってもらった。
優秀なAIでもデータが
整っていなければ答えは出ない
—生成AIの活用が思うように進まないのは、AIの性能よりもデータ側に原因があるのでしょうか。
石田氏(以下、敬称略)■原因の多くはデータ側にあります。部署ごとにデータが散在し、どれが最新か分からない。古い資料と新しい資料が混在したままでは、どれほど優秀なAIをつないでも、正しい答えは返ってきません。そこで私たちが掲げているのが“AI Ready”です。社内データを一元管理し、鮮度と検索性を担保する、その上で誰がどのデータを参照できるのかという権限管理をきちんと効かせる、この両方がそろって、初めて生成AIが業務で使える状態になります。
荒木氏(以下、敬称略)■販売現場でも「AIは導入したが、参照させるデータを整理できていない」「ファイルを外部AIへアップロードしてよいのか判断できない」という相談が増えています。製品の機能だけでなく、どのデータを誰の権限で、どのAIにつなぐのかまで説明できなければ、情シス部門も経営層も承認しにくいんですね。まずデータを整え、統制された接続方法を示すことが提案の出発点になります。
石田■まさにそこです。データを整えるだけでは半分で、整えたデータを使い慣れたAIから、利用者の権限の範囲で参照できる仕組みが必要です。その接続層として当社は、「DirectCloud MCPサーバー」を2026年9月に提供する予定です。ChatGPTやClaudeなどを使う際に、利用者が社内ファイルを都度コピーして外部AIへアップロードする運用を減らし、「DirectCloud」をデータの管理基盤として利用できるようにします。データを整えることと、権限管理された経路でAIにつなぐこと。この二つがAI Readyです。

使うAIは変えず
社内データの守り方を変える
—使い慣れたAIを変えずに社内データを活用できる点は、販売現場でどう受け止められていますか。
荒木■提案の場で特に確認されるのは、「本当に今使っているChatGPTやClaudeから利用できるのか」「いつ提供されるのか」「どの権限で動くのか」という点です。AI利用を一律に禁止するのではなく、会社が管理できる経路を用意し、現場の利便性と情シスの統制を両立したい。そうした要望は強く感じます。
石田■「DirectCloud AI」では、AIチャット、高精度RAG、Web検索を提供し、対話型UIの「AI Assistant」も順次拡充しています。さらに2026年9月に提供予定のMCPサーバーにより、ChatGPT、Claude、Copilotなどの外部AIや業務ツールから、認証とアクセス権限を前提にDirectCloud上のデータを参照できる環境を目指します。MCPは現時点で提供中の機能ではなく、開発中のロードマップです。利用者は使い慣れたAIを選び、企業側はDirectCloudを社内データの管理基盤として維持する。この役割分担が重要だと考えています。
例えば営業担当者が、普段使っているAIに「製造業向けに、コスト削減をテーマにした提案書を作成して」と依頼します。MCPサーバーの提供後は、AIが利用者の権限に応じてDirectCloud上の過去の提案書や導入事例を参照し、新しい提案書のドラフト作成を支援します。ゼロから資料をつくる時間を減らし、提案品質と商談スピードを高める。こうした業務利用を想定しています。
AIを禁止せずに
権限とデータフローを管理する
— AI活用では「データを持ち出さない」という表現も使われます。実際のAI処理では、データはどのように扱われるのでしょうか。
荒木■ここはお客さまが最も厳しく確認する部分です。AIにどこまでアクセス権を与えるのか、社内ファイルのコピーが外部に残らないか、入力内容がAIの学習に使われないか。「データを持ち出さない」とだけ説明すると、AI処理のための送信まで一切ないように聞こえるため、実際のデータフローを正確に説明する必要があります。
石田■ご指摘の通りです。「一切の情報が外部基盤へ送信されない」という意味ではありません。DirectCloud AIでは、原本ファイルをDirectCloudで管理し、利用者が一般向けAIへファイルを手動で複製・アップロードする運用を減らします。一方、AI機能の処理に必要な入力情報は、AI処理基盤である「Microsoft Azure OpenAI Service」へ送信されます。入力情報と生成結果は、MicrosoftまたはOpenAIの基盤モデルの学習・再学習・ファインチューニングには使用されず、当社もAIモデルそのものの学習や改善には使用しません。
重要なのは、「外部へ通信がない」ということではありません。どの情報が、何のために、どの基盤へ送られ、学習に使われるかどうかを透明に説明し、企業が判断できる状態をつくることです。
10ユーザーから利用可能な
1人980円/月のデータ活用基盤
—こうしたデータ基盤とAIを少人数からでも使えるようにしたのが、新プラン「Team Business」ですね。どのような企業を想定していますか。
日比野氏(以下、敬称略)■DirectCloudはこれまで、ユーザー数無制限で大容量のデータを企業の管理下に置けるところを評価していただいてました。ただ、お客さまと話していると「まずは一部の部署だけで試したい」という声も多いんです。その規模だと、従来の容量課金型はどうしても割高になってしまう。そこを埋めるのが、2026年9月1日開始予定の「Team Business」です。1ユーザー980円/月、10ユーザー単位提供で、ストレージは1ユーザー当たり100GB、10ユーザーなら約1TBからのスタートになります。
—980円/月で、AI機能も制限なく使えるという理解でよいのでしょうか。
日比野■そこは誤解されやすいので、正確にお答えしておきます。Team Businessには「DirectCloud AI Free」が標準で付いて、10,000クレジット/月の範囲でAIを試せます。ただ、有料のAI機能が全て使い放題になるわけではありません。大量に使う場合や高度な機能が必要な場合は、有料のDirectCloud AIプランに移っていただきます。MCPサーバーの提供条件や料金も、正式リリースのタイミングで改めてご案内します。
荒木■我々も、そこは慎重に線を引いて説明しています。「980円でAIが使い放題」と受け取られると、導入後に必ず期待値のずれが出ますから。ただ、統制されたファイル共有にシングルサインオン(SSO)、承認ワークフロー、ランサムウェア対策まで入って、そこにAIを試す入口まである。この価格帯では、あまり見ない組み合わせだと思います。まず10人で始めて、使われ方を見ながら対象部門やクレジットを広げていく、という話の進め方ができます。
日比野■そこは販売現場と一緒に整理していきたいところです。ダイワボウ情報システム(DIS)さまをはじめとする販売網とも、価格の話だけで終わらせず、AIをどこまで使えるのか、どれくらいクレジットが必要になるのかまで含めて詰めています。ストレージが入って終わりではなく、日々の業務でデータとAIが企業の管理下で回り始めるところまでが本題ですので。
データを預かる会社から
企業の意思決定を支える会社へ
—最後に、DirectCloudはクラウドストレージから、どこへ向かうのでしょうか。
石田■企業データを企業の管理下で保管するだけでなく、信頼できるデータを検索、要約、分析し、提案書や報告書などの成果物へ変えるところまで支援したいと考えています。2027年にかけてDirectCloud AIを拡充し、その先は製造、金融、自治体など、業種ごとの業務を理解するAI Assistantへ発展させていきます。大企業だけでなく、中堅・中小企業にも、セキュリティとガバナンスを備えたAI活用環境を届ける。企業データを預かる会社から、企業の意思決定を支える会社へ進化していきます。

プロダクト本部
本部長
石田圭一 氏

パートナーセールス部長
日比野 明 氏

荒木邦洋 氏

