PC内蔵カメラを活用のヘルスケアアプリで
PCは生活支援ツールへと進化

VAIOは、信頼性や品質を強みに法人市場で事業を拡大する一方、新たな体験価値の創出にも注力している。その取り組みの第一弾として発表したのが、PC内蔵カメラで血管情報や心拍情報※1を非接触で測定するヘルスケアアプリ「VAIO ウェルネスケア」だ。本記事ではVAIO ウェルネスケアの開発背景や特長、今後の展望についてレポートしていく。

これからのVAIOの商品戦略
信頼と驚き双方の価値の提供を目指す

VAIO
開発本部
プロダクトセンター
センター長
黒崎大輔

 VAIOはソニーから独立して今年で12年を迎える。コンシューマー中心だった事業を法人市場へとシフトし、品質や信頼性、細やかな使い勝手といったスペックだけではない価値に力を入れ、独自の立ち位置を築いてきた。こうした取り組みは顧客からも評価され、現在も顧客基盤を拡大している。VAIOは創業翌年の2015年度と2025年度を比較すると、法人向け販売台数は約7倍に伸長し、販売台数に占める法人向けの構成比も35%から85%へと拡大している。

 その一方で、この12年間でVAIOは「信頼される存在」にはなれたものの、「驚きを期待される存在ではなくなりつつある」と、VAIO 開発本部 プロダクトセンター センター長 黒崎大輔氏は指摘する。「法人市場に合わせた商品づくりを進める中で、驚きのある体験や大胆な挑戦は、どうしても抑えられてきた部分があったと思います。このままこうした状況が続けば、お客さまがVAIOに期待するものとのギャップが広がっていくのではないかという不安を感じています。そうした中、当社は2025年に大きな転機を迎えました。スピード・ユニーク・クオリティを経営の重要な指標として掲げるノジマグループの一員となったことです。ノジマグループでは、失敗を恐れず挑戦することを最も大切にしています。その考え方に後押しされ、当社も大きく舵を切ろうとしています。これまで築き上げてきた信頼を維持しながら、再び驚きのある新しい体験の創出に挑戦することを決意しました。これから当社が目指すのは、信頼される道具であり続けながら、新しい体験を提案するブランドへと進化することです。信頼と驚きのどちらか一方ではなく、双方の価値を実現したいと考えています」

非接触かつ高速で
血管情報や心拍情報を測定・記録

 こうしたVAIOが目指す姿に向けた第一歩が「VAIO ウェルネスケア」だ。ノートPCに内蔵されたカメラを活用し、血管情報や心拍情報※1を非接触で測定・記録することで、ユーザーの生活アクティビティの変化や傾向を把握するアプリだ※2。血管情報と心拍情報の取得には、カメラデバイス、ファームウェア、ソフトウェアが連携して利用される。顔表面に現れる微細な色の変化を数値化することで、非接触での測定を実現している。8月10日から先行プレビュー版※3の提供を開始しており、個人向けノートPC「VAIO SX14-R」※4で利用できる。

VAIO ウェルネスケアによる測定イメージ。(掲載している画面は開発中のものを含む。実際の画面はアップデートなどにより変更される場合がある)
VAIO
開発本部
ITソリューションセンター
安藤徹次

 VAIO ウェルネスケアには三つの特長がある。一つ目は、測定を継続しやすい仕組みを備えていることだ。通常起動に加え、ユーザーが設定した時間やログイン時に自動起動する機能を搭載している。さらにウェアラブル機器などを新たに装着する必要がないため、日々の測定を無理なく継続できるようにしている。

 二つ目は、非接触ながら最短3秒※5での高速測定が可能な点だ。VAIO 開発本部 ITソリューションセンター 安藤徹次氏は、開発時の工夫について次のように説明する。「最短3秒※5での測定するためには、顔を認識し、特徴を捉え、その表面のわずかな色変化を高速に処理して演算する必要があります。これを実現するため、AIが得意とする顔認識や追従処理はNPUが担当し、画像処理はCPUが担当する分散処理を採用しました。これにより、非接触での高速測定を実現しています。また、推定エンジンや測定エンジンのアルゴリズム構築にもAIを活用しています。一方で、VAIOのPCに搭載されているWebカメラは、もともとWeb会議などでの利用を想定しており、『美肌モード』をはじめとしたさまざまな画像処理機能を備えています。しかし、VAIO ウェルネスケアでは顔表面の微細な色変化を捉える必要があるため、こうした画像処理が測定精度の妨げになるという課題がありました。そこで、ハードウェアとソフトウェアを連携させ、その時々に応じた最適なカメラ設定へ制御することで、普段使いの画質とVAIO ウェルネスケアの測定精度向上の両立を実現しています。また、PC内蔵カメラはセンサーサイズやレンズ性能の制約もありますが、カメラデバイスやアプリを作り込むことで克服しています」

 三つ目は、測定結果を分かりやすく可視化できることだ。測定結果はその場で表示され、自動的にPCへ保存される。トップ画面では当日の測定結果と過去1週間の推移をグラフで確認できるほか、履歴画面では過去の測定結果を一覧で確認可能だ。日々の変化では気付きにくい小さな変化も振り返ることができる。

測定結果を基に過去1週間のトレンドをグラフで表示する。(掲載している画面は開発中のものを含む。実際の画面はアップデートなどにより変更される場合がある)
VAIO
開発本部
プロダクトセンター
担当部長
鈴木一也

 VAIO 開発本部 プロダクトセンター 担当部長 鈴木一也氏は次のように語る。「単に測定するためのアプリではなく、ユーザーに気付きを与えることを目的としたアプリとして設計されているVAIO ウェルネスケアによって、これまで生産性ツールだったPCは、生活支援ツールへと進化していきます。PCは作業のためのツールにとどまらず、ユーザーの毎日に寄り添い、小さな気付きを支える存在へと変わっていきます。

 当社が目指しているのは、単なる道具ではなく、ユーザーに寄り添う相棒のようなPCです」

センシング技術の活用で
PCがあなたを最もよく知る相棒に

 VAIO ウェルネスケアの提供を開始する背景について、鈴木氏はこう語る。「個人・法人の双方で日々の小さな変化に気付く重要性が高まっていることが挙げられます。個人では、健康意識の高まりや健康寿命への関心などから、セルフケア需要の高まりがみられます。一方で法人では、人的資本経営への関心が高まる中、従業員のコンディションをどう支援していくかが大きなテーマになりつつあります。しかし、在宅勤務やリモートワークなど多様な働き方を背景に、一人で働く時間が増え、自身の状態の変化に気付きにくい状況が生まれています。また私生活でも、核家族化や一人暮らしの増加、多忙な生活などにより、周囲も変化に気付きにくい状況が定着しています。こうした状況に対し、健康アプリやウェアラブル機器は有効な手段ですが、継続的な利用が前提となるため、個人で使い続けることや、法人が全従業員へ導入することに課題があります。しかし毎日使うPCなら、ユーザーに寄り添った気付きの接点を作れます。こうした背景からVAIO ウェルネスケアの提供を決定しました」

 VAIO ウェルネスケアは秋以降の正式リリースを予定しており、個人・法人向け双方の新製品への搭載を順次拡大していくという。また、クラウド管理機能の提供も予定している。法人向けに会社単位や部署単位での一括管理を可能にするとともに、有償ソリューションとしての展開も視野に入れている。そのほか、「ダブルヘルス」への展開も計画している。ダブルヘルスとは、ユーザーの健康状態とPC本体の健康状態を組み合わせて可視化する考え方だ。ユーザーとPC双方の健康状態を管理することで、最高の生産性と創造性を発揮できる未来につなげていくという。

 最後に鈴木氏は、VAIO ウェルネスケアの位置付けについて次のように語った。「VAIO ウェルネスケアはユーザーの状態をセンシングする第一歩です。一方で当社はこれまでも『VAIO User Sensing』として、利用シーンや周囲の状況を理解する取り組みを進めてきました。この二つを組み合わせることで、当社のPCはユーザー自身の状態と周囲の状況をより深く理解できるようになります。AIエージェント時代における当社のPCは、単なるAIの実行端末ではなく、ユーザーの状況や状態を理解し、その人に合わせた支援を行うデバイスへと進化していきたいと考えています。VAIO ウェルネスケアは、その未来に向けた進化の布石です。当社のPCがあなたを最もよく知る相棒となり、先回りしたサービスや支援を実現していく。その第一歩として、このソリューションを位置付けています」


※1血管情報・心拍情報は、カメラから取得したデータに基づき、統計学的処理により構築したモデルから推定した値であり、医学的に確立されたものではない。
※2 VAIO ウェルネスケアは生活環境改善(業務環境改善)を目的としたものであり、医療目的(疾病の診断・治療・予防など)の使用はできない。
※3 先行プレビュー版は、正式版に先行して提供する体験版であり、機能の追加や改善を予定している。
※4 VAIO SX14-R (2026年5月発売モデル)。
※5 使用環境によって測定結果が出るまでに最大15秒かかることがある。また周囲の環境などにより正しく測定できない場合がある。