岡山市立平井小学校
岡山市立平井小学校は、「個別最適で協働的な学びを実現するGIGAスクール」を合言葉に、全ての教員が効果的にICTを活用する授業改善に取り組んでいる。その中で活用が進められているのが、生成AIだ。校務から児童生徒の学びまで、多様な用途で活用されている同校の教育の様子を見ていこう。
生成AIの基礎から学ぶ
岡山市立平井小学校は、岡山県南部に位置する岡山市中区にあり、地域の住宅地に根差した公立小学校だ。「明日を楽しみにできる学校」を教育目標に掲げており、1人1台のChromebookとクラウド環境を活用した協働的な学びに取り組んでいる。日本教育工学協会(JAET)の「学校情報化優良校」に認定されているほか、2025年度からは文部科学省のリーディングDXスクール事業における「生成AIパイロット校」に指定され、校務での生成AI活用に積極的に取り組んでいる。
岡山市立平井小学校 教諭 遠藤隆平氏は、同校のこうしたICT活用の取り組みを推進している。
「生成AIの活用をスタートするに当たり、2025年4月に教員を対象に、現在課題に感じていることをアンケートしました。すると文章作成業務や、学校行事をはじめとした情報把握といった校務の負担が大きく、効率化が求められている一方で、ICTに関する知識やスキルが不足していることから、効率化が難しいという課題が見えてきました。また最近、本校でも日本語を母語としない中国籍の子供たちが増えてきています。そういった子供たちに対して、個別最適な教材提供を行う必要性も挙げられており、多様化する学びのニーズに対してもAIを活用できないかと検討を進めました」と遠藤氏は振り返る。
生成AIの導入に当たり、文部科学省が公表している「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」を基に、学校現場における生成AI活用についての研修会も実施した。生成AIパイロット校に指定された同年7月には、文部科学省学校DXアドバイザーを招き「岡山市スタートアップ研修会」を実施。「AIとは何か」「なぜ今AIが注目されているのか」について学ぶ教員研修を行った。



NotebookLMに情報を集約

遠藤隆平 氏
遠藤氏はGoogle for Education認定トレーナーの資格を有しており、岡山市GIGAスクール推進リーダーや岡山県小学校教育研究会 情報教育部会 研究部長、デジタル庁デジタル推進委員も務めている。
平井小学校では現在、主にGoogleの教育向けGeminiをメインに活用しているという。その背景について遠藤氏は「Google for Educationで使えるGemini for Education(以下、Gemini)は、ユーザーが入力するデータを基盤モデルのトレーニングに利用されないため、教育利用も安心です」と語る。平井小学校がもともとChromebookを活用しており、Google for Educationを日常的に利用していることも、Gemini活用の相性の良さの一つだ。
その代表的な例が、平井小学校のマスコットキャラクターの作成だ。平井小学校の児童に「平井小学校といえばどんなイメージがある?」といったアンケートを行い、そこから出てきたキーワードをもとに、「Gemini 2.5 Flash Image」を活用してイラストを生成した。その結果できあがったのが、「平井小広報犬 ひらい〜ぬ」だ。このひらい〜ぬは現在、平井小学校の校内チラシやデジタルディスプレイなどで活躍している。
また、学校の運営要項などの独自ルールをまとめた文書を「NotebookLM」にアップロードすることで、学校運営の情報共有を効率化している。「学校には、行事の進め方や教科書の注文方法など、担当教員しか把握していない決まりごとが数多くあります。そのたびに担当の教員に確認していると業務が止まってしまいます。そこで、それらの情報を全てNotebookLMに集約し、分からないことはそこに尋ねる運用にしたところ、利便性が非常に向上しました」と遠藤氏は説明する。
現在では、職員会議の資料や音声データもNotebookLMにアップロードしているという。「平井小学校の教員たちの“脳”のような存在ですね。ここに聞けば、何でも返してくれるイメージです」と遠藤氏は語る。
NotebookLMの活用は多岐にわたっており、小学校社会科の学習指導要領を読み込ませて、教える時代ごとに抑えたい内容のチェックリストを作成させたり、学習指導要領解説などをNotebookLMに読み込ませ、評価基準を作って子供たちにも分かりやすいインフォグラフィックにまとめたりしている。こういった生成AIの活用は遠藤氏にとどまらず、平井小学校の教員全体に広がっている。
Gem機能を個別最適な学びに生かす
教育向けGemini(Gemini for Education)は年齢制限がなく、小学生の子供たちも使えるため、学習シーンでの生成AI活用も進んでいる。特に活用されているのが「Gemini Canvas」(以下、Canvas)を活用して開発された独自アプリだ。「Canvasを活用したアプリ開発は平井小学校全体に広がっており、1年生を対象にした『20までの計算フラッシュカードアプリ』や、『カタカナ練習アプリ』『ひらがな学習アプリ』、6年生の家庭科向けの『調理実習計画アプリ』などさまざまな学習アプリケーションが開発されています」と遠藤氏は語る。
Geminiには、AIアシスタントをカスタマイズする「Gem」機能がある。平井小学校ではこのGemを活用し、1年生向けに分からない言葉の意味をイラスト付きで教えてくれるGemや、6年生向けに算数問題に取り組む上でのサポートを行う学習コーチGemなどが作られ、活用が進められている。
「算数をサポートする学習コーチ(Gem)は、問題の番号をGemに読み込ませると、6年生が分かるようにアドバイスをしてくれます。実際にこれを家庭学習で使ってもらったところ、普段は宿題を提出してこなかった児童が、学習コーチに聞きながら宿題を進めて、できる範囲で問題を解いた算数プリントを提出してくれた例もありました。これまでは保護者の方も仕事で忙しく、聞けなかった問題のことを学習コーチに尋ねることで宿題に取り組めたようです。個人的にはChromebookを教育に導入したときよりも、生成AIを導入したときのほうが感動を覚えました。もちろん、生成AIが出力した答えをそのまま書き写すのでは、という心配も当初はありましたが、導入してみると心配よりも喜びの声のほうが多くあります。まだまだ踏みとどまっている学校も多いと思いますが、ぜひ導入してほしいと思います」と遠藤氏は語る。今後は学力向上を目指し、子供たちのレベルに合わせたアプリの作成などを行いながら、個別最適な指導に生成AIを生かしていきたい考えだ。
