メーカーからパートナー、エンドユーザーまでのサプライチェーンの安定化に向けた取り組み

AI市場の成長によってPCおよびサーバー、ストレージなどの需要が伸びている。
しかしその一方で、AIの急速な普及が半導体不足を引き起こし、IT製品の納期や価格に影響を及ぼしている。
これまでも"商材の調達に時間を要する"状況を幾度となく経験してきたが、これからのビジネスは状況の改善よりも、見通しのきかない状況を前提とした取り組み方に変えていく必要がありそうだ。
これからのITビジネスへの取り組み方について、世界中のIT製品を日本全国に提供するディストリビューターであるダイワボウ情報システム(DIS)の常務取締役 代継勝巳氏に話を伺った。

今後のビジネスを伸ばすには
売り方、買い方を変えるべき

 直近10年間を振り返ると、働き方改革やコロナ禍に伴うテレワークの急速な普及、Windows 7およびWindows 10のサポート終了、GIGAスクール構想の実施など、IT需要を喚起する出来事が数多く生じた。

 その一方で地域紛争や二国間通商摩擦などの地政学問題を要因とした燃料の高騰や材料の調達難、物流の停滞などが生じ、IT製品に限らず、さまざまな業界で製品の生産や提供の遅延が深刻化した。

 需要は伸びているにもかかわらず、提供する製品を調達するのに時間がかかる、あるいは顧客が要望する数量を調達するのが難しいなど、ビジネスを伸ばせない歯がゆい状況に何度も直面してきた記憶がある。

 そして現在、プロセッサーやメモリーなどの半導体不足がPCやサーバー、ストレージをはじめとするIT製品のビジネスに大きな影響を与えている。こうした状況についてDISの常務取締役 代継勝巳氏は次のように説明する。

「現在のメモリー需給の逼迫は、地域紛争や通商摩擦によるエネルギー・原材料の問題だけでなく、AI需要の急激な立ち上がりも大きく影響しています。2022年11月30日にOpenAIがChatGPTを公開して以降、生成AIは急速に普及しました。企業における活用も広がり、それに伴ってデータセンター向けプロセッサーやメモリーの需要が急増しています。結果として供給が追いつかない状況が生じています。この変化を事前に正確に予測することは極めて難しかったのではないでしょうか」と問いかける。

 現在、メモリー不足によってPCやサーバーが調達しづらい状況に陥っていることは周知の通りだが、これは半導体メーカーの生産能力が単純に不足しているというわけではなく、半導体メーカー各社がロードマップに沿って正常にビジネスを進めているにもかかわらず、需要が想定を超えて過熱している結果であるとみるべきだろう。

 代継氏は「商材の調達面でも、お客さまの需要面でも、どのような変化が起こるのかを予測することがますます難しくなっています。だからこそ、これまでの売り方や買い方を見直す必要があります。メーカーさま、パートナーさまと共に新たな方法を考え、市場へ浸透させていくことが、ディストリビューターであるDISの重要な役割だと考えています」と説明する。

写真はダイワボウ情報システム(DIS)グループの物流拠点の一つ、関東中央センターの外観。この中でDISのPDセンターが運営されている。

入札制度を実情に合わせる提言と
物流の集約に向けた取り組み

ダイワボウ情報システム
常務取締役
代継勝巳

 市場を取り巻く環境の変化と、それに伴う需要と供給の変化に対して、売り方、買い方をどのように変えていくのか。DISは国への働きかけをすでに進めているという。

 代継氏は「まず見直していただきたいのが入札制度です。現在のような調達環境が続くのであれば、従来の制度だけでは実情に合わない場面が増えてきます。IT製品の納期遅延によって次の案件に参加できなくなる状況が続けば、企業の応札機会が減少し、日本全体のIT活用やAI活用にも影響を及ぼしかねません。時代の変化に合わせた制度運用について、引き続き提言していきたいと考えています。また国の制度が変われば、民間企業の取引慣行にも好影響をもたらし、ITビジネス全体の安定化につながると考えています」と説明する。

 さらに2024年問題や2030年問題を背景とした物流業界の人手不足に対応し、持続可能なロジスティクスオペレーション体制を構築するため、DISでは物流機能の強化にも取り組んでいる。

 DISはメーカーの物流業務を受託し、商品の保管・在庫管理・出荷に加えて、流通加工や配送サービスまでを提供する物流拠点であるPDセンター(PD:Physical Distribution)を運営している。

 代継氏は「需要変動が大きくなる中で、在庫と需要を全体最適で管理することが強く求められています。その実現に向けて、DISでは物流機能の集約にも取り組んでいます」と説明する。

 DISでは物流機能の集約や効率化を進めることで、需要増加と人手不足の双方に対応できる体制づくりを進めている。

需要増に対する人手不足に
物流の集約が解決策となる

 DISの物流への取り組みは国内IT業界が直面する問題への対策でもある。代継氏は「少子高齢化が進む中で、ITの果たす役割は今後さらに大きくなります。一方で労働力人口は減少していきます。IT需要の増加と人手不足という課題を両立して解決するためにも、物流の集約と効率化は早急に進めていく必要があります」と訴える。

 最後に代継氏は「ディストリビューターであるDISにとって、メーカーさま、パートナーさま、その先のエンドユーザーさまをつなぐサプライチェーンを円滑に機能させることは重要な使命です。そのために、メーカーさまの情報を迅速に共有し、在庫と需要の最適化を通じてパートナーさまの調達リスク低減に貢献していきます。これはディストリビューターとしての基本的な役割ですが、その役割を確実に果たし、日本全国へIT製品を安定的にお届けすることこそが、DISの存在意義だと考えています」と語った。