リスク分析で調達を
多拠点生産で供給の安定を図る

Dynabookはコロナ禍を契機に、サプライチェーンリスクや経済安全保障を踏まえたPCの部材調達に取り組んでいる。
特殊なケースに限定して、2025年10月からはPCの国内生産を一部スタートさせるなど、PCへの信頼性を求める企業や団体に向けた供給にも取り組んでいる。
DynabookはPCに対して信頼性や安定供給を求めるユーザーからの要望にどのように応えているのか。
その取り組みを取材した。

先回りのリスク分析で
部材調達を最適化

Dynabook
生産統括部
グローバル SCM部 部長
鈴木 徹

 中東情勢の悪化をはじめとした地政学リスクや、AI需要の拡大による一部半導体やメモリー需要への影響など、PC生産を取り巻く部材供給の課題は数多い。そうした中でDynabookは、コロナ禍に築き上げたサプライチェーンネットワークを生かし、安定したPC供給の実現につなげている。

 Dynabook PC事業部 海外PC統括部 統括部長 兼 生産統括部 グローバル調達部 部長 清田 剛氏は「PC生産に必要な調達業務の基本姿勢として『基本的なことを粛々とやっていく』ことが重要です。2020年のコロナ禍では、感染拡大によって発生した工場の稼働停止や海上輸送の寸断や遅延などにより、部材の供給が滞っていました。こうしたサプライチェーンに発生したリスクに対して、当社としても当時さまざまな対策を講じ、PCの安定供給に注力してきました。現在はこのコロナ禍で築き上げたサプライチェーンネットワークを駆使することで、地政学リスクや関税負担、米中関係や自然災害など多様なリスクが常時存在する中でも、問題の兆候を早期に捉え、先手を打って解決に向けて取り組んでいます。こうした取り組みによって、少しずつではありますが、お客さまのご要望に沿えるよう改善を重ねてきています」と語る。

Dynabookでは顧客ニーズに応え、dynabook最新モデルなどの法人向けPCの国内生産にも対応している。

 清田氏は日々変化するサプライチェーンネットワークを取り巻く情勢に対し、メモリー専門情報誌やメモリーメーカーとの定期ディスカッションを実施することにより、情報収集に務めているほか、サプライヤーの決算情報を生成AIも活用しながら分析を行い、変化の兆候や共通する課題の把握に役立てている。今後発生する可能性のあるリスクをいち早く察知し、対策につなげられるようにしているのだ。またサプライヤーから得たアドバイスを社内の商品部材・生産チームに展開し、需要側と供給側の情報を突合することでタイムラグを調整しているほか、PC市場の分析結果をパートナー企業とも突き合わせ、ずれの原因を共同分析するといった取り組みも実施しているという。

 清田氏は「重要なのは問題が起きてから対応することではなく、変化の兆候をいち早く捉えることです。そのため日頃からサプライヤーとの対話による情報収集を継続し、常に代替案を検討するようにしています。特別な対策があるわけではなく、基本的なことを実直に続けることが安定供給につながっていると考えています。需要変動に伴う納期の問題は日常的に発生しており、中には致命的な納期遅延になっていた事象もありますが、情報収集の積み上げに加え、リスク顕在化前に解決法を先回りして準備する手法によって納期遅延の影響を最小限にとどめています」と日頃の取り組みの積み重ねが現在の安定供給につながっていると説明する。

多拠点生産で実現する
レジリエントな供給体制

Dynabook
PC事業部 海外PC統括部
統括部長 兼 生産統括部
グローバル調達部 部長
清田 剛

 DynabookのPCの約9割以上は、中国・杭州市の工場で製造されている。このDynabook Technology(Hangzhou/杭州)は、多品種の製品を短納期で供給するフレキシブルな生産体制を構築しており、同社PCの安定供給に寄与している。本工場の先進的な生産プロセス革新と工場マネジメントへの取り組みは高く評価されており、2013年度に日本能率協会より「ものづくりプロセス革新賞」も受賞している。一方で、経済安全保障の観点から国内に生産のPCを求める顧客も少ないながらも一定数存在する。そうしたニーズに応えるため、Dynabookは昨年からPCの国内生産もスタートしている。

 Dynabook 生産統括部 グローバル SCM部 部長 鈴木 徹氏は「国内生産においてはEMS(電子機器受託製造サービス)パートナーを活用しており、当社のものづくりポリシーに賛同していただけるパートナーさまとともに製造に取り組んでいます。EMSの拠点は日本以外にも台湾をはじめとした他国にも展開しており、かなり以前から一極集中でのものづくりに対するリスクを問題視していました。中国製造と比較して国内製造のPCはコストが上がってしまいますが、そうしたコスト増をご了承いただける企業さまからのオーダーを受けて製造に取り組んでいます。当社はPCメーカーの老舗として、PCに対してのさまざまなリスクを排除するべく、国内生産のみならず『こういう部品は使わないでほしい』といった要望にもきめ細やかに対応しています」と語る。国内製造のPCは全体の数%の割合だというが、そのニーズは一定数存在するため、今後も一定割合での需要が見込まれるだろう。

需要予測と情報共有が
安定供給の鍵になる

中国・杭州市にあるDynabook Technologyでは、DynabookのPCの9割以上が製造されている。

 Dynabookでは部品調達から販売計画・生産計画・物流に至るまで一貫した安定供給体制を構築しており、複数の輸送ルートの確保など、中長期的な視点でのリスクヘッジに取り組んでいる。一方で、急なPCの発注には対応が難しいケースもあると清田氏は語る。

「PCメーカーとして、どのような環境においてもPC供給が行えるよう準備を進めていますが、さまざまな部材や需要増案件ではリードタイムの変動も発生しています。AIや市場分析を活用しても需要予測には限界があります。そのためお客さまや販売パートナーさまにもご協力をいただき、早い段階で需要見通しを共有させていただくことが重要です。それにより安定した供給につなげることができます」と清田氏はパートナーへのメッセージを語った。