変動するIT市場を読み解き
安定調達と次世代の環境を築く
世界的なAI需要の急増とそれに伴う自社インフラ構築の動きが活発化する中、サーバー製品をはじめとするITハードウェアの調達環境は緊迫を極めている。
部材コストの高騰や調達リードタイムの長期化が常態化する中、企業はこの調達危機にどのように向き合うべきなのか。
日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)に、IT調達の深刻な現状と構造的要因、そして企業への支援策から今後の柔軟なITインフラ戦略に至るまでの具体的な対応策を伺った。
需要急増と部材高騰が招く
IT調達リードタイムの長期化
ITインフラの調達現場では、製品の手配から納品までに予想以上の期間を要するケースが目立つようになった。世界的なAIブームやセキュリティ・データガバナンス意識の高まりを背景に、サーバーやストレージをはじめとするハードウェア需要が増加し、従来の調達手法やスケジュール感では通用しにくい状況が生まれている。

常務執行役員
パートナー営業統括本部長
田中泰光 氏
こうした現状とその背景にある構造的要因について、HPE 常務執行役員 パートナー営業統括本部長 田中泰光氏は次のように説明する。「メモリーから始まった供給逼迫の影響は、CPUやハードディスクなど主要部品全体へ広がりつつあります。背景にあるのは、世界的なAI需要の急増です。特にパブリッククラウド上でAIエージェントを常時稼働させると、トークン消費コストが高騰するため、自社でプライベートクラウドを構築・運用する動きが強まっています。こうしたシフトもハードウェア供給を圧迫する一因です。サーバーやストレージへの需要が世界中で高まる一方で、部材メーカーは供給過剰による価格下落のリスクを避けるため、生産ラインの拡大に非常に慎重です。この需給のアンバランスさが部材の調達原価を押し上げる結果となっています。従来のような『短納期での即納』は難しくなっており、単なる遅延というより、調達にかかる標準的なリードタイム自体が以前より長期化していると捉えるべき状況にあります」
こうした世界的な部材不足とコスト高騰は、特定のベンダーに限った話ではない。しかし、調達難に対する危機感が薄い企業では、いまだに「納期が遅ければ別のベンダーから買えばいい」という意識が根強く残っているのが実態だ。現在はベンダーを問わず、IT業界全体で調達期間が伸びる傾向にある。企業には、現状の国際的な調達環境を客観的に認識し、早期に計画・投資を進める意識改革が強く求められている。
固定的な刷新サイクルを脱却し
拡張性を備えたIT投資へ
慢性的な供給逼迫とリードタイムの長期化が避けられない状況において、企業は従来のIT投資に対する考え方を根本から見直す必要がある。かつて主流だった「一定周期で一括刷新する」という固定的なサイクルは、技術進化のスピードが加速するAI時代には、もはやそぐわなくなっている。
「数年後にどのようなテクノロジーが主流になっているかを正確に予測することは困難です。だからこそ、柔軟に変化を受け入れられるインフラ環境を構築しなければなりません。特にAIエージェントをはじめとする先進技術の活用が進むと、システムにかかる負荷やデータ処理量は従来とは比較にならない規模で激増します。それに伴い、インフラへの投資も単なる『機器の維持・更新費用』ではなく、企業の生産性を左右する『成長投資』として捉え直す視点が不可欠です。将来的にインフラ容量が右肩上がりで増加することを見据え、中長期的な購買計画を立てる必要があります」と田中氏は話す。
こうした変化に対応できる柔軟なインフラを実現するための選択肢の一つとして、同社が提示するのが、HPEのハイブリッドクラウドプラットフォーム「GreenLake」である。オンプレミス環境のセキュリティとコスト効率を維持しながら、パブリッククラウドのような拡張性と俊敏性を併せ持つ。「GreenLakeの強みは、柔軟な消費モデルによって必要な容量を速やかに拡張できる点にあります。また、現在のような調達難の状況下においても、安定したリソース供給の仕組みが整っているため、確実かつ迅速にインフラを確保したい企業にとって有効な選択肢となるでしょう」(田中氏)

確実な即納と強固な連携で
企業の安定したIT基盤を構築
IT調達における混乱を最小限に抑え、企業の円滑な予算執行を支援するため、HPEでは独自の施策を推し進めている。その一環としてハードウェア業界では部材価格の変動リスクを背景に見積もりの有効期限が短縮される傾向にある中、同社は見積もり有効期限を30日間に設定した。「納期自体の短縮に直接結び付くわけではありませんが、お客さまがじっくりと稟議や予算確保を進められる環境を整えました。価格の再見積もりや予算の取り直しといったプロセスを減らせるため、導入に向けた調整がよりスムーズになります」と田中氏は話す。
こうした計画・調整段階の支援に加えて、納期の面でも実効性のある対策を進めている。即納ニーズに対しては、ダイワボウ情報システム(DIS)との連携による「HPE Smart Choice」を展開している。HPE Smart Choiceは、サーバーおよびストレージの人気構成をパッケージ化し、低コストかつ短納期で提供するモデルである。DISの在庫から即納品が行える体制が整えられているため、予測が難しいIT調達において、最適なシステム構成をスムーズに導入できる点がメリットだ。
こうしたさまざまなアプローチによって、今後も同社は企業を支えていく。「変化の激しい市場環境においても、パートナー企業さまとの強固な連携を通じて早期の在庫確保と最適な製品提案を行い、お客さまの安定したIT基盤の構築を力強く支えていきます」と田中氏は力を込める。
不確実性の高まる時代にあっても、確かな調達基盤と柔軟なインフラ選択肢を武器に、企業の挑戦を的確にバックアップしていくHPEの姿勢は、今後のIT戦略を描く全ての経営者やIT管理者にとって心強い道標となるはずだ。

