フロンティアAIによりサイバー攻撃が
高速化する時代でのアプローチとは

7月29日、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズはフロンティアAIがもたらす脆弱性の脅威と、同社が示す次世代の防御戦略を説明する記者会見を実施した。現在サイバー攻撃は、Anthropicの「Claude Mythos」といったフロンティアAIの登場により高速化が始まっている。攻撃者に先行した対応が必要になる中で、同社は一体どのようなアプローチを取っていくのだろうか。脅威の現状と共に、本会見で語られたアプローチの内容をレポートしていこう。

AIが補佐ではなく実行役として
攻撃のライフサイクルに介入

昨今のサイバー攻撃の状況について警鐘を鳴らすチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 日本法人社長 佐賀文宣氏。

 会見の冒頭にはチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 日本法人社長 佐賀文宣氏が登壇し、「高度なサイバー攻撃には専門知識が必要という前提が崩れ始めています」と警鐘を鳴らす。

 近年はサイバー攻撃に必要な文章の作成やプログラミング、事前調査、翻訳といった支援が、全て生成AIで簡単に行えるようになっている。たとえ少人数であっても、大規模な攻撃を短時間かつ低コストで繰り返せるようになっているのだ。佐賀氏は攻撃が標準化され、分業化され、自動化されている現状を、“攻撃の産業化”と表現する。

 しかし佐賀氏は、「攻撃の手法はあまり変わっていません」とも指摘する。「手口自体は、昔からあるものが使われています。圧倒的に変わったのは生産性です。ソーシャルエンジニアリングの設計やマルウェアの開発、攻撃中の支援など、攻撃のライフサイクル全体に生成AIが入り込んでいます」(佐賀氏) さらに佐賀氏は、同社が発表した年次調査「AIセキュリティレポート2026」の内容に深く触れていく。本レポートでは、AIが攻撃を手伝う道具から攻撃を主導する実行役になったと指摘している。侵入した後のコマンド実行やデータ分析にとどまらず、被害者との交渉まで含めた一連の流れを、人手を介さずに進めているのだ。こうした流れも踏まえて本レポートでは、AIとサイバーセキュリティの大きな変化に「AIドリブンのサイバー脅威」「AIシステム自体の脆弱性」「シャドーAIによるデータリスク」の3点を挙げている。

マシンスピードで脅威に対応する
自律型防衛の時代に

 では、フロンティアAIがサイバー攻撃を高速化させる時代において、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズはどのような対応を取っていくのだろうか。
「私たちは『フロンティアAIモデル準備プログラム』という取り組みを進めています。我々は攻撃者よりも先に最先端のモデルを使い、当社の製品やコードを継続的に検査することで強化しています。その検査の中核となるのが、社内ツールの『Business Logic Application Security Testing』(BLAST)です。BLASTは単にコードの間違いを探すだけではなく、複数の製品やサービスを跨いでデータの流れや認証の権限、サービス間の信頼関係を分析します。そして理論上の脆弱性や問題点を並べ上げるだけでなく、実際に攻撃される可能性がどの程度あるのか、攻撃された際に盗まれる情報は何かを見極め、優先順位を付けた上で修正していくのです。さらにBLASTは、特定のAIモデルに依存していません。それぞれの技術の強みを見た上で、目的に応じて最適なものを取り入れています」(佐賀氏)

同社はBLASTを使用し、フロンティアAIがサイバー脅威を高速化させる時代に対応している。

 また佐賀氏は「サイバーセキュリティは、境界型防御、ゼロトラストに次ぐ三つ目のパラダイムにシフトしてきています」と話す。そのパラダイムとは、マシンスピードの脅威にマシンスピードで対応していく“自律型防衛”だ。

「ゼロトラストはこれからも重要ですが、誰がアクセスできるのかを管理するだけでは、今後は足りなくなってきます。AIエージェントがどんなデータを読み込み、何を判断し、何を実行するのかというアウトプットまで、リアルタイムで守っていく必要があるのです。人が方針を決め、セキュリティ専用の仕組みがその方針をマシンスピードで実行していくことを、自律型防衛と定義しています」(佐賀氏)

 さらに佐賀氏は、同社はハイブリッドメッシュネットワークセキュリティ、ワークスペースセキュリティ、エクスポージャーマネジメント、AIセキュリティの四つの領域で顧客の変革を支えていくと語る。

同社は四つの領域で、顧客のAIトランスフォーメーションを支えていく。

攻撃者がAIを利用するのに対し
防御側もAIを活用していく

攻撃者の現状を語るチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 最高情報セキュリティ責任者(CISO),APAC ジャヤント・デイブ氏。

 佐賀氏に次いで、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 最高情報セキュリティ責任者(CISO),APAC ジャヤント・デイブ氏が登壇し、「攻撃者は何の義務も規制も課せられていない中で活動しているため、あらゆるものを上回るスピードで進化しています。すでに従来型の防御では成り立たなくなっているのです。レガシーなリスクがまだ残る中で、その上にAIのリスクが増えています」とサイバー攻撃の現状を話す。

 さらにデイブ氏は、セキュリティにおける問いとして、攻撃者のAI活用をどう防御するかを問う“Security From AI”、いかにガバナンスを利かせてAIを活用するかを問う“Security For AI”、AIを自社のためにどう使うかを問う“Security With AI”の三つを挙げる。

 それぞれの問いに対して、同社は回答を出している。まず“Security From AI”に対しては、「Check Point Frontier AIモデル 対応プログラム」を用意した。「重要なのはまず、予防に重きを置くことです。それによって初めて強靭性を実現できます。ThreatCloud AIなども活用しながら、いかにレジリエンスを実現していくかが大切なのです」(デイブ氏)

Security From AIの答えの一つとして用意する、Check Point Frontier AIモデル 対応プログラム。

 そのほかにも、高精度な脅威防止を行うAIネイティブなワークスペースセキュリティ、フロンティアAIモデルに対抗するAIエージェント「CTEM Agentic Exposure Validation」も用意する。

 次に“Security For AI”では、従業員、アプリ、AIエージェントを一括で守り抜く「AIディフェンスプレーン」を紹介する。「組織において重要なのは、シャドーAIをどう解決するかということです。これを達成するにはまず、シャドーAIを発見しなければなりません。シャドーAIを見つけられれば、シャドーAIにガバナンスを利かせたり、コントロールできる状態にしたりすることが可能になります。そこでAIディフェンスプレーンで環境を統合すれば、全てを可視化できるのです。社員の動きやAIエージェントの動きを統合的に確認可能で、制御も行えます」(デイブ氏)

Security For AIの答えの一つとして用意する、AIディフェンスプレーン。

 最後に“Security With AI”では、自律型エージェントのための専用アーキテクチャ「Agentic Network Security Orchestration」を用意している。「設定、ポリシー、ネットワーク、翻訳、コンプライアンスそれぞれにエキスパートを用意しています。特にコンプライアンスエキスパートは、秒単位でさまざまな動きを取れるようになっています」(デイブ氏)

Security With AIの答えの一つとして用意する、Agentic Network Security Orchestration。

 最後にデイブ氏は、同社の今後について以下のように意気込んだ。「AIは非常に速いスピードで進化しています。そのため皆さまは今すぐ行動を取ってください。攻撃者側はAIを使っているため、防御側もAIの活用が重要になっています。テクノロジーの進化やガバナンスといった難しさもありますが、私たちはそこに対してソリューションを提供することで、お客さまに貢献します」