Macbee Planetのグループ会社として、2023年11月に設立されたMacbee Xは、Facebook広告やYouTube広告などの運用型デジタル広告を主な事業領域としている。こうしたデジタル広告の運用と同時に、同社がクライアント向けに提供しているのが生成AIを活用したダッシュボードツールだ。広告制作から効果測定に至るまで、生成AIを活用してマーケティングサイクルを高速化しているMacbee Xの事例を見ていこう。
顧客接点のパラダイムシフト

渡辺 武 氏
Macbee Xの親会社であるMacbee Planetは、もともとはアフィリエイト広告をはじめとした成果報酬型広告(アフィリエイト・リード獲得)の運用事業からスタートした企業だ。「LTVマーケティング」手法を駆使してインターネット広告市場の成果報酬型への転換を進めるなど、デジタルマーケティング領域で豊富な実績を持っている。
そうした視点から、AI時代に求められるデジタルマーケティングの変化について、Macbee X CXデザイン部 部長 岩城雅史氏は「約20年前であれば、Google検索で出てきた広告などがユーザーとの接点でした。それが約10年前にはFacebookなどのSNS広告へと変化しました。数年前からはChatGPTをはじめとした生成AIへと、ユーザーとの接点がシフトしています」と日本市場でのWeb広告の変遷を踏まえて語る。こうした顧客接点のパラダイムシフトが起こっている現在、広告の目的も、従来型の商品・ブランド「認知」の獲得手法から、Macbee Planetグループが得意としてきた資料請求や契約などの「獲得」型施策の重要性が増していく可能性が指摘された。
このようなパラダイムシフトの中で、Macbee Xはどのような戦略で事業を展開しているのだろうか。岩城氏は「生成AIの台頭により、商品に対する認知の作り方も変化しており、いかにAIに引用されるかが重視されています。当社はAIに引用されるためのコンテンツ戦略のコンサルティングと、その状態を可視化するダッシュボードの提供に取り組んでいます」と語る。
Macbee Xが提供するダッシュボード「Macbee Eye」は、広告のデータを一元管理・可視化できるツールだ。岩城氏は「多くの広告代理店や、その企業と取引するクライアントは、ROAS(広告費用対効果)をはじめとしたレポートをExcelでまとめているケースも少なくありません。しかしExcelでの管理や、データの集約や統合の作業は非効率的で、私としては業界の“負”であると捉えています。当社が提供するMacbee Eyeは、提供するクライアントに合わせてカスタマイズを行っており、前述したデータの管理を効率的に行えます」と語る。
AIレコメンドが意思決定を加速する

岩城雅史 氏
同社が提供するMacbee Eyeの大きな特長は、閲覧するユーザーの立場に応じた情報表示が可能な点だ。例えば経営層向けには、決裁者が判断を下しやすいようKPIの概要が一目で分かるエグゼクティブサマリーページを表示できる。現場を担当するマーケティング担当者向けには、売り上げや広告費、ROASなどの詳細情報が確認できる画面が用意されているほか、AIによるサポートも行っている。例えば「AI推奨事項」という項目では、過去に蓄積されたデータを参照し、最適なキャンペーン実施の提案などを行ってくれる。Macbee Eyeの開発に携わっているMacbee X ソリューションプランナー 渡辺 武氏は「例えば保険商材の場合、1〜3月が繁忙期である一方で、7〜8月は閑散期です。こうした閑散期と繁忙期では最適なキャンペーンが異なりますが、AI推奨事項での最適化提案では、過去に蓄積したデータを分析・活用することで、季節トレンドを捉えたレコメンドを実現しています」と語る。
保険企業では、本ツールを使うことでWebリード獲得からコールセンター電話対応・来店・契約までの全プロセスを可視化できるメリットがある。可視化によって、契約獲得に至るまでのどこにボトルネックがあるかといった課題や、契約数を最大化するシミュレーションも行えるため、これまでの「リードを最大化する」という目的から一歩進んだ戦略が立てられる点も強みといえるだろう。資料請求を行った見込み顧客への電話対応でも、地域や年齢、性別などのユーザー属性に応じたトークスクリプトの自動生成が行えるため、デジタル広告からさらに一歩踏み込んだサポートを実現している。Macbee Eyeの活用により、意思決定スピードが約200〜250%向上するほか、レポート作成コストが約30〜40%削減できる効果もあったという。
クリエイティブ審査をAIが自動化
Web広告には、ユーザーの興味を引き、クリックや購入などの行動を促すためのクリエイティブの制作が必要だ。例えばSNSに表示されるバナー画像一つとっても、文字やイラストを組み合わせてユーザーの目を引くコンテンツにする必要がある。魅力的なクリエイティブ広告を制作することはもちろん重要だが、同時にクリエイティブ審査をクリアするコンテンツであることも求められる。具体的には企業ごとのレギュレーションや、各種法令に適合しているかどうかをクリアしたクリエイティブである必要があるのだ。
一方でこうしたクリエイティブ審査のチェック項目は、担当者個人に属人化していることが多い。またチェック項目を全て遵守できているかを目視で確認するのは、時間的負担も大きい。そうしたチェック項目の確認をAIが自動化するクリエイティブ審査ツール「Mitsubachi AI」も開発している。Mitsubachi AIはドラッグ&ドロップで画像を読み込むだけで審査結果と指摘事項が返ってくる仕組みだ。審査基準には法令によるデフォルトルールと企業ごとのカスタムルールの両方が組み込まれている。例えば企業独自のレギュレーションとして「背景色に赤はNG」といった審査ポイントがある場合は、それをMitsubachi AIの審査ツールに登録することで、誰が審査しても同一水準の審査が可能になるのだ。岩城氏は「当社でもこれらのクリエイティブ制作を行っていますが、これまで担当者個人に属人化していたナレッジをシステムに蓄積することで、『同じことを何度も言わせるな』というお叱りを受けることがなくなりました」と語る。
また、クリエイティブ制作におけるペルソナ設計にも生成AIを活用している。Macbee Planetはクライアント情報リサーチツール「Research Pro」を開発している。Macbee Xでは本ツールを活用することによりペルソナ設計が大幅に効率化しているという。岩城氏は「Research Proの活用によりペルソナ設計が効率化され、従来10個程度だったペルソナが15〜20個程度に増加しリーチ範囲が拡大しました」と語る。広告制作にも汎用的な生成AIを活用しており、音声の自動当て込みや字幕の自動生成が効率化できているほか、キャスティングリスクの回避にもつながっているという。
「クリエイティブ制作においては、0から50点まではAIが担い、人間がそこから70から100点以上に磨き上げることにリソースを集中させるという役割分担が確立されつつあります。一方で、AIが出す回答はまだ平均点以下にとどまることが多く、そこをいかに高品質化するかが今後の課題ですね」と岩城氏は語った。




