物流において、倉庫は単なる保管施設ではなく、在庫管理や輸配送の最適化、データ活用を支える物流ネットワークの中核拠点であり、物流全体の最適化を実現する重要な役割を担っている。
特に荷待ち時間や荷役時間の短縮を実現するには、倉庫運営の効率化が欠かせない。
実際、物流効率化法では倉庫業者に対し、トラック予約受付システムの導入や混雑時間帯を回避した日時指定など、荷待ち時間や荷役時間の短縮に向けた取り組みが求められている。
物流の持続可能性を確保し、サプライチェーン全体の最適化を進める上でも、物流倉庫への投資は重要なテーマとなっている。
そこで本記事では、物流倉庫の高度化・効率化を支える自動倉庫システムを紹介する。
世界から見た日本物流の強みと課題

立脇 竜 氏
Exotecは、2015年にフランスで創業した倉庫自動化ロボティクス企業だ。3次元ロボット倉庫自動化システム「Skypodシステム」を提供しており、Carrefour、Decathlon、GAP、UNIQLOといった業界をリードする企業やブランドに導入が進んでいる。
こうしたグローバル市場の視点から見て、日本の物流にはどのような課題があるのだろうか。Exotecの日本法人であるExotec Nihon 代表取締役 アジアパシフィック地域社長 立脇 竜氏は「日本の物流は、時間通りに必要な量が届く仕組みが構築されているという点において世界トップレベルといえます。しかし、これは各企業の現場レベルの努力の積み上げによるものであり、政府主導や標準化によるものではないという点が大きな課題になっています。具体的には、以前は人手不足が生じれば人員を投入して対応してきていましたが、今後は労働人口の減少と人件費の上昇、物流への要求水準の高まりにより、従来のやり方では対応が困難になるでしょう。一方、欧米は人材不足や高い人件費、仕組みの未整備から、企業間連携やプラットフォーム化が進みました。それ故に欧米では、物流やサプライチェーンの重要性が経営と不可分なものとして根付いています。日本では物流をコストセンターと捉えがちでしたが、物流を強化することが企業価値を高めることにつながるというのがワールドワイドでのトレンドです。今回の物流効率化法におけるCLOの選任義務化は、こうしたサプライチェーンの重要性に対し、日本の産業界や政府の認識が変わりつつあることを示しているといえるでしょう」と指摘する。
特に、従来の物流倉庫は商品の保管や出荷を担うバックヤード機能として位置付けられており、保管費や人件費などを発生させるコストセンターと捉えられることも少なくなかった。しかし近年は、人手不足の深刻化やEC市場の拡大に加え、物流効率化法への対応を背景に、在庫最適化や配送効率向上を支える戦略拠点としての重要性が高まっている。実際、物流効率化法では倉庫業者に対して荷待ち時間や荷役時間の短縮に向けた取り組みが求められており、物流倉庫の効率化やDXは物流全体の最適化を実現する上で欠かせない。
倉庫自動化の要となるWES
そこで注目されているのが倉庫自動化システムだ。代表的な設備としてWMS(倉庫管理システム)、自動搬送ロボット(AGVやAMRなど)、ピッキングシステムなどがある。Exotecが提供するSkypodシステムは、AMR(自律走行搬送ロボット)、ピッキング・ワークステーション、コンベヤーシステム、WES(倉庫実行システム)などを一体的に統合した倉庫自動化ソリューションだ。立脇氏は「Skypodシステムは、倉庫自動化だけでなく物流全体・サプライチェーン全体の問題解決を目指すソリューションです。物流倉庫の自動化というのは小規模でも数億円、大規模では100億円以上の投資です。この投資をただ倉庫だけの自動化にとどめるのではなく、企業の成長の対する投資となるよう、企業が重視する価値を起点にソリューション設計をしています」と語る。
Skypodシステムでは、AMRの「Skypodロボット」によるコンテナの自動運搬を行う。だが立脇氏は「自動倉庫システムのロボットというと、多くの場合ハードウェアに注目が集まりますが、実は重要なのはソフトウェアです」と語る。
SkypodシステムではWMSと自動化設備をつなぐWESとして「Deepsky」を活用している。Deepskyは倉庫内の全ての在庫の状況や所在、稼働状況をリアルタイムに把握し、入荷から出荷までのフローを継続的に最適化してくれる。これにより、トラックの到着情報との連携による入庫優先順位の自動判断を行い、オーダー受信からピッキングステーションにコンテナを搬送するという作業を2分以内で対応する。またピッキングにおいても、店舗での品出し作業を見据えた管理が行われているという。立脇氏は「例えばアパレル店舗では、衣服をサイズごとに並べて陳列を行います。Skypodシステムを活用すると、この店舗棚のレイアウトに合わせた出荷順序や積み付け管理が可能です。ピッキングの際にS・M・L・XLの順番通りに商品が箱に入るようロボットが制御されるため、店頭で品出しをする際にはその順番通りに陳列をするだけでよく、作業が効率化できます。物流倉庫もそうですが、店舗でも人手不足が進んでいますので、そうした人手不足を補うためにもこうしたオペレーションの効率化は必要になるでしょう」と語る。

Skypodロボットが出荷速度を加速
もちろん、自動搬送を行うSkypodロボットにもさまざまな工夫がある。Skypodロボットは、ラックの下を走行し、側面を昇降して必要なコンテナにアクセスする3次元立体走行型ロボットだ。「当社の設計思想として、できる限りシンプルに物を作るというものがあります。我々は“エレガンス”と呼んでいますが、シンプルさを重視することで余計なセンサーを排し、部品点数を少なく設計しています。このロボットはeコマースのような、ロングテール商品への対応が求められる倉庫において優位に働きます。ターゲットの箱に対して直接アクセスして運搬するので、eコマースに重要なスピードを落とすことなく出荷対応が可能になります」と語る。また日本の倉庫の防火シャッター区画にも対応できる点や、スモールスタートから始められる拡張性の高さなどもメリットとして挙げられた。
国内の導入事例として、ヨドバシカメラがある。ヨドバシカメラでは丁寧な梱包や24時間ピックアップサービスといった顧客体験重視の自動化を実現するため、Skypodシステムを一部の配送倉庫で導入している。「ヨドバシカメラさまは顧客体験を非常に大切にしており、丁寧な梱包での配送を行うことももちろんですが、その梱包も開封しやすいようテープの端をあえて少し折り返すなど非常に丁寧なパッケージングで顧客体験価値を高めています。こういった対応は、はたから見れば追加コストでしかありませんが、顧客体験価値を高めるためには非常に重要です」と立脇氏は語り「物流をコストセンターではなくプロフィットセンターとして捉えることが重要です」と強調した。
物流効率化を実現するためには、人手不足への対応という観点だけでなく、顧客体験向上や事業成長を支える経営基盤として物流を捉えることが求められている。物流投資をROIだけでなくROICの視点で評価し、企業価値向上につなげていくことが、これからのCLOや経営層にとって重要なテーマになるだろう。

