記憶力の乏しさというAIの課題に向き合う
Gensparkの新たなAIワークスペース

7月21日、Gensparkは「Genspark AI ワークスペース 6.0」のローンチ記念イベントを開催した。近年急速に発展しているAIだが、その記憶力には課題が残されている。Gensparkはどのようにこの課題と向き合い、AIと人が協働する世界を実現していくのだろうか。本記事では、Gensparkの事業戦略や同社の強み、Genspark AI ワークスペース 6.0の特長についてリポートする。

急成長を遂げるGensparkの
日本市場における三つの事業戦略

Gensparkが目指す姿を語るGenspark 共同創業者 兼 COO ウェン・サン氏。

 会見の冒頭ではGenspark 共同創業者 兼 COO ウェン・サン氏が登壇し、同社の事業戦略が語られた。サン氏は同社の目指す姿についてこう語る。「当社は世界中の10億人以上のナレッジワーカーのために、AIエージェントの開発を行っています。AIの発展スピードは加速しています。この急速に変化する世界で何が起ころうとも、最新かつ最大のAI機能を皆さまに提供し、最も信頼できるテクノロジーパートナーであり続けることが当社の使命です」

 こうした使命の下、同社は12カ月で2億5,000万ドルのARR(年間経常利益)を達成する急激な成長を遂げている。サン氏はこの急成長の大部分を日本市場が占めていると指摘した上で、「当社は2026年1月に日本法人を正式にローンチしました。そして、この6カ月間で日本での体制構築に取り組んでまいりました。プロダクトやマーケティング、広報など、さまざまな部門をカバーする体制を作り上げ、現在も強化を続けています。今後3年間で当社は、日本市場に1億ドルの投資を予定しています。新たな人材の採用や雇用の創出、キャンペーンの実施、お客さまに向けたAIの導入支援といった活動を行っていきます」と語った。

日本市場に対する発表を話すGenspark CRO ジェイミソン・パウエル氏。

 続いては同社 CRO ジェイミソン・パウエル氏が登壇し、日本に対する三つの発表を行った。一つ目は、日本におけるデータレジテンシーへの対応だ。データ主権を日本に置くことで、日本に根差した事業展開を進めていく。

 二つ目は、チャネルパートナーシップの強化だ。販売代理店やSIerといったチャネルパートナーとの連携を強化することで、より強固な体制の構築を目指す。AnthropicやOpenAI、Microsoftといった企業との協業による技術も日本市場に提供していく方針だ。

 三つ目は、日本におけるプレゼンスの強化とサービスの拡充だ。AIビジョンを実現するために求められるコンサルティングや顧客対応ソリューション、顧客サービスを提供していく。

AIの課題を克服し
新たなユーザー体験を提供する新製品

 日本市場における数々の戦略を打ち出し、今後も高成長が見込まれるGensparkだが、同社が多くの顧客に選ばれる理由はどこにあるのだろうか。パウエル氏はその理由についてこう語る。「企業からの問い合わせや商談依頼は、毎日のように届き続けています。興味深い点は、私たちが需要を作り出しているのではなく、需要を持つお客さまが私たちを見つけていることです。この理由はシンプルなもので、私たちが成果を出しているからです。お客さまに素晴らしい成果をお届けすることで、需要に対する価値提供を行っています」

 同社は創業当初、トップダウンの法人営業は行わず、個人ユーザー向けの製品からビジネス展開が始まった。そして、さまざまな規模の企業のメールアドレスを持つユーザーが徐々に集まったことを契機に、法人向けプランを開始したのだ。こうした沿革からも分かるように、Gensparkが重視しているのは、ユーザー体験である。パウエル氏はなぜ同社が成果を出せるのかという疑問にこう答える。「数多くの理由がありますが、一番は使いやすさです。ユーザーが使い慣れたツールの中で利用できるため、手軽に採用していただけます。また、モデルのオーケストレーションの仕組みを理解する必要がなく、簡単に導入できます。シンプルな導入であっても、大規模で複雑な導入であっても、ユーザー体験は一律です」

 このように製品の使いやすさを追求することで、ユーザー体験の向上に取り組んできたGensparkは、新たなユーザー体験を提供するため、「Genspark AI ワークスペース 6.0」(以下、Genspark 6.0)を発表した。

Genspark AI ワークスペース 6.0の全体像。
Genspark 6.0の製品ビジョンを語るGenspark 共同創業者 兼 CEO エリック・ジン氏。

 同社 共同創業者 兼 CEO エリック・ジン氏は、Genspark 6.0の製品ビジョンについてこう語る。「Genspark 6.0の製品ビジョンはシンプルなもので、仕事が自ら進むこと、すなわち仕事を完結させることです。世界中の10億人を超えるナレッジワーカーの多くの仕事が、日々繰り返される単調で面倒な作業であり、それらはAIによって自動化できると考えています。そこで昨年、当社はスーパーエージェントを開発しました」

 AIによって仕事を自動化し、完結させることを阻む障壁となるのが、AIの記憶力の乏しさである。ジン氏が「今日のAIは賢いが、鶏並みの記憶力しかない」と表現するように、AIは記憶の持続性や継続的な文脈の保持に課題が残されているのだ。この課題を克服し、Genspark 6.0の製品群の中でも核となるのが、「SecondBrain」である。ジン氏はSecondBrainの特長についてこう語る。「SecondBrainは継続的に記憶を保持する『永続的な脳』といえます。その仕組みはシンプルで、AIがクエリを繰り返しながら情報収集を行うものです。SecondBrainは知識や仕事、AIエージェントに関する情報を蓄積し続けます。従来のように、何度も同じ質問を繰り返したり、毎回コンテンツをコピー&ペーストしたりする必要はありません」

 このように、SecondBrainは、さまざまなツールに散在するデータを集約し、記憶し続けられる。さらに、Genspark 6.0や連携されたツールで業務を行うたび、SecondBrainの記憶は上書き・更新されるのだ。

欠けていた最後の1ピースを補う
Genspark初のハードウェア製品

エージェント機能の向上について語るGenspark 日本市場GTM担当 佐藤伸介氏。

 シン氏はGenspark 6.0の持つ要素は大きく四つあると話す。一つ目は、ユーザーに対する深い理解だ。これは、先述したSecondBrainが担っている。

 二つ目は、エージェントのレベルアップだ。プロンプトから製品デザインやWebサイトを作成可能な「Genspark Design」や、ワンクリックでデータを丸ごと取り込める「Agent Base」によって、エージェント機能が大幅に向上している。Genspark 日本市場GTM担当 佐藤伸介氏は、こうしたエージェント機能の向上についてこう語る。「Genspark 6.0はスライドのみならず、ありとあらゆる成果物に直結するエージェントです。アプリやウェブサイト、動画、ポスターが一つの指示で一気に完成します。また、従来はメールやCRM、そして社内外にデータ点在していたデータを、誰でも簡単にまとめて可視化・分析できます。これによって、いつでも最良の意思決定が可能になります」

SecondBrain Noteを紹介するジン氏。

 三つ目は、あらゆる場所で利用できることだ。AIが搭載されたメールクライアント「GenMail」により、メールアプリ内でAIのサポートを受けながら処理を完了させられる。

 四つ目は、チームワークだ。AIも参加できるワークスペース「GenTeam」は、AIと人が協働するチーム環境を提供している。

 このようにさまざまな情報を取り込み、AIと人が協働する世界の実現に近付いたGenspark 6.0だが、ジン氏はまだ不足している要素があると指摘する。「SecondBrainは非常に重要な役割を担っており、インターネットやモバイル上にある情報を取り込むことが可能です。しかし、まだ欠けている要素が一つあります。それは、リアルタイムに発生する会話や会議の内容の記録です。そこで、当社は初めてのハードウェア製品『SecondBrain Note』を発表します」

 SecondBrain NoteはGenspark 6.0と自動連携するAIボイスレコーダーだ。約35時間という長時間の録音に対応しており、日常のあらゆる会話を録音可能だ。録音データは自動的に文字起こし・要約され、Genspark 6.0のワークスペースで活用できる。

SecondBrain Noteの実機。ケースが付属しており、スタンドのように立てたりスマホに取り付けたりして使用できる。

 ジン氏は最後に、Genspark 6.0が実現する世界についてこう語った。「さまざまなAIツールがあって使いこなせない、情報量が多く覚えられない、このように感じている方が多いのではないでしょうか。Genspark 6.0には当社の開発した『永続的な脳』が入っており、多くの作業を自動的に行ってくれます。人は創造的な作業に集中することが可能となり、この創造性が世界を前進させるでしょう」

 情報を記憶し続けるSecondBrainと、リアルタイムの情報を収集し続けるSecondBrain Noteを併せ持つGenspark 6.0は、記憶力の乏しさというAIの弱点を補完する有効な一手となるだろう。Genspark 6.0が多くのユーザーに活用されることで、AIと人が協働する世界の実現がさらに近づくことが予想される。