高山市の中小企業や小規模事業者の
デジタル活用を支援する補助金
競争力の確保や生産性の向上に当たって、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することは必須になってきている。
しかし中にはDXに回せる十分な資金がなく、手作業や紙中心の運用を続けてしまう事業者も存在する。
また補助金を受け取ったとしても、どの業務をデジタル化すればよいか分からない企業もあるだろう。
そこで今回は、地域の事業者のDXを支援するための補助金交付といった取り組みを行う、岐阜県高山市を取材した。
岐阜県高山市

飛騨地方を東西に横断する人口8万1,073人(2026年8月1日時点)の都市。面積は2,177.61㎢で、全国の市区町村の中で最も広い市となっている。市内中心部を流れる「宮川」にかかる赤い橋「中橋」、飛騨地方の古い民家を移築復元した屋外博物館「飛騨民俗村・飛騨の里」、現存する唯一の郡代・代官所「高山陣屋」といった観光スポットを備える。
DX推進を補助金でサポート
生成AIが業務で活用されるようになった現在、企業が競争力を保つためには、業務のデジタル化が必要だ。また生産年齢人口の減少に伴い、人手不足が深刻化する中では、DXでいかに仕事を効率化するかも重要になってくる。しかし具体的な推進を行っていくには、ある程度の予算が必要だ。
そこで岐阜県高山市では、市内の事業者のDXを支援するために、独自の補助金「高山市デジタル技術活用促進支援事業補助金」を交付している。高山市 商工労働部 商工振興課 主査 坂口祐輔氏は、本補助金を開始した背景を次のように語る。「本補助金は2023年4月から開始しています。始めた背景には、商工会議所や商工会、市内の金融機関などから景況感をヒアリングする中で、中小企業向けにデジタル技術を活用した際の補助金があるとよいという意見を受け取ったことがあります。市内の中小企業では、事務の手作業や紙中心の運用によりDXが進まず、生産性向上やコストの削減が行えていない状況がありました。併せて人手不足が深刻化する中で、少ない人数でも業務を回せるようにするため、業務の効率化や自動化が求められていました。そうした現状を踏まえて、当市は本補助金を開始しました」
幅広い業種が補助金を活用
高山市デジタル技術活用促進支援事業補助金は、高山市内に店舗、工場または事業所を持つ中小企業や小規模事業者が対象になっている。個人事業者の場合でも、市内に住民登録があれば本補助金の対象となる。一事業者当たり同一年度(4月〜翌年3月)における補助上限額は30万円で、補助率は補助対象経費の2分の1以内だ。
補助対象となるのは、ソフトウェアの新規開発・導入・使用費用、コンサルタント費用、DX人材育成・教育費用、機器購入費用だ。ちなみに機器購入の補助上限は5万円となる。またPCやプリンターといった、汎用性が高く用途が特定できない機器は、システム導入やクラウドサービスの使用料などの経費が10万円以上ある場合に限り対象になる。
坂口氏は、補助対象の経費について変遷をこう話す。「開始した当初は、機器購入のみは対象外にしていました。しかし事業者さまからの相談を受け、条件を設けた上で機器購入も認めることにしました。このように本補助金は常に見直しを行い、事業者さまにとって一番良い状態になるようにしています」
本補助金は年度を通じて申請可能だ。申請するにはまず、事業者はどのような事業を実施するか計画書を作成する。その際併せて、事業の対象経費の一覧表も作成する。その後は作成した計画表を、商工会議所または商工会に確認してもらう。この確認が完了した後に、市役所へ申請に行く流れになるのだ。そして計画した事業が終了した後は、補助金の交付申請書を提出し、問題がなければ補助金が交付される。坂口氏はこの申請方法について「計画書に記載された内容に裏付けがあるかを確認するために、商工会議所や商工会での確認を挟んでいます。第三者の目で問題ないと確認され、お墨付きをもらったものが市役所に提出される形です」と補足する。
本補助金は製造業や飲食、小売、サービス業など、幅広い業種が活用しているという。実際に補助対象となる事業の例について、坂口氏はこう説明する。「会計システム・人事システム・出退勤システムなどの導入、生成AI導入による業務時間の削減、QRコードを活用した在庫管理の効率化といった例があります。また、セルフオーダーシステムやキャッシュレス端末、POSレジなどの機器購入による業務効率化も対象です。変わった導入事例としては、工事現場におけるドローンを利用した測量、3D・4Dを使用した設計図面の作成という、先端技術を活用したものもあります」

活用・定着まで継続して後押し
補助金があっても、「どの事業でデジタル活用を行えばよいか分からない」という悩み事を抱える事業者もいるだろう。高山市ではそうした事業者のために、市のホームページで本補助金を申請した事業者の事業概要一覧を掲載している。全て実際に行われたものであるため、具体的なデジタル活用のイメージが湧くようになっているのだ。
ほかにも商工会議所や商工会と連携し、相談員からどんなシステムやサービスを導入したらよいかのアドバイスを受けられるようにもしている。それでもデジタル化に不安がある事業者に向けては、中小企業基盤整備機構が中小企業向けのITツールや業種ごとのデジタル導入事例を紹介するホームページ「ここからアプリ」の閲覧をすすめている。
坂口氏は、本補助金への思いをこう話す。「本補助金の対象外にしている事業の一つが、ホームページの作成です。その理由として、過去にホームページの作成支援をしたところ、作ったまま更新が行われない“死んだホームページ”を量産してしまったことがあります。本補助金は事業者さまに対して、DXで事業がさらに先へ進む制度にしたいと考えています。そのため事業者さまにおいても、一過性のDXではなく、この補助金を機に企業を生まれ変わらせるという意気込みで活用してもらいたいですね」
最後に坂口氏は、本補助金の展望を次のように語った。「事業者さまの生産性向上と競争力強化を、デジタル技術の導入だけではなく、その後の活用・定着まで含めて後押しすることが重要だと思っています。補助金で機器やソフトウェアを導入するだけにとどまらず、地域でDXが回り続け、省力化、効率化、売り上げアップといった成果につながる流れを作っていきたいです」

