皆、気づかずにデータセンターを利用している

データセンターという言葉が使われ出したのはインターネットが普及してからだ。企業のホームページを公開するためのWebサーバーや電子メールを送受信するためのメールサーバーなど、それまではなかった新しいサーバーが必要になった。さらに、インターネットを利用したオンライン販売のビジネスやキャンペーンなどを展開するために、さまざまなデータ処理と安定した通信を行うためのサーバー利用の必要性が出てきた。従来企業が自社内で管理していたサーバーでは不十分になり、外部で多数のサーバーを収納し、安定した運用の可能な施設であるデータセンターが必要になった。そして、秘匿性の高い情報を扱わないサーバーは社内からデータセンターに移っていった。

当初はインターネットデータセンターと呼ばれていたが、利用者が増大していく中で、単にデータセンターと呼ばれるようになった。大量のサーバーを収容して安定稼働させるために必要な電力と通信環境を、サーバーを重ねて収納できるラックスペースとして提供するデータセンター事業者が登場した。海外ではEquinixやDigital Realty、日本では通信キャリア系やIIJ、@TOKYOなどが早くに参入した。一方で大企業は自社やグループ企業でデータセンターを丸ごと所有していた。そしてクラウド時代に突入すると、AmazonやGoogle、Microsoftなどのクラウドベンダーが巨大な自社データセンターの建設を世界中で開始した。

今や、仕事でMicrosoft 365を使う時はもちろん、サブスクの動画配信を見るのもインターネットバンキングも、コンピュータの処理はすべてデータセンター内のサーバー上で行われている。私たちの日々の生活はデータセンター抜きには成り立たなくなっているわけだ。

企業内サーバールームからデータセンターへのサーバーの移行

データセンターってどんな大きさ?

ところが、多くのビジネスパーソンはデータセンターに行ったことはないし、どんな施設なのかも知らない。水道の蛇口は毎日見ているが、浄水場がどこにあるのか、どんな所なのかはよくわからないのと一緒だ。インフラというのは意識することなく使っているものだからそれでも構わなさそうなものだが、これだけニュースなどでデータセンターが連呼されると気になってくるだろう。

まず、データセンターの建物だが、超巨大なものから都心のビルの1フロアというものまでさまざまだ。小規模な都心型は通信スピードのための立地に最大の注力をしており、証券や通貨などのコンマ1秒を争う取引に使われるシステムが置かれている。一方で、ハイパースケールデータセンターと呼ばれる地方や郊外の大規模な建物がクラウドの普及以降増加しており、通常データセンターというとこちらがイメージされる。

ハイパースケールデータセンターの平均的な大きさは1棟の延床面積が20,000〜50,000㎡で、大型ショッピングモール1個分くらいになる。収納可能なサーバーラックは3,000〜10,000といったところだ。一つの敷地に一棟だけでなく複数のデータセンターが集まったデータセンターキャンパスと呼ばれるものもある。こちらは100,000〜300,000㎡と、東京ドーム 2〜6個分の延床面積になり、20,000〜80,000ラックの収容が可能だ。面積の幅が広いのは、このくらいの大きさになると用地確保が大変で、土地に合わせて建物を建てるからだ。

日本国内で最大級となると、2026年4月に建設計画が発表されたNTTデータグループの東京TKY12データセンターなどが挙げられる。立地としては各社のデータセンターが密集し「データセンター銀座」と呼ばれる千葉県の白井・印西エリアで、面積は発表になっていないが、データセンターに使用する電力容量が約200MWというから、工場団地クラスの電力消費量で、この規模のデータセンターの面積は東京ドーム2〜6個分(延床10万〜30万㎡級)になると予想される。

データセンターの規模感:複数棟からなるデータセンターキャンパスの延床面積は東京ドーム2〜6個にもなる

データセンターの中身はどうなっているのだろう?

この巨大な建築物の中には何が入っているのだろう? 当然、顧客から預かったり、自社サービスで使用する膨大なサーバー群が入っている。そして、これらのサーバー群を稼働させるための電力設備と、計算処理するデータを受信し、処理後のデータを送信するための通信設備が大きな面積を占める。

電力設備では、巨大な容量の引き込み線で供給される電気をサーバーで利用可能にするための変電機や電源の瞬断に対応するために大量の電力を貯めておくUPS(無停電電源)、災害時などで給電が途切れた時にもサーバーを継続的に動かすための非常用発電機が必要だ。発電機用の燃料はガソリンスタンドのように地下に貯蔵庫を作っている。災害時などにも送受信が途切れないように通信回線は複数のキャリアから引き込む。ラックを収容するサーバー室には、高温の発熱が発生するサーバーを冷やすために大型の空調機と、その冷気をラックまで効率的に届けるための床下送風などの冷却設備を置く。空調機には室外機が必要で、屋上に多数並べるデータセンターも多い。増加していく発熱に対し、水冷システムを導入するデータセンターも増えている。万一に備え、強力な消火設備もある。また、高度なセキュリティも必要なので、入退館の厳格なチェックを行うためのシステムを構築し、必要なセキュリティデバイスも用意する。特に重要なデータを預かるときのためにサーバールーム内にセキュリティ区画を設けるケースもある。

データセンターの設備機器例1:非常用発電機
災害時の電力供給喪失時などにも、大量のサーバーを動かし続けるために、データセンターは2000kVAクラスなどの非常用発電機を装備する(ヤンマーホールディングス GY175シリーズ
データセンターの設備機器例2: UPS(無停電電源装置)
UPSは落雷などによる電源の瞬断時にバッテリーから電力供給して、機器のダメージなどを避ける(シュナイダーSymmetra PX 250/500 kWリチウムイオンバッテリー
データセンターの設備機器例3: 空調ユニット
空調機は、サーバーに次いで電力使用量が大きく、データセンターでは省エネ型が求められる( 日立パッケージエアコン電算機専用型(情報通信向け)高効率タイプ(1220型)

データセンターの外観的な特徴としては、エントランスが狭い、窓が少ない、搬入口のシャッターは大きいなどが挙げられる。このくらいの大きさのビルだと、通常エントランスは広いホールになっており、大人数の訪問時にも不自由がないようになっているが、データセンターの場合、職員の数は限られるし、ユーザー企業が訪れるのも稀だ。出入りする人数が少なく入退館のセキュリティチェックも厳しいため、広いスペースは必要ない。陽光を取り入れる必要も換気の必要もないため、窓の少なさは工場以上だ。

下図はNTTデータの京阪奈OSK11データセンターの外観だ。窓が少なく閉鎖的なイメージがある。こうした要塞のような建物の中で、常に膨大なサーバーが動き続けているのがデータセンターだ。一方、最近ではこうした外観が近隣住民の不安を煽りデータセンター建設反対運動が起きるケースも出てきている。

データセンターの外観例(NTTデータ京阪奈OSK11データセンター

データセンターをどのように動かしているのか?

データセンター誕生当初は、データセンター事業者と顧客の責任分担はかなり明確だった。事業者が提供するサービスは、顧客のラックまでの電力と通信回線、そして冷却機能の提供だった。運用中、サーバーやラックに対し作業を行うのは顧客サイドに決まっていたため、トラブル対応などの「駆けつけ便利」な立地がデータセンター選定の要件になっていた。しかし、回線速度の向上と遠隔操作技術の進展により多くの作業はリモートで行えるようになったため、顧客の入館頻度は大幅に低下した。データセンター側で作業を受け持つ各種マネージドサービスもメニューに加えられている。サーバーの交換も電球の付け替えのように行えるようになって、事業者側に委託されることも多い。ラック単位での電力使用状況や通信状況は、データセンター内の事業者のモニタールームで監視されており、異常が検知されれば顧客の元へ連絡がいく仕組みになっている。

21世紀初頭には、こうしたデータセンターサービスの形はほぼ確立され、細かい技術進歩による効率化はあるものの、大きな変革は少ない産業になっていくかと思われた。しかし、AIの勃興、さらに生成AIの爆発的な普及によって、データセンターは新しいニーズに応える必要が出てきた。このため、世界的にAI向けデータセンターの新たな建設ブームが起こっているが、これについては次回解説する。