AIで進化するバックアップ運用
SaaS時代のデータ保護を支えるHYCU

「俳句が短い詩の中で心象を伝えるように、容易な構築や操作の中で優れたデータ保護を提供する」ことから社名が名付けられたHYCU(ハイク)。もともとはComtrade Softwareという会社で、他社バックアップベンダーにOEM製品の提供を行っており、28年以上の製品開発の歴史を持つ。2018年にそのバックアップ部署が分社化し、現在のHYCUとなった。“ランサムウェアに強いバックアップ基盤”をうたう同社のバックアップソリューションを見ていこう。

クラウド時代のBCPには
ランサムウェア対策が必要

 BCP対策としてクラウド活用が広がっている。災害などで社内サーバーが利用できなくなっても、クラウド上にデータを保存しておけばデータ損失のリスクを抑えられ、事業継続もしやすくなる。しかし近年はランサムウェア被害が増加しており、「クラウドにバックアップしているだけ」では十分とはいえないケースもある。HYCU Japan システムズエンジニア 吉田幸春氏は「災害対策におけるデータ保護という観点で見ると、以前は別拠点へデータをバックアップする手法が主流でしたが、現在はその比率は減少傾向にあります。現在はクラウドに対する不安感が薄れ、クラウド上にデータを保存する企業が増えています」と語る。一方、クラウドへのバックアップは物理的な災害に対しては効果を発揮するが、ランサムウェアをはじめとしたサイバー攻撃に対しては、十分な効果を発揮できないケースもある。例えばクラウドに保存していたバックアップデータが改ざんされてしまうようなリスクがあるのだ。

 HYCU Japanでは、オンプレミス環境を保護できる「HYCU R-Cloud Hybrid Cloud Edition」と、クラウド環境を保護できる「HYCU R-Cloud」を展開している。これらいずれの製品も、ランサムウェア対策が講じられているという。吉田氏は「バックアップシステム自体がランサムウェアに感染しにくい構造になっています。具体的には、余計なアカウントの排除、不要なポートの閉鎖、バージョンの固定化などにより脆弱性を最小化しているのです。また、イミュータブルストレージ(一定期間データの変更・削除が不可能なストレージ)へのデータ保存を採用しており、万が一バックアップサーバーが被害を受けてもバックアップデータは保護される仕組みです。2026年3月には、ランサムウェア対策プラットフォームを提供するHalcyonとの双方向OEM提供に関する提携を発表した。Halcyonの技術とHYCUの技術を統合することで、より強固なランサムウェア対策の提供を目指している。吉田氏は「Halcyonのテクノロジーには、ランサムウェアを検出するだけでなく、感染時の復号を支援する機能があります。通常、ランサムウェア感染時には正常なバックアップからデータを復旧する必要がありますが、このHalcyonのテクノロジーを活用すれば、直接データを復旧させることも可能になるでしょう。将来的には当社のソリューションにHalcyonの技術を組み込むことで、復号までをカバーできるようにしていくことが、今回の協業の目的です」と語る。

オンプレからクラウドまで
幅広い環境を保護する

HYCU Japan
システムズエンジニア
吉田幸春

 吉田氏は、クラウド環境を保護できるHYCU R-Cloudの特長としてデータ保護の共通基盤の存在を挙げる。「もともとオンプレミス製品のバックアップソリューションを提供している競合他社の多くは、利用者の多い一部のクラウドサービスしかバックアップの対象としていない場合があります。HYCU R-Cloudでは共通基盤アーキテクチャを用意しており、保護対象のクラウド(SaaS)が増えても接続用モジュールを追加するだけで対応できます。モジュール開発にはAIを活用しており、短時間かつ低コストでの開発を可能にしています」と語る。

 現在対応しているクラウドサービスには、Microsoft 365やGoogle Workspaceのほか、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、各種SaaS、DBaaSなどが含まれる。またOkta、Entra ID、AWS IDなどの認証情報もバックアップ対象に含まれるという。バックアップデータはイミュータブルストレージに保存され、SaaSが被害を受けた場合でも復旧が可能だ。

 取得したバックアップデータのリストアも容易に行える。オンプレミス製品をバックアップできるHYCU R-Cloud Hybrid Cloud EditionとクラウドサービスをバックアップできるHYCU R-Cloudでは同一のUIを採用しており、迷うことなく操作が可能だ。HYCU R-Cloud Hybrid Cloud EditionのUIは日本語化もされており、ログやアラート、オンラインヘルプなども全て日本語で確認できるという。バックアップ設定は、保護対象、保存先、取得頻度、保持期間を設定するだけのシンプルな構成であり、専門的な知識を持たないユーザーも操作しやすい設計だ。

HYCU R-Cloud Hybrid Cloud Edition(左)とHYCU R-Cloud(右)のUI。オンプレミス環境を保護するHYCU R-Cloud Hybrid Cloud Editionは日本語化もされている。いずれのUIもグラフィカルで分かりやすく、操作に迷わない。

バックアップをAIで分析し
自然言語でリスクを把握

 HYCUでは、バックアップデータをAIで分析・検索できる「HYCU aiR」のベータ版も提供しており、本機能により自然言語によるリスク把握が可能になる。例えば「SalesforceとMicrosoft 365のバックアップ内に個人情報が含まれるファイルを探して」「過去90日で 権限変更があったユーザーを教えて」といったバックアップデータを横断した検索が、自然言語で行えるようになる。本機能は管理者をサポートするだけでなく、バックアップデータ内に含まれる個人情報の検索や、権限変更履歴の照合が行いやすくなるメリットがある。AIを使ってバックアップ内の過去のアカウント権限変更を簡単に問い合わせることで、認証情報の監視も実現できるのだ。

 実際に、HYCUのバックアップソリューションを活用し、データの復旧を実現したケースはあるのだろうか。吉田氏は「当社の製品を導入してからデータを喪失した事例はほぼなく、逆に『クラウドサービスを使っていたけれどそのデータを保護していなかった』という企業からの引き合いは多くあります。例えば実際の相談事例としてはSharePoint上のデータが利用できなくなったことをきっかけにバックアップ導入を検討した企業さまなどからの問い合わせがありました」と語る。

 企業が使用している多様なSaaSを自動検出し一覧表示できる「R-Graph」という機能も搭載している。これは管理対象のアカウントを入力すると、そのアカウントでどのようなSaaSを使っているかを検出し、画面に表示してくれる機能だ。本機能により、企業はバックアップが必要なSaaSを発見し、保護することが可能になる。吉田氏は「一つの企業の中で使っているSaaSの数は膨大になってきています。規模の大きいお客さまであればなおさらで、ドイツの顧客では数百から数千のSaaSが検出されていた例もあります。将来的には保護対象となるSaaSをさらに拡大していく方針であり、パートナー企業さまにSDKと開発環境を提供することで協業しながらモジュール開発を進めていきます」と将来展望を語った。

マルウェア検出機能を搭載。ランサムウェアなどの侵入によるバックアップデータ喪失を強力に防止する。