2005年以降、日本では死亡者数が出生数を上回り、生産年齢人口の減少が続いている。こうした状況では、団塊世代に比べて非正規雇用が多く貯蓄が少ない団塊ジュニア世代の高齢・貧困化や社会保障の負担増大などの課題が想定される。その中でも、医療や介護への負担は大きく、一人では生活が困難な高齢者を受け入れる介護事業にもDXが求められる。今回は、介護DXに向けて、介護ソリューションと併せて参考となる書籍を提案しよう。

2040年問題を乗り越える
介護事業経営

島田雄宇 著
990円(税込)/幻冬舎メディアコンサルティング

 現役世代の急減により、介護・福祉事業への負担増大などが懸念される「2040年問題」。本書では、この問題への対策として、経営者が介護経営に専念するため、経営者に次ぐNo.2を置く事業戦略を紹介。興味深いのは、第3章で訪問介護、通所介護向けのICT機器・ソフトウェア一覧を提示して情報の伝達・共有手段の仕組みづくりを推奨している点だ。統括本部の本部長など、各部署間をつなぐ役割のNo.2には、リアルタイムの状況の判断を行う「動的情報」を一任し、プッシュ通知などで動的情報に気が付きやすい仕組みを提案している。一方で正確なデータの蓄積が必要な「静的情報」には、クラウドデータ管理システムの活用が推奨される。今後の介護経営に必読の一冊。

これならわかる
〈スッキリ図解〉LIFE 科学的介護情報システム

小濱道博小林香織森 剛士 著
2,420円(税込)/翔泳社

 厚生労働省が推奨する科学的介護情報システム「LIFE」は、科学的裏付けに基づいて適切に介護サービスを図る取り組みだ。本書は、LIFEの活用方法や各種補助の要件を図解した指南書。「これならわかる」というタイトルの通り、LIFEのUI画像に端的な操作説明を差し込んでいる。令和3年度に厚生労働省が「介護報酬」を改定した際に新設された加算制度「科学的介護推進体制加算」など提出書類にも重要項目にアドバイスを記載。また、要介護者の身体機能評価と運動支援のため、臥位・座位・立位・片脚のコントロールフェーズで介助レベルを示す図説も読みやすい。各フェーズのページにはQRコードを添付しており、スマホで読み込めば動画での確認も可能だ。LIFEの導入を検討する介護事業者にお薦めだ。

医療・介護の制度・業界動向
まる分かりガイド

日経ヘルスケア 編
3,300円(税込)/日経BP

 医療・介護分野の制度・業界動向を図表で丁寧に解説している一冊。本書の最新トレンドでは、医療・介護事業者の情報共有を促す厚生労働省の取り組み「全国医療情報プラットフォーム」について参照できる。本取り組みは同省が4月から本格稼働している「ケアプランデータ連携システム」にも連動する見通しだ。本システムは従来のファクス・郵送を電子化するもので、業務効率化が期待される。また、介護ロボットの導入も生産性向上に有力な手段として挙げる。しかし業務の見直しが不十分で介護ロボットを有効活用できない介護事業所の例も多く、業務効率化の指南が鍵となりそうだ。介護主要サービスや高齢者住宅の変遷などの概況も幅広く紹介した。