1965年、ゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」。「一つのチップ上の素子数は2年で倍増する」と予測された本法則に基づき、進化を続けているのがインテル製CPUだ。その進化の歩幅が、インテル第11世代とそれ以降ではさらに大きくなっており、今年の後半に正式発表される第14世代ではその差がさらに開く見込みだ。最新のCPUが搭載されたPCを選ぶことがビジネスに与えるインパクトは、今後ますます拡大していくだろう。本特集では、インテルCPUのこれまでとこれからの進化を展望すると同時に、最新CPUと最新OSの組み合わせが実現する業務とシステム開発の効率化について解説していく。

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第13世代CPUはより高性能な処理と省電力化を両立できる!
ビジネスでの生産性を向上させる最も簡単で有効な方策

ビジネスでの生産性を向上させる最も簡単で有効な方策は
最新のCPUと最新のWindowsを搭載したPCの導入

PCの進化はその頭脳の中枢を担うCPUの進化に比例することはご存じの通りだ。そのため新型のCPUを搭載したPCの性能が、それ以前のCPUを搭載したPCを上回ることは誰もが理解していることだろう。しかしここ数年のCPUの進化の度合いは大きくなってきている。特にインテルのCPUでは第12世代と呼ばれるモデルは第11世代に対して進化の度合いが非常に大きい。現在の最新のインテル製CPUは第13世代である。ここでは第12世代および第13世代のインテル製CPUを搭載するPCを選ぶメリットを解説する。

第11世代とそれ以降で大きく異なる
インテルCPUのアーキテクチャ

 本稿を執筆時点で、インテルのCPUの最新モデルは開発コードネーム「Raptor Lake」と呼ばれる第13世代インテル Core プロセッサーだ。この第13世代インテル Core プロセッサーは前世代となる第12世代インテル Core プロセッサー(開発コードネーム:Alder Lake)の改良版と位置付けられており、これら第12世代と第13世代は、それ以前のインテル Coreプロセッサー・ファミリーから大きな飛躍を遂げているのだ。

 第12世代インテル Core プロセッサーでは、その前世代である第11世代インテル Core プロセッサー(開発コードネーム:Tiger Lake)とは全く異なるアーキテクチャが採用されており、PCでOSやアプリケーションなどソフトウェアを利用する際の演算処理の効率や、電力消費の効率が非常に高くなっていることが最大の特長だ。

 第12世代以前のインテル Coreプロセッサー・ファミリーでは、性能を最大限に発揮するように設計された演算を処理する計算器、すなわちコアを複数個搭載してPCの性能向上に貢献してきた。これがいわゆるマルチコアで、「4コア」や「8コア」と表現されるものだ。

 ちなみにコアの数を増やせば同時並行で行える作業の数が増え、一つのコアが処理できる作業の数、いわゆるスレッド数も増える。結果的にPCの処理能力が高くなる。一方でコア自体の演算処理性能の向上やコアの数の増加は電力消費の増加につながってしまう。

 これに対して第12世代インテル Core プロセッサーではトランジスタを役割の異なる2種類のコア、「Performance-core(P-core)」と「Efficient-core(E-core)」が搭載されている。簡単に言うとP-coreは高性能な処理を受け持ち、E-coreは高効率な処理を受け持つ。

 P-coreはそれ以前のインテル Coreプロセッサー・ファミリーのコアを進化させたもので、シングルスレッドのタスクを処理するように最適化されている。P-core はインテル ハイパースレッディング・テクノロジーにより疑似的に二つのコアを使用することで高性能化している。

Windows 11のタスクマネージャーのCPUの稼働状態を示す画面。画面に表示されている第13世代インテル Core i7-1360P プロセッサーの場合、物理コアはP-coreが4個、E-coreが8個で合計12個だが、P-coreはインテル ハイパースレッディング・テクノロジーによって疑似的に二つのコアが使用でき、論理コアはP-coreが8個となるため論理コアの合計は16個となっている。

02
作業の優先順位に応じてP-coreあるいはE-coreに
振り分けるインテル スレッド・ディレクターが賢い!

 一方のE-coreはマルチスレッドのワークロードに最適化しており、バックグラウンドでタスクを処理する。またE-coreはP-coreよりもトランジスタの数が少なく、面積の小さな一つのコアを使用することで省電力化している。

 別掲のWindows 11のタスクマネージャーのCPUの稼働状態を示す画面を見てほしい。画面では16個の論理コアの稼働状態が表示されていることが分かる。筆者が使っているPCに搭載される第13世代インテル Core i7-1360P プロセッサーの場合、物理コアはP-coreが4個、E-coreが8個で合計12個だが、P-coreはインテル ハイパースレッディング・テクノロジーによって疑似的に二つのコアが使用でき、論理コアはP-coreが8個となるため論理コアの合計は16個となっている。

Windows 11で最大限に発揮される
第12世代以降のインテルCPUの真価

 第12世代インテル Core プロセッサーより採用されているP-coreとE-coreによるアーキテクチャがもたらすメリットは何か。例えばPCで画像をふんだんに用いたプレゼンテーションの資料を作成している最中に、サイズの大きなデータをダウンロードする状況下で、今優先的に処理すべき作業、この場合はプレゼンテーションの資料作成をP-coreが高速に処理し、優先順位の低い作業、この場合はデータのダウンロードを消費電力が低いE-coreで処理するというように役割を分担する。

 前述の通り処理性能を高めるには電力の消費が必要となる。そのためCPUのリソース(電力)を優先順位の高い作業に割り当て、高速に処理しつつ、優先順位の低い作業は消費電力を抑える仕組みとなっている。

 さらにユーザーがPCで起動している複数のアプリケーションの中で優先順位の高い作業と低い作業を判断し、どの処理をP-coreあるいはE-coreに振り分けるのかを動的かつ効率良く判断する仕組みも第12世代インテル Core プロセッサーより搭載されている。それが「インテル スレッド・ディレクター」と呼ばれるテクノロジーだ。

 このインテル スレッド・ディレクターはWindowsと連携して動作するため、Windows搭載PCでその真価を発揮する。第12世代および第13世代のインテル Core プロセッサーにはモニタリング機能が内蔵されており、CPUの各コアの利用率などを常にモニタリングしてWindowsのスケジューラーにその情報を送る。Windowsのスケジューラーはインテル スレッド・ディレクターから受け取った情報に基づいて、Windows上で行われている作業(スレッド)をP-coreあるいはE-coreに割り振るという仕組みだ。

 このインテル スレッド・ディレクターとWindowsのスケジューラーの連携はWindows 11で処理の効率がさらに向上しており、第12世代および第13世代のインテル Core プロセッサーとWindows 11を搭載するPCでマルチタスク環境の生産性が向上する。

03
AIを利用する機能をスムーズに使うには、
インテル Iris Xe グラフィックス内蔵の
CPU搭載端末が最適!

第12世代の4分の1の電力で
同等の性能を実現する第13世代

 ここまでインテル Core プロセッサーの第11世代から第12世代への進化について解説してきた。そして最新の第13世代インテル Core プロセッサーだが、前述の通り第12世代の改良版として、さらなる高速化、効率化が図られている。

 具体的には高性能な処理を担うP-coreの動作周波数の向上、CPUに内蔵されるメモリー(L2キャッシュ)サイズの増加、高効率な処理を担うE-coreのコア数およびスレッド数の倍増、それに伴うL3キャッシュの容量増などが挙げられる。その結果、第12世代インテル Core プロセッサーに対してシングルスレッドで最大15%、マルチスレッドで最大41%の性能向上を実現しているという。

 また電力消費の効率化、すなわち省電力化も大きく進歩している。第12世代のインテル Core i9-12900K プロセッサーに対して、第13世代のインテル Core i9-13900K プロセッサーは約4分の1の電力で同等の性能を発揮するという。

 ちなみに第12世代のインテル Core i9-12900Kプロセッサーも、第11世代のインテル Core i9-11900Kプロセッサーに対して約4分の1の電力で同等の性能を発揮する。つまりP-coreおよびE-coreなどの新しいアーキテクチャが採用された第12世代以降のインテル Core プロセッサーは、いずれも性能および電力消費の効率とともに前世代から進化を続けているのだ。

インテル スレッド・ディレクターにより、Windows 11との組み合わせで高性能ハイブリッド・アーキテクチャの最適化が可能に。
※全て第12世代インテル Core プロセッサー・ファミリーとの比較

CPUの処理をGPUに分散
AIの処理の高速化にも寄与

 インテル Core プロセッサーに内蔵されるグラフィックス機能(GPU)の進化もPCの性能向上に寄与している。第12世代インテル Core プロセッサーには「インテル Iris Xe グラフィックス」と呼ばれるGPUが内蔵されており、第11世代に内蔵されるインテル Iris Xe グラフィックスに対してメモリーが高速化されているほか、ハードウェアエンコーダーが2基に増強されていることが主な進化のポイントだ。

 さらにインテル Iris Xe グラフィックスを内蔵するインテル Core プロセッサーには、CPUの処理の一部をGPUに割り当てる機能が搭載されている。GPUはAIや機械学習の処理を得意とするため、Web会議での音声のノイズ除去や画像や映像の編集・加工など、AIを利用する機能がより高速に処理でき、システム全体の性能向上につながる。

 またインテルは内蔵型GPUに加えて外付け型(ディスクリート)GPUとなる「インテル Arc グラフィックス」も提供している。インテル Arc グラフィックスはインテル Iris Xe グラフィックスおよびインテル Core プロセッサーと連携してリソースを共有し、処理を分散する。

 このようにインテルの昨今のアーキテクチャでは、アプリケーションの種類に応じてそれぞれの処理を適材適所で分散させることでシステム(PC)全体の性能や効率を向上させる仕組みも実装しており、この仕組みもインテル Core プロセッサーの世代が進むことに伴って高速化、効率化が進むとみられる。

 その次の進化はすでに準備が整っているようだ。インテル Core プロセッサーの第14世代となる開発コードネーム「Meteor Lake」の量産がすでに開始されており、今年8月にはMeteor Lakeの生産を担うマレーシアの工場が世界の報道関係者に公開された。Meteor Lakeの正式な発表は2023年後半が予定されており、間もなくその詳細が明らかになりそうだ。

 さらにその次には第15世代となる開発コードネーム「Arrow Lake」も控えている。世代が進むごとに確実にシステム(PC)全体の性能と効率の向上を実現しているインテル Core プロセッサーは、常に最新のモデルを搭載するPCを選択することが最良の決断となるだろう。

 特に今後は生成AIなどの新しいテクノロジーが突然注目され、一気に普及するといったPCの利用環境の急激な変化が当たり前になるだろう。

 その利用環境の変化に対してPCの性能や機能がビジネスの足かせとならぬよう、ビジネスで使うPCはリプレースのサイクルを短縮してモダン化することが賢明だ。

※SPECint_rate_base2017_IC2022.1 (1-copy & n-copy) を使用し、インテルの検証プラットフォームでインテル Core i9-13900K プロセッサーとインテル Core i9-12900Kプロセッサーを比較した測定値より推定。図の動作周波数には、CPU とファブリックの性能向上率が含まれる。
※SPECint_rate_base2017_IC2022.1(n-copy)を使用し、インテルの検証プラットフォームでインテル Core i9-13900K プロセッサーとインテル Core i9-12900K プロセッサーを比較した測定値より推定。