今月のテーマは……
デザイン制作に新たな風を吹き込む
Gemini アプリ の「 Canvas 」機能
現代社会は、まさに情報過多の時代です。私たちは日々、膨大な量の情報にさらされており、その全てを文字情報として処理することは非常に困難です。このような状況において、情報を効率的かつ効果的に伝えるためには、視覚的な要素が不可欠となります。そこで、今号は「 Gemini アプリ 」の「 Canvas 」機能を使って、データを魅力的なインフォグラフィックスとして表現する方法を紹介します。

庄司大助(Dandy) 氏
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。
AIとの対話で生まれるデザイン
情報過多の時代と呼ばれる現代において、効率的かつ効果的に情報を伝えるためには、視覚的な要素が不可欠です。それを実現するのが、「 Gemini アプリ」の「 Canvas 」機能です。視覚的な要素を形にするための表現方法としてインフォグラフィックスがあります。
インフォグラフィックスは、データ、統計、概念、またはプロセスを視覚的に表現するグラフィックスデザインの一種です。テキストと画像、グラフ、アイコンなどを組み合わせることで、複雑な情報を簡潔に、そして記憶に残りやすい形で提示することが可能になります。これにより、情報の理解度向上、記憶の定着、そして情報共有の促進といった多岐にわたるメリットが期待できるでしょう。プレゼンテーション、レポート、ソーシャルメディア投稿など、さまざまな場面でその効果を発揮します。このインフォグラフィックスを表現できるのが、Canvas 機能です。
では、具体的に Canvas 機能とはどのようなものなのでしょうか? 一言で言えば、プロンプト(指示文)を入力するだけで、AIがインフォグラフィックスのデザイン案を自動で生成してくれる機能です。以下のような特長があります。
1. アイデア出しの自動化:「何から手を付けていいか分からない」という最初の壁をAIが取り払ってくれます。テーマを投げるだけで、構成案からAIが考えてくれます。
2. デザインスキルの不要化:配色のセンスやレイアウトの知識がなくても、AIがデザインの原則に基づいた美しいテンプレートを生成します。
3. 圧倒的な時間短縮:情報収集からデザイン作成まで、数時間、あるいは数日かかっていた作業が、わずか数分で完了させられます。
もちろん、AIが生成したデザインが完璧とは限りません。しかし、Canvas 機能の真価は「編集・カスタマイズの柔軟性」にあります。生成されたデザイン案をベースに、「このグラフを円グラフに変えて」「全体のトーンを青基調にして」「このテキストをもっと短くして」といった追加の指示を対話形式で送ることで、自分の理想とするデザインに近づけられるのです。


プロンプト一つで簡単に作成
実際に、Canvas 機能を使ってインフォグラフィックスを作成するプロセスをシミュレーションしてみましょう。今回は、「リモートワークがもたらした働き方の変化」に関するテーマを題材として、以下のプロンプトを入力します。
【プロンプト】
リモートワークが日本のビジネスパーソンにもたらしたメリットとデメリットについて、インフォグラフィックスを作成してください。
■ターゲット:企業のマネージャー層
■目的:今後の働き方を考える上での参考情報を提供するため
■含めてほしい要素
・メリット:通勤時間の削減、ワークライフバランスの向上、生産性の向上
・デメリット:コミュニケーション不足、オンオフの切り替えの難しさ、孤独感
■デザインのトーン:信頼感のある青を基調にシンプルで分かりやすいアイコンを使用してください。
このように具体的な指示を与えることで、Gemini はあなたの意図をより正確にくみ取り、質の高いアウトプットを生成しやすくなります。しばらくすると、画像①のようなアウトプットのプレビューを確認できます。プレゼンテーションスライドに、そのまま転載しても問題ないような内容にまとまっていると思います。
紙面の都合上、多くは記載しませんが、Gemini のマルチモーダルな特長を生かし、Canvas 機能では、プログラムも作成してくれます。画像②は、HTML、CSS、JavaScriptでブロック崩しのゲームの作成を依頼した結果です。出来上がったプログラムコードをプレビューすることで、動作確認も可能です。
“誰もがデザイナー”の時代に
Gemini アプリに搭載された Canvas 機能は、これまで専門的なスキルが必要とされてきたデザイン領域に、AIという新たな風を吹き込みました。これは、誰もが手軽に、そして高品質なインフォグラフィックスを作成できる“誰もがデザイナー”の時代が到来したともいえるでしょう。
データが溢れる現代において、情報をいかに効果的に伝え、理解してもらえるかどうかは個人にとっても、組織にとっても喫緊の課題です。魅力的なインフォグラフィックスを表現できる Canvas 機能は、そうした課題を解決する強力なツールになることは間違いありません。ぜひ一度、この革新的な機能を体験し、あなたの情報伝達を新たな次元へと引き上げてみてください。視覚的な力で、あなたのメッセージはより響き、さらに記憶に残るものとなるはずです。
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