今月のAzure 業務改善ファイルでは、先月号の「Microsoft Build 2025」の記事でも一部紹介した「Azure AI Foundry」について詳しく解説します。自社のデータを活用して独自のCopilotやAIアシスタントを作りたいお客さま、AIの導入を検討しているものの、AIについての専門知識がなく、自社内の開発リソースも限られているお客さまは多いのではないでしょうか? そのほか、生成AIを業務の自動化や意思決定の支援に活用したいお客さまなどに向け、本稿を通じてAzure AI Foundryを提案していきましょう。


日本マイクロソフト
パートナー事業本部
コーポレートソリューション統括本部
パートナーソリューション本部
パートナーソリューションマネージャー
大北崇人

豊富な言語モデルに対応

「Azure AI Foundry」はマイクロソフトが提供する統合型のAI開発プラットフォームです。企業の開発をする人が、生成AIやカスタムAIアプリケーションを迅速かつ安全に構築、運用できるように設計されています。サービスとしてはクラウド型AIサービスの「Azure OpenAI Service」、情報探索・取得を行う「Azure AI Search」、AIエージェントの設計と運用が可能な「Azure AI Agent Service」、有害なコンテンツを検出する「Azure AI Content Safety」が含まれます。また、「GitHub」「Microsoft Visual Studio」「Microsoft Copilot Studio」「Microsoft Fabric」で構築されたAIアプリケーションやエージェントの設計やカスタマイズ、管理に必要なものが全てそろっており、あらゆるニーズに対応したAPIが用意されています。Azure AI Foundryの主な特長は四つあります。一つ目は、最新のAIモデルがすぐ使えることです。具体的には、Azure OpenAI Serviceの大規模言語モデル(LLM)や「Meta」「Hugging Face」などのLLMを簡単に選択・活用できます。二つ目は、ノーコード・ローコードに対応しているので、プログラミングの経験が浅くても、直感的なUIでAIソリューションを構築できる点です。三つ目は、セキュリティとガバナンスが充実しており、データ暗号化、アクセス制御、監視機能など、企業向けの安全対策が整っている点です。四つ目は、ワンクリックでデプロイを実現できる点です。作成したAIアプリをAzureのクラウド上にすぐに展開することが可能になり、スケーラブルな運用を実現します。

 さらに深掘りした特長をまとめます。まずは豊富なモデルカタログを準備していることがあります。前述したAzure OpenAIやMeta(Llama 2/3)のほか、「Mistral」「Cohere」「DeepSeek」「xAI」 (Grok)「Hugging Face」など、世界中の主要AI企業のモデルを網羅しています。そして、日本語対応モデルや軽量な小規模言語モデル(SLM)も含まれています。これにより、開発者や企業は目的に応じて最適なモデルを選び、常に最新技術を利用できます。

 また、AIエージェントの構築と連携により、ノーコード・ローコードで業務用AIエージェントを設計・展開でき、「Microsoft 365」「Slack」「Twilio」など業務アプリケーションとの連携も可能です。また、マルチエージェントオーケストレーションにも対応し、複雑な業務プロセスの自動化もできます。そして、インタラクティブなテスト環境を準備しており、リアルタイムで確認できる「プレイグラウンド」機能を搭載しています。本機能により、試行錯誤しながら最適なモデルやプロンプトを見つけることが可能です。

 併せて、責任あるAIとセキュリティを提供しており、データ暗号化、アクセス制御、監視機能など、エンタープライズ向けのセキュリティ対策が充実しています。コンテンツの安全性評価(Content Safety) によって不適切な出力を防止することもでき、安心して利用可能です。

 利用環境も、クラウドとローカル環境の双方に対応しています。Azureのクラウド上での運用はもちろん、AI推論ソリューションの「Foundry Local」によりエッジ環境やオフライン環境でもAIを活用できるのです。

ヘルプデスクや顧客対応にAIを活用

 最後に、Azure AI Foundryのビジネスでの具体的な利用シーンを見ていきましょう。例えば、社内業務の自動化と効率化を実現するために、社内ナレッジやマニュアルを活用したMicrosoft CopilotでのAI構築があります。これにより、社員の問い合わせ対応や業務手順の案内を自動化したり、定型業務(レポート作成、議事録要約、FAQ対応など)をAIが代行し、作業時間を大幅に削減したりすることも可能です。

 チャットボットや音声アシスタントを構築すれば、24時間365日対応のカスタマーサポートを実現します。顧客の問い合わせ内容をAIが理解・分類し、適切な部門へ自動ルーティングするなど利用用途は多岐にわたって想定できます。Azure AI Foundryのサービスも業務効率化に役立てられます(以下表参照)。例えば、Azure OpenAI Serviceでは、「ChatGPT」などの言語モデルを活用したテキスト生成・会話AIの構築が可能です。安全なコンテンツ生成をサポートするには、Azure AI Content Safetyの活用がお薦めです。お客さまが効率化したい業務の内容に合わせて、どのAIサービスが合っているのか、検討を進めていきましょう。

 今回は、Azure AI Foundryのまとめを紹介しました。本製品は、単なるAI開発ツールではなく、ビジネスの生産性・競争力を高めるための戦略的なプラットフォームとして活用できます。そして専門知識がなくてもAIをビジネスに取り入れられるのが非常に大きな魅力です。これを機会に提案してみてください。

Azure AI Foundryのサービスと機能

text:日本マイクロソフト 大北崇人 氏