厚生労働省が2024年5月17日に発表した「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、「顧客等からの著しい迷惑行為」は増加の傾向を示している。増加傾向にあるカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策を行うため、政府は2025年3月11日にカスハラ防止を全ての企業に義務付ける労働施策総合推進法などの改正案を閣議決定した。さらに東京都と三重県桑名市では、「カスハラ防止条例」が4月1日より施行されている。こうした背景の下、今回はカスハラ対策に関する書籍を取り上げる。
ハードクレームから従業員・組織を守る本

1,650円(税込)
あさ出版
本書ではクレームについて、サービスや商品の問題に対して正当な要求をする「一般クレーム」、クレームの発端とは関係がない無理な要求や説教を続ける「特殊クレーム」、クレーム内容とは別の意図から金銭の要求や業務妨害を行う「悪意クレーム」の三つに分類している。特殊クレームと悪意クレームは「ハードクレーム」に分類され、一般的なクレーム対応とは全く別の対処方法が必要だと著者は述べる。ハードクレームに対応する際、従業員は自分を守る・周りの従業員をフォローする・組織の対応方針やルールに沿って一貫性のある行動することが重要だ。また組織は、従業員が適切な対応ができるように、ハードクレームの定義と対応方針を決め、具体的な手順までマニュアル化し、相談窓口や法務専門部署を設置するといったバックアップ体制を整えることが求められる。ハードクレームへの対処方法を知ることで、現場の従業員と組織を守る第一歩につなげられる。
改訂版 介護職員を利用者・家族によるハラスメントから守る本

海野宏行 法律監修
3,080円(税込)
日本法令
介護現場ではハラスメントの行為者が利用者またはその家族であったり、ハラスメントが疾患や障害に起因したりするため、ハラスメント対策が困難であることが多い。そうした介護現場におけるハラスメント対策を本書では解説している。第5章ではハラスメントの事前対策を紹介。職員を守ることを第一に、対策の基本方針を決める必要があると著者は語る。また第6章ではハラスメントの事後対応・再発防止策を紹介。まずは被害職員の安全確保と心身のケアが最優先だ。そこからハラスメントの事実確認を行い、原因に応じた再発防止策を検討する。例えば、要介護者の心身の状況が悪いときにハラスメントが起きていた場合、要介護者に細やかな注意を向けるといった対応方法を職員と改めて確認する必要がある。本書にはハラスメント行為を解説したイラスト集が付いており、施設に掲示するポスターなどで活用できるだろう。
クレーム対応・カスハラ対策マニュアル作成のコツ

1,760円(税込)
セルバ出版
なぜカスハラ対策にマニュアルを作成しなければならないのか。著者は従業員の対応に一貫性を持たせるためだと述べている。都度異なる対応をしていると、顧客が「以前は対応してくれた」と主張し、法外な要求を求めてくることもあるだろう。こうした状況は従業員の肉体的・精神的な疲弊につながってしまう。第2章ではマニュアル作成の手順を紹介。「カスハラの定義」「法令における順守ポイント」「発生時の対応」「事前防止策」などを、整合性を考慮して作成することが重要だ。またマニュアルは業種や規模により内容が異なる。飲食店・小売店・コールセンター・行政窓口といったカスハラの発生が多いとされている業種向けのマニュアル作成ポイントを、第3〜6章にかけて解説している。本書は小規模事業者でも導入しやすい具体的な対策方法も提示しており、業種や規模を問わず活用できる一冊だ。