職場内での対話において、本音で話せている従業員はどの程度いるのだろうか。2024年3月にパーソル総合研究所が行った「職場での対話に関する定量調査」によれば、「職場内に本音で話せる相手が1人もいない」と回答した従業員は50.8%と、過半数を超えている。その背景には、従業員が「自分の立場では言えない」「組織に愛着がないと思われたくない」と考えていることがある。ギクシャクした職場環境が続けば、従業員のストレスが増加し、離職率の上昇にもつながる恐れがある。そこで今回は、風通しの良い職場環境を構築するための方法を紹介している書籍を取り上げる。
組織をダメにするのは誰か?
職場の問題解決入門

1,738円(税込)
クロスメディア・パブリッシング
本書ではチームの雰囲気の悪化や組織の機能不全を引き起こす、人や組織に染み付いた思い込みを「会社の害虫」というキャラクターに見立て、その特徴と解決策を解説している。例えばChapter4では、成果主義を妄信する「セイカシュギ虫」を紹介。セイカシュギ虫は、評価に対する不満や個人主義の蔓延を招き、結果としてチームワークの崩壊を引き起こしてしまう。その解決策として著者は、社員の成長を重視し、それを企業の成長につなげる「成長主義」を提唱している。本書を参考にすることで会社の害虫を退治でき、月曜日が楽しみになるような職場に一歩近づけるだろう。
だけどチームがワークしない

2,200円(税込)
日経BP
本書は組織が上手く機能しない要因について、社会心理学の観点から分析している。要因の一つとして挙げられるのが、集団のまとまりを追求するあまり非合理で未熟な意思決定をしてしまう「集団浅慮」だ。集団浅慮への対処法として、異論を唱える役割をあらかじめ設けることや、異なる意見を受け入れる雰囲気を組織内に醸成し、多様な意見を組織に持ち込むことが重要だと著者は述べる。組織を変えるためには、個人の性格や能力に焦点を当てるのではなく、状況そのものを変えるべきであるという視点で具体的な対処方法を紹介している一冊だ。
静かに分断する職場

1,430円(税込)
ディスカヴァー・トゥエンティワン
現代の職場では「静かな分断」が生じている。静かな分断とは、背景や前提、価値観や考え方が異なるかもしれないと思い、本質的な対話を避け、互いに距離を置いてしまう状態を指す。このような状況では、会社の方針に違和感を抱きながらも、ただ従うだけの従業員を生み出すことになり、従業員のエンゲージメントに深刻な影響を及ぼすと著者は述べている。第4章では、この静かな分断を解消する五つのステップを紹介している。第一に、物事を客観視する姿勢を持つこと。第二に、人間が陥りやすい心理的傾向を理解すること。第三に、結論を導き出すための議論ではなく、互いに影響を与え合い、共に変化していく対話を行うこと。第四に、当たり前を問い直すこと。そして第五に、対話を継続して価値観が重なる部分を見つけることである。また第5章では静かな分断を克服するための対話のテーマとして、仕事/働き方/職場/管理職/リーダーシップ/未来/会社の七つを取り上げている。テーマごとに対話の具体例が掲載されており、実際に職場で対話を始める際の手がかりとなるだろう。本書は、従業員同士が価値観の違いや立場を超えて、これからの会社の在り方について共に探求していくきっかけを与えてくれる。