新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、渡航制限などでサプライチェーンの混乱が起こった。この混乱は新型コロナウイルス感染症の収束後も続いており、こうした中でも安定した製造や販売を続けるために、サプライチェーン全体を統括して最適化を図る「サプライチェーンマネジメント」が注目を浴びている。在庫の最適化を実現する方法や、事業活動に影響を及ぼすリスクの対処法を解説している書籍を読み、サプライチェーンマネジメントを成功させるヒントをつかもう。

マーケティングの力

恩藏直人/坂下玄哲 編
2,970円(税込)/有斐閣

 本書では、サプライチェーンマネジメントを効果的に行う方法を解説している。サプライチェーンマネジメントを実施する狙いに、販売現場の需要変動が事業者の元に増幅して伝わる効果「ブルウィップ効果」の抑制がある。第5章では、ブルウィップ効果を発生させないサプライチェーンマネジメントの方法を紹介。販売現場から需要に関する不確かな情報が取引先に伝わるのは、非効率的な発注を誘発する原因となる。そうした状況を防ぐには、協力的な組織間の関係と情報共有の仕組みを構築すると良い。取引企業同士の協力関係を強め、実際の需要に基づいた適切な情報共有が行われるようマネジメントすることで、サプライチェーンに関わる企業の在庫を適正化できる。これにより、サプライチェーン全体の競争力を高められるのだ。在庫過多や不足などの無駄を防ぐサプライチェーンマネジメントのコツを学べる。

サプライチェーン契約の基本と書式

長谷川俊明 編著/前田智弥 著
3,300円(税込)/中央経済社

 サプライチェーンを強化するサプライチェーンマネジメントのコツを解説している一冊。原材料の調達先の工場で、強制労働をはじめとした人権侵害に関わる労働が行われていた場合、消費者の不買運動につながる可能性がある。こうしたサプライチェーンの問題を解決し、サプライチェーンの強化を行う方法を第2部の第2章で紹介。サプライチェーンの強化を図るには、企業の価値やリスクを調査する「デューデリジェンス」を実施することが望ましい。人権侵害の問題を解決するには、原材料の調達先で人権に関わる違法行為が行われていないか調査する「人権デューデリジェンス」を行うと良い。人権デューデリジェンスを実施し、人権侵害に関わる労働が行われていないと確認することで、不買運動につながる可能性を排除できる。事業活動に影響を及ぼすサプライチェーンの問題を解決するノウハウを参照可能だ。

ダイナミック・サプライチェーン・マネジメント

クニエ SCMチーム 著
2,640円(税込)/日経BP

 本書では、コロナ禍や自然災害など供給に影響を与える要因が多様化した「動的サプライチェーン」を全体最適化する「ダイナミックサプライチェーンマネジメント」(ダイナミックSCM)の方法を解説している。ダイナミックSCMでは、社会や市場環境の変化によるリスクからの回復力である「レジリエンス」が重要だ。第12章ではレジリエンスの高め方を紹介。レジリエンスの強化には、サプライチェーンのステークホルダーによる相互の情報連携「コラボレーションSCM」を行うと良い。コラボレーションSCMを実行すると、サプライチェーン内でリスクが発生しても、原材料の供給状況や在庫の保有状況をすぐに共有できる。素早い情報伝達により、リスク回避のための意思決定を高い精度で行えるので、レジリエンスを高められるのだ。サプライチェーンに関する多様なリスクを回避するマネジメント方法を学ぶのに有効だ。