少子高齢化に伴う労働人口の減少に伴い、製造業や物流業界を中心に自動化に向けたロボットの導入が増加している。また、AIのディープラーニングをベースに強化学習を組み合わせることで識別の能力を向上させていたり、生成AIを行動生成AIとして判断や駆動系に使う試みがなされていたりするなど、ロボットの技術も進化している。ロボットに注目が集まる中、今回はロボットの基本や事例を紹介する書籍を取り上げる。
ロボットビジネス

1,848円(税込)
クロスメディア・パブリッシング
本書は社会に普及しているロボットを、第1章から第4章にかけて紹介している。例えば第1章では飲食店での活用事例として、すかいらーくグループで導入されているネコ型配膳ロボット「BellaBot」や大阪王将で活用されている調理ロボットなどを紹介している。BellaBotに配膳作業を任せることで、従業員は接客といったより価値の生みやすいほかの業務に対応できるようになったというデータから、ロボットは労働力の補完にとどまらず、顧客体験の向上や業務効率化に役立てられると著者は述べる。また第8章ではロボットのビジネスモデルとして、米国のIntuitive Surgicalが開発した手術ロボット「ダヴィンチ」の事例を紹介。ダヴィンチ成功の要因として、著者はIntuitive Surgicalが重視している項目に「手術回数」があることに注目。頻繁な使用によるデータの蓄積と蓄積されたデータの活用が他社との差別化につながったと指摘している。近年のロボットビジネス事例を網羅的に解説している本書は、ロボットの基礎を学ぶのに最適だ。
AI×ロボット革命

1,760円(税込)
カナリアコミュニケーションズ
AZ日本AIロボットの共同創業者である著者は、AIを組み込んだロボットである「AIロボット」が少子高齢化や労働人口減少、地方過疎化といった日本の抱える問題を解決すると力強く主張する。第2章では、AZ日本AIロボットの「AIバリスタカフェロボット」や、米国のNuroの自動配送車といった、さまざまなAIロボットの活用事例を紹介。AIロボットは業界を問わずに活躍できると著者は述べる。また第3章ではAIロボットの普及が進んでいない要因として、高額なコストを挙げる。こうした課題を解決するのが、AIロボットのサブスク化だ。サブスクでAIロボットを提供することによって、導入にかかる初期費用を抑えつつ人手不足の問題に対処できる。AIロボットがどのように日本の社会課題を解決する手段となり得るかを紹介した一冊だ。
役に立たないロボット

1,045円(税込)
集英社インターナショナル
本書のタイトルにもなっている「役に立たないロボット」は、直接的な機能や効率性を追求していない存在と定義している。そうした役に立たないロボットがどのような価値をもたらすのか、という問いについて研究者や開発者といったさまざまな分野の関係者との取材内容を本書では紹介している。著者は役に立たないロボットがもたらす価値について、人の精神状態に変化をもたらすことであると述べる。例えば、豊橋技術科学大学 教授 岡田美智男氏が開発したごみ箱型ロボット「Sociable Trash Box」は、ごみを自分で拾うことができない。そうした姿を見た人間はごみ箱ロボットを手伝ってあげることで、満足感や達成感を味わえるのだ。こうした役に立たないロボットの事例から、ロボットと人間の関係を考え直せるだろう。