新たなセキュリティプラットフォーム
シスコのネットワーク戦略に迫る

7月8日、シスコがAI時代を見据えた「One Portfolio」戦略について記者説明会を実施した。本記者説明会では、エージェントプラットフォーム「Cisco Cloud Control」をメインにシスコのソリューションが紹介された。将来の脅威に対する長期的なレジリエンスの構築に向け、シスコシステムズが提供するネットワークソリューションとその戦略を解説する。

変革期にあるAIテクノロジー
システム管理が企業運営に寄与

シスコ シニアバイスプレジデント グローバル スペシャリスト デイヴ・ウェスト

 会見冒頭、シスコ シニアバイスプレジデント グローバル スペシャリスト デイヴ・ウェスト氏は、同社が顧客の成果につなげる道筋として掲げる「One Cisco」のアプローチや方向性について、次のように語った。「今世界は、ITテクノロジーにおいて大きな変革期を迎えています。例えば、小売業、医療業、製造業など、どの業界であってもAIが話題に上っています。AIの技術の発展によって人々の生活や仕事の仕方が変わるとともに、いかに生産性を高めるかといった議論が進められています。こうした期待と同時に、サイバー攻撃の脅威としての一面も観測され、洗練されたAIがサイバー攻撃に使われる場面が増えています。一方で、AIとサイバーセキュリティ、新しいツールやケイパビリティが集約することで景観が大きく変遷している現状も目の当たりにしています。私は世界のITテクノロジーの現状には、三つの課題があると考えています。一つは、環境の複雑性です。世界のネットワークやプラットフォームは乱立し、複雑化している状況となっています。二つ目は複雑な環境の中でどうコントロールを行っていくのかという、コントロールの問題です。三つ目は、セキュリティの問題が起こり得る兆候を察知する可視性です。インサイトとして、問題の発生経緯を理解することも必要になってきています。特にセキュリティの問題に関しては、可視性を高めることで次に取るべき行動が分かるようになるでしょう。そのほか、協力関係にあるさまざまなステークホルダーは企業が事業を運営する上での根幹となります。シスコは、お客さまがさまざまな要素とつながって利活用するデータを保護するため、インフラソリューションによって網羅的に支援します」

 One Ciscoの戦略としては、三つの層で領域を分類している。インフラ、セキュリティ、運用に分けられ、その上にAI対応データセンター、未来を見据えたワークプレイス、デジタルレジリエンスの三つの領域を定義している。シスコはインフラ戦略として、一つのプラットフォームで実現していく取り組みを構想しているのだ。

シスコのクラウドにシステムを統合
デジタルレジリエンスを強化する手段

シスコ シニアバイスプレジデント グローバル ネットワーキング セールス ブリンク・サンダース

 企業のネットワーク環境の中では、サイバー攻撃やシステム障害などさまざまなリスクが予想される。ネットワーク運用においては、そうした状態から平常な状態に回復し、システムの運用を継続できるデジタルレジリエンス(回復力)を備えることが重要だ。デイヴ氏は、One Ciscoの戦略の一つに当たるデジタルレジリエンスについても言及している。「企業運営を考える上では、サイバーセキュリティの問題にせよ運用上の課題にせよ、デジタルレジリエンスに対する施策がビジネスの礎となります。当社は、さまざまな技術がAIによって加速化されたことを前提に開発を進めています。当社が主催するITイベント『Cisco Live! U.S.』では多くの新たな技術が発表されましたが、今回改めて『Cisco Cloud Control』を説明します。Cisco Cloud Controlは、当社が提供する製品や機能、クラウドの中にあるケイパビリティの管理、運用を統合するプラットフォームです。セキュリティ機能やクラウドコントロール機能のほか、『Splunk』ソリューション、『Cisco Meraki』シリーズ、『Cisco Duo』のいずれもCisco Cloud Controlに統合しています。これらの機能を一つのプラットフォームに集約させることで管理を簡素化、自動化できるようになり、そこからインサイトも取得可能となります。そしてより重要なのは、同様に単一のプラットフォームからポリシーの設定や適用ができることです。当社が持つ全てのサービスやケイパビリティを統合することで、お客さまが安全にビジネスの成果を上げられるよう支援したいと考えているのです」

ネットワークの領域にも変化
システム環境のトラフィック回避を

 それでは、One Ciscoの取り組みは、現在隆盛しているAIやテクノロジーの潮流においてどのような恩恵をもたらすのだろうか? 現在の市況について、シスコ シニアバイスプレジデント グローバル ネットワーキング セールス ブリンク・サンダース氏は次のように説明する。「ネットワークの領域は、現状のセキュリティの問題と大きく関係しています。昨今、ChatGPTやClaudeなどAIでのチャット体験は劇的に進化しましたが、ユーザーのシステム運用に大きな変化はありません。抜本的な変化としてはAIエージェントがあり、多くの企業がAIエージェントを立ち上げている状況です。そこではトラフィック状況が従来とは変化しています。このデジタル世界では、エージェントをインフラの中で運用しているということと、フィジカル領域という新しい検討事項が生じています。シスコとファンドリーリサーチの調査では、12ヶ月の間にAI関連のセキュリティインシデントを経験したという回答は86%に上っています。セキュリティ対策は現実味を帯びており、そして加速化した形で脅威が検出されています。またAIの進化により、ネットワーク上のトラフィックも増加しています。過去10カ月、AIのワークロードに関するトラフィックは34%増えたと言われています。そして、今後の3年で3倍の209%増えると予測されています。今後さまざまなAIエージェントの展開、AIの能力による生産性向上、セキュリティ強化は、お客さまがビジネスで成果を上げるための重要な基盤となります。そのため、ネットワークをモダナイズする必要があるのです」

 ブリンク氏は、Cisco Live! U.S.で発表した内容や、AI時代においてシスコが目指している方向性を次のように説明する。「ネットワーク環境は、アプリケーションや外部のクラウドプロバイダーにまで広がり、複雑化しています。そのため、自社のプラットフォームにあらゆる機能を組み込み、簡素化することが非常に重要です。共通のポリシーを設定してデプロイすること、またネットワークとセキュリティを統合することなどもセキュリティに有効といえます。当社は、脅威に対応する形で強靭なネットワークインフラを構築していきます。また、新しいネットワークスイッチとして、『Cisco C9350』シリーズや『Cisco C9550』シリーズを発表しました。こうした産業向けのソリューションによって、お客さまの運用環境をサポートしていきます」

 シスコは、ネットワーク機器などのハードウェアからソフトウェア、シリコンまでネットワークのさまざまな基盤を広く開発し提供してきた。デイヴ氏の「当社は、ネットワークのパワーとセキュリティ、可観測性、コラボレーションを実現できる企業だと自負しています。こうした技術の上にサービスを乗せ、ネットワークを統合することで、お客さまが新たな時代にビジネス効果を発揮できる道筋をサポートします。このジャーニーをケイパビリティとして、今後もOne Ciscoを進めていきます」という言葉と、同社のソリューション展開に今後も期待したい。

シスコのさまざまなソリューションを統合するCisco Cloud Control。