【事例】営業・CX・法務

本企画では、これまでもアドビが提供しているPDFソリューション「Adobe Acrobat」(以下、Acrobat)を活用した業務効率化ノウハウを紹介してきた。今月はこのAcrobatに搭載されているAI機能「PDF スペース」にフォーカスし、実際にアドビ社内でどのように活用しているのかを紹介していこう。

複数資料をAIが横断検索する
対話型のワークスペース

 PDF スペースとは、複数資料をまとめて対話型のワークスペースが作成できる機能だ。汎用的なLLM(大規模言語モデル)を活用した生成AIとは異なり、指定された情報ソースに基づいて回答を生成するため、信頼性の高いインサイトを引き出せる。

 PDF スペースの機能を利用するには有償のAcrobatプランのうち「Acrobat Studio」(以下、Studio)を契約するか、対話型生成AI「Acrobat AI アシスタント」(以下、AIアシスタント)を契約する必要がある。アドビ デジタルメディア事業統括本部 教育事業本部 戦略営業部 アカウントエグゼクティブ 石澤 眸氏は「多くのビジネスユーザーは、『Acrobat Standard』のプランや、『Acrobat Pro』のプランを利用されていると思います。これらのプランに、AI機能を追加したものがStudioです。Studioには、PDFスペースだけでなくデザインアプリケーション『Adobe Express』(以下、Express)も含まれています」とStudioプランを契約するメリットを語る。

 それでは、PDF スペースではどのようなことができるのだろうか。まずは、冒頭に述べた対話型のワークスペースの作成だ。Webサイトのリンク、プレゼンテーション、会議議事録などの複数のドキュメントを取り込むとPDF化をした上で情報ソースが整う。この中でAIアシスタントと対話をしながら必要な情報やインサイトを抽出できる。

「PDFスペースの大きな特長は、出典元が明示されるので、AIアシスタントを駆使して複数のファイルを横断しつつ、人間が確認と判断をしながらインサイトの深堀りを行えることです。また、Expressは、誰でも簡単にデザイン性の高いプレゼン資料や動画などが作成できるアプリケーションです。Studioには、このExpressの機能が組み込まれており、対話で得られたインサイトを基に一つのアプリケーションの中でプレゼンテーションが生成できます」と石澤氏。

アドビ
法務部
法務スペシャリスト
山本幸子
アドビ
デジタルメディア事業統括本部
教育事業本部 戦略営業部
アカウントエグゼクティブ
石澤 眸
アドビ
デジタルメディア事業統括部
Integrated Customer Experience
ソリューションスペシャリスト
下山哲人
営業活動での活用例。ワークスペース上にアップロードした情報を基に、スライドのアウトラインを作成したり、そのアウトラインに基づいたプレゼンテーションを生成をしてくれたりするため、業務効率を大きく向上できる。

プレゼン生成にも対応し
営業活動を強力サポート

「プレゼンテーションを生成」では、プレゼンテーションを見せる対象やトーンの指定が行える。例えば学生向けであれば、オーディエンス対象を「学生」、トーンを「親しみやすく」のように設定を行う。プレゼンテーション時間に応じて長さの調整も可能だ。スライドのデザインは既存のテンプレートから選択でき、クオリティの高いプレゼンテーションを短時間で作成可能だ。「PDF スペースでは作成したスライドを基に、さらにAIと相談しながら作り込んでいったり、ユーザー自身が調整したりすることが可能です。細部までこだわって作れるという点が大きな特長といえるでしょう。また、Expressには企業のブランドカラーやロゴなどをボタン一つで適用できる『ブランド』という機能があります。本機能を活用することで企業のブランドガイドラインにのっとったスライドを作成できます」と石澤氏は語る。

 アドビでは、このPDF スペースの機能を活用することで、さまざまな領域の業務効率化を実現している。例えば営業だ。石澤氏は教育業界を中心に同社ソリューションの提案活動を行っている。学校教育の現場では、文部科学省が示す指針や予算といった動きが非常に重要であり、こうした業界トレンドをキャッチするためにPDF スペースを活用しているという。

「文部科学省をはじめとした省庁は、予算や審議会、指針などの情報をドキュメントとして公開していますので、それらの情報をPDFスペースにアップロードし、ワークスペース上でAIアシスタントと対話しながらインサイトを得ています。企業さまへの営業の場合は、中期経営計画などをPDF スペースに読み込ませ、商談前にAIアシスタントと対話することで理解を深める、といった活用も有効でしょう」と石澤氏は語った。

CX領域における活用例。ワークスペースのトップの概要欄に、このワークスペースの作成目的や共有内容を記載しておくことで、このワークスペースを共有された従業員も迷わず使い始めることができる。エラー発生時の対応策についても、アップロードされた情報に基づき回答してくれるため信頼性が高い。

膨大な文書を読み込み
業務引き継ぎや法務対応も

 カスタマーエクスペリエンス(CX)領域でもPDF スペースの活用は有効だという。アドビ デジタルメディア事業統括部 Integrated Customer Experience ソリューションスペシャリスト 下山哲人氏は「私が所属しているIntegrated Customer Experienceではお客さまへの営業活動から導入後のサポートまでをトータルで行っています。PDF スペースは特にサポートの分野で有効な機能です。日々数百件の問い合わせに対応するため、サポートの記録やナレッジデータベースをPDF スペースに集約し、効率的な情報検索を実現しています。また先日当部署の従業員が1名育休に入る際に、担当している製品に関する引き継ぎを行う必要がありました。その際も、PDF スペースに会議の記録やサポートの記録を蓄積し、ナレッジデータベースとして活用することで円滑な引き継ぎが実現できています」と語る。

 PDF スペースで作成したワークスペースは、共有ボタンから簡単に共同作業者に共有できるため、情報の引き継ぎもしやすい。ワークスペースのトップページには、そのPDF スペースの概要や補足メモなどが表示されるため、共有された共同作業者も迷わずにワークスペースを使い始められる。

 法務部においてもPDF スペースは積極的に活用されている。アドビ 法務部 法務スペシャリスト 山本幸子氏は「法務部では情報量の多い規約などを取り扱うことが多く、それらを読み、適切に回答することが求められます。例えば契約書類の新旧をPDF スペースで比較させ、変更点を要約させたり、ライセンス期間中の中途解約の可否など、特定の修正条件について質問したりしています。AIアシスタントは回答の際、根拠となっている資料や契約書上の文言を提示してくれるため、それらを一つ一つ確認して回答に誤りがないことも確認できます。これまで一つ一つの文字を追っていた法務の仕事も、PDF スペースを活用することで大幅な時間削減が可能になりました」と語る。

 現在、PDF スペースで生成できるコンテンツは前述したプレゼンテーション形式だが、近日中にPodcast形式での音声出力機能もリリースされる予定だ。また、現在PDFスペースの機能を学習に特化した形で発展させたソリューションの開発も進められている。授業資料のまとめや、試験対策の小テストの生成など学習支援機能が充実される予定であり、今後はビジネスシーンだけでなく教育シーンにも、活用が広がっていきそうだ。

法務部における活用例。新旧のNDA(秘密保持契約書)の書類をアップロードし、変更点や要点を分析させ、分かりやすい表形式にまとめることが可能だ。ワークスペースは簡単に共有できるため、ライセンス契約のポイントなどを共有する際も便利だ。