矢野経済研究所は国内のデジタルマーケティング市場を調査した。本調査では、Marketing Automation(MA)、CRM/SFA、CDPを対象としている。
2025年の同市場規模は、事業者売上高ベースで4,201億2,000万円と推計した。2026年の同市場は前年比114%の4,789億円に成長すると見込まれる。
この市場成長をけん引するのが、AI活用に取り組むユーザー企業でのデータ整備需要だ。高度なAI活用はデータの質と量に大きく依存するとの認識がユーザー企業に広がり、自社固有のデータを整備し、活用することの重要性が高まっているのだ。中でも、顧客データはAI活用における競争力の源泉となる。AIを活用し、個々の顧客に最適な営業・マーケティング活動を実践するため、顧客データを収集・蓄積し、活用するための基盤となるデジタルマーケティングツールへの投資意欲が一層高まっている。
こうした需要は新規導入の拡大に直結するとともに、既存ユーザー企業におけるデジタルマーケティングツール活用の深化・定着を推進している。デジタルマーケティングツールは、導入後における活用の定着が課題とされてきた。しかし、AI活用を見据えたデータ整備の必要性が経営課題として認識されるようになったことで、これらを積極的に活用しようとする機運が高まっているのだ。

※2026年は見込値、2027年以降は予測値。
※市場規模はMA、CRM/SFA、CDPを対象とした。
データ整備需要は今後も継続
生成AI技術の進展やAIエージェントの普及により、デジタルマーケティングツールのビジネスモデルや評価軸は変化しつつある。2024年末以降、SaaSというビジネスモデルの持続可能性を問う議論が業界全体に広がった。AIエージェントが人間の代わりにタスクを自律的に実行するようになれば、従来の「シート数(ライセンス数)×月額」という課金形態が成り立たなくなる可能性があるためだ。こうした課題に対応するため、一部のベンダーでは、利用量に応じた従量課金やタスク処理件数、生み出した成果に応じた成果報酬型といった課金形態への転換が進められている。また、システムの接続性とインターフェースの転換も避けられない課題となっている。AIエージェントはAPIやMCPを通じてツールを直接操作する。そのため、APIやMCPへの対応、すなわちAIエージェントとの接続性がベンダーの新たな評価軸になると考えられる。
AIエージェントの普及速度は、企業規模やデジタル活用の成熟度によって異なる。大企業では自律型AIエージェントの本格的な活用が進む一方、中堅・中小企業ではツールの導入や定着支援が重要な課題として残り続けている。ユーザー企業が求めるものは状況によって大きく異なるため、どのようなユーザー企業に向けて価値を提供するかを起点に、製品・機能・サポート体制を一貫して設計することがベンダーに求められる。
AI活用を見据えたデータ整備需要の高まりにより、デジタルマーケティング市場は引き続き拡大すると矢野経済研究所は予想している。各ツールへのAI機能の実装・強化およびユーザー企業でのAIエージェントの普及が進むことで、より高度な営業やマーケティング活動を実践できるようになると考えられる。ツールの活用範囲と利用深度がさらに広がることも、市場拡大を後押しする要因になるだろう。

