広報に必要なクリエイティブな作業は
Expressにお任せ!
前回はアドビ マーケティング本部 広報部 執行役員 本部長 鈴木正義氏による「Acrobat AIアシスタント」を活用した“広報業務ハック”を紹介した。今月も引き続き、鈴木氏が日常的に活用しているアドビツールをピックアップする。実は意外と求められるという広報のクリエイティブスキルに対して、アドビツールを活用する効果を見ていこう。
動画編集は広報の必須スキルに
Expressで簡単に動画を作成

マーケティング本部
広報部
執行役員 本部長
鈴木正義 氏
鈴木_前回はAcrobat AIアシスタントを活用した“Q&A革命”についてご紹介しました。広報の業務ではこうしたインタビュー対応以外にも、自社や製品のプロモーションを行う必要がありますが、最近では写真の編集や動画編集なども広報業務の一つです。
例えばSNSに画像を投稿する場合でも、最適な画像のサイズや形状はSNSによって異なるため、投稿先に合わせた画像編集が必要になります。また新製品発表会などを報道関係者向けに行う場合、その製品の操作方法などをイメージしやすくするため、プレゼン資料に掲載する短い動画を作成することもあります。
もちろんデザイナーさんに制作をお願いすれば非常にクオリティの高いものが出来上がりますが、こうした広報用の画像、動画は「明日の発表会に急遽この素材がほしい」といったように、準備期間が非常に短いケースも少なくありません。
そうした広報業務の困りごとに役立つのが、「Adobe Express」(以下、Express)です。Expressは無料でも使えるデザインアプリケーションですが、画像や動画の編集からチラシ、ポスター、プレゼン資料の制作など、できることは実に多彩です。
Expressには企業のロゴやカラー、フォントを登録できる「ブランド」という機能が搭載されておりますので、プレゼン資料も自社のトーンに合ったデザインに統一して作ることが可能です。またSNSに投稿する写真をそのままアップするのではなく、枠を付けて会社独自のカラーを出すことも容易です。
動画制作もExpressで行えます。用意されたテンプレートを活用すれば、SNSにアップするショート動画や字幕の作成も簡単です。YouTubeは動画のサムネイルの良さが再生数を左右しますが、Expressはそのような魅力的なサムネイルを作れるテンプレートも豊富に用意しています。動画が必要とされるシーンは多岐にわたりますので、Expressは広報業務に欠かせない存在です。
一方で、当社ではプロフェッショナル向けの映像編集ソフトウェア「Adobe Premiere」(以下、Premiere)も提供しています。PremiereはExpressよりも高度な動画編集に向いており、5分以上の自動字幕を作成したり、自動翻訳字幕や吹き替えを生成したりする場合は、Premiereの使用が適していますね。
SNSの投稿先に合わせた画像を
ExpressとFireflyで編集する
鈴木氏_字幕や吹き替えにも使われていますが、生成AI「Adobe Firefly」(以下、Firefly)も広報業務に非常に役に立ちます。例えば前述したSNSに投稿する画像をリサイズする場合、オリジナルの画像を最適なサイズに合わせると左右が切れてしまったり、上下が空きすぎてしまったりするケースがあります。その場合、Fireflyを使えば自然に背景を生成できるのです。一昔前は非常にハードルの高い画像加工の技術でしたが、今はFireflyのおかげで誰でもできるようになりました。また人物を撮影した画像の背景を切り抜いたり、特定のオブジェクトを削除したりするようなこともFireflyを使えば簡単です。これらの生成AI機能はExpressを経由しても利用可能ですので、コンテンツの編集はExpress一つで完結できます。
こうしたクリエイティブな仕事をAIが代替すると「クリエイターの仕事がAIに置き換わるのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、AIは仕事を助けるツールであり、クリエイターの仕事がAIに置き換わることはありません。
実際、広報の仕事がAIに奪われているという実感はなく、報道関係の方々との信頼関係を作ったり、より良い情報発信のための長期的な広報戦略を立てたりするような、より価値の高い仕事に時間を使えるようになっていると実感しています。読者の皆さまにも、ぜひアドビツールを活用して業務効率化を実現してもらえたらうれしいですね。



画像サイズを変更しよう
SNS投稿用に長方形の画像を正方形に変更(リサイズ)しようと思っても、その画像に余白が足りない場合は変更が難しい。その場合Expressのサイズ変更機能を活用すれば、生成AIのFireflyが上下の余白を自然に生成してくれる。

画像の不要なオブジェクトを削除しよう
Expressの画像編集機能にある「オブジェクトを削除」を選択すれば、不要なオブジェクトを自然に削除して見せたいモチーフだけを見せることが可能になる。画像では左に配置されていた二つの皿が奇麗に削除されていることが分かる。

画像の背景を削除してみよう
人物や動物を背景から切り抜いて、他のテクスチャーや画像と合成することも簡単に行える。画像編集機能から「背景を削除」を選択して中央のクラゲを切り抜き、「ページを編集」から背景を変更できる。

スタイルと構成を指定して画像生成
プレゼン資料などに使用する画像も、Fireflyで画像を生成すればイメージに合ったイラストを作れる。Fireflyはプロンプト(指示文)だけでなく、イラストのスタイルや構成の見本となる画像を参考画像としてアップでき、その指示に合った画像を生成してくれる。

クリエイターの権利を保護する取り組み
アドビはクリエイターの権利を保護する取り組みとして、「Content Authenticity Initiative」(コンテンツ認証イニシアチブ)の取り組みを推進している。写真の加工来歴、AI使用の有無が分かるほか、自社のコンテンツをAI学習に使われたくないという意思表示が行える。
Adobe Expressに編集ツールと生成AIが融合した
「AIアシスタント」が誕生!
2025年10月28日(現地時間)、米国のアドビ主催で開催された世界最大級のクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX」では同社製品のさまざまなアップデート、新機能が発表された。その中でもExpressには新たに「AIアシスタント」機能(ベータ)の導入が発表された。本AIアシスタント機能は、ユーザーが作りたい内容を言葉で説明するだけで、目的のコンテンツをデザインできる対話型AIとして提供される。プロモーションしたい製品に合わせてデザインモチーフを統一させたり、人の手を追加させたりといった画像加工、デザイン編集を全て自然言語で行えるようになる。制作した静止画を動画に変換するような指示にも対応してくれる。このAIアシスタント機能はユーザー側でオン・オフを切り替えられるため、ユーザー自身が手を加えたい場合は従来通り、手動での編集が行える。細かく作り込みたい箇所は手動で編集するなど、AIアシスタント機能との共同作業も行えるのだ。これらのAIアシスタント機能は、まずAdobe Express プレミアムプランのユーザーに提供され、その後全てのAdobe Expressユーザーに一般提供がスタートする。当初はデスクトップ版かつ英語版のみの提供だが、近日日本語版のリリースも予定しているという。







