働く人にこだわる自由を提供する
日本HPが掲げるFuture of Work戦略の三つの柱

日本HPは事業戦略として「Future of Work」を掲げている。2026年1月22日に行われた事業説明会では、Future of Work戦略を支える三つの柱として、「ハイブリッドAIの推進」「ハイブリッドワークの深化」「ものづくりDXの強化」の詳細が語られた。本記事ではその内容を見ていこう。

ハイブリッドAIの推進に向け
コミッティの設立を発表

 最初に登壇した日本HP 代表取締役 社長執行役員 岡戸伸樹氏は「我々は分社をしてから丸10年を迎えられました。これもひとえにお客さま、パートナーさま、そして関係する全ての皆さまのご支援あってのことです。改めまして、この場をお借りしましてお礼申し上げます。今年は午年です。この先10年も万事『うま』くいき、そして皆さまと共に勝ち『馬』となれるよう、今年1年全力で駆け抜けていきたいと思っております」と、感謝と意気込みを述べた。

日本HP
代表取締役
社長執行役員
岡戸伸樹

 日本HPが実施した「2025 HP WRI調査」によれば、83%のナレッジワーカーが業務ツールに満足しておらず、そのうち53%がよりよいツールを求めているという。また、自身の能力を発揮できることが仕事のやりがいにつながると回答した日本のナレッジワーカーの割合は30%に達し、世界で最も高い水準となった。岡戸氏はこうした結果を踏まえ、「日本のナレッジワーカーにとって、テクノロジーは単なるツールではなく、生産的で健全な職場環境をつくるための重要な触媒であることが伺えます。そのため、生産性の高い仕事を実現するためのテクノロジーを支える『Future of Work』の追求を今年も続けていきます」と語る。

 2026年度のFuture of Work戦略は三つの柱で構成されている。一つ目が、「クラウドAIとローカルAIを組み合わせた、ハイブリッドAIの推進」だ。現在のAI処理の多くはクラウドに依存しており、電力ひっ迫やトークンコストの増加、さらにはセキュリティ・プライバシーの懸念が残る。こうした課題に応えるのがハイブリッドAIだ。「クラウドAIは世の中の最新情報を大規模に分析・推論・学習でき、多くの職種で広く活用可能な点が強みです。一方、ローカルAIは秘匿性の高いデータでも安全に利用できるため、経営や財務、人事、労務といった領域に適しています。こうした双方のメリットを組み合わせたものがハイブリッドAIであり、これこそがAIの将来像としてふさわしいと考えています。我々はこれまでもハイブリッドAIを提唱していましたが、今年はいよいよそれを実現できるフェーズに入ったと確信しています」と岡戸氏は強調した。

 それでは、その実現に向け日本HPは何を進めていくのか。同社はAIソリューションベンダー、コンサルタントや有識者、AIインテグレーター、シリコンベンダー、生成AIモデル提供企業という五つの領域のパートナー企業と連携し、ハイブリッドAI推進の旗振り役を担っていくという。そのための新たな枠組みとして「HPハイブリッドAI推進コミッティ」の設立を発表した。2026年春を目標に、以下五つのプログラムを提供開始する予定だ。

日本HPと共にAI普及の推進を担う企業一覧
HPハイブリッドAI推進コミッティで提供予定のプログラムの一覧。ハードウェアの提供にとどまらず、アプリケーションの構築からトレーニング、PoCの確立までを一気通貫で支援することを目指す

 このプログラムの一つとして、AI OCRとローカルLLMを提供しているスタートアップ企業のUpstage AIとの戦略的アライアンスに基づき、日本HPのAIワークステーションと統合したパッケージ「SolarBox」を2026年春から展開する。

 ミッションクリティカルな産業では、紙の伝票や図面といった非構造化データが依然として残っており、AIに活用可能な構造化データに変換するための工数は膨大なものであるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも避けられない。さらに、取り扱う情報の機密性が高いことから、クラウドAIを活用しにくいという制約も抱えている。

 SolarBoxは、こうした課題に応えるために設計されたソリューションだ。機密情報をクラウドに上げることなく、セキュアなオンプレミス環境で高度な文書処理や意思決定支援を実現し、非構造化データを扱う現場の生産性向上に寄与する。

デバイス・セキュリティ・サポートの面から
快適かつ安全なハイブリッドワークの実現を支援

日本HP
ワークフォースソリューション事業本部
セキュリティエバンジェリスト
木下和紀エドワルド

 二つ目の柱が、「より快適で安心安全なハイブリッドワークの深化」だ。どこにいてもシームレスかつ安全に働ける環境を、デバイス、セキュリティ、サポートの面から強化する方針だ。

 デバイスの面では、法人向けMVNOサービス「HP eSIM Connect」が紹介された。「ハイブリッドワークが一般化する一方で、オフィス回帰の動きも見られます。拠点間を途切れずに移動しながら作業できる環境の重要性は、これまで以上に高まっていると考えています。そうした状況の中で、HP eSIM Connectはすでに3,000社を超えるお客さまにご利用いただいています」(岡戸氏)さらに、同サービスに国際ローミングや副回線キャリア、MDMセキュリティ機能を加えた「HP eSIM Connect PLUS」の提供を開始し、利便性の一段の向上を図るという。

 続いてセキュリティの面では、日本HPが提供する包括的なエンドポイントセキュリティソリューションが紹介された。同社 ワークフォースソリューション事業本部 セキュリティエバンジェリスト 木下和紀エドワルド氏は、近年エンドポイントセキュリティの重要性が高まっていると指摘する。「その要因として、エンドポイントの利用環境と役割の変化があります。ハイブリッドワークの普及に伴い、エンドポイントは保護された社内ネットワークだけでなく、自宅やカフェ、新幹線など、保護されないネットワークで利用される機会が増えました。この結果、攻撃を受けるリスクが高まっています。また、クラウドAIに上げたくない情報をローカルAIで処理するなど、エンドポイントが機微情報を扱う中核に位置付けられつつあります」

 さらにエンドポイントに対する攻撃は高度化しており、多層的な防御が不可欠となっている。こうした背景から日本HPでは、工場出荷から顧客の手元に届くまで端末の完全性を保護する「Platform Certificate」や、BIOSへの攻撃を受けた際に自動復旧する「HP Sure Start」など、複数レイヤーでの防御を組み合わせたソリューションを展開している。本発表会ではさらに新ソリューションとして、「HP Sure Access」と「HP Sure Admin」が紹介された。HP Sure Accessは端末内に専用の安全領域を設けてユーザーを保護する仕組みであり、HP Sure Adminは従来リモート設定が難しかったBIOSパスワードの遠隔管理を可能にする。

日本HP
執行役
カスタマーサポート統括本部
統括本部長
室屋智子

 最後にサポート面について、国内のサポート体制強化に向けた取り組みが紹介された。労働人口の減少やサポートニーズの多様化、物価高騰によるコスト増など、サポートを取り巻く環境は大きく変化しており、従来の枠組みでは対応が難しくなりつつある。こうした現状を踏まえ、日本HP 執行役 カスタマーサポート統括本部 統括本部長 室屋智子氏はカスタマーサポートには構造的な変革が求められていると指摘する。「これまでカスタマーサポートは、お客さまからサポート窓口に連絡してくるのを待つリアクティブな体制で、問い合わせいただいた問題を解決するための組織でした。しかし、今後はそれだけでは不十分です。当社が目指すのは、サポートを通じて顧客体験を最大化し、事業成長のキードライバーとなる組織です」

 具体策として、すでに米国ではAIを活用した音声の電話サポートを導入しており、今後は日本でも展開を予定している。さらに日本独自の取り組みとして、LINE公式アカウントによるサポート対応や、サポート情報を集約したポータルサイト「HP LIVEサポートナビ」が用意されている。そのほかに、現時点では米国で先行運用されている「Digital Passport」の提供も予定している。ユーザーは製品底面に貼付されたQRコードを読み取るだけで、クイックスタート動画、保証情報、サポート文書など必要な情報に即座にアクセスできるようになるのだ。

HP LIVEサポートナビでは、日本のユーザー向けに特化して情報を整理している。修理申込のほかにも現在のコールセンター混雑状況を確認できる。

AI PCのラインアップ拡大に加え
キーボード型のデスクトップPCを発表

 三つ目の柱が、「ものづくりの課題を解決する、ものづくりDXの強化」だ。本事業説明会では、具体的な事例が二つ紹介された。
 一つ目が、出版DXの事例だ。講談社の文芸誌「群像」は、従来印刷を担っていたサプライヤーがオフセット輪転機から撤退した影響で、雑誌の存続が危ぶまれる状況に置かれていた。

 そこで講談社は、グループ会社が保有する日本HPのデジタル輪転機に注目し、オフセット印刷とのハイブリッド運用を構築した。その結果、群像は小ロット印刷に加えて、文芸誌として史上初となるフルカラー化を実現した。創刊以来モノクロだった誌面に色が加わり、作家や読者から高い評価を得ているという。また、デジタル輪転機の導入に伴い編集工程の高速化が求められたが、作業プロセス全体を抜本的に見直すことでこれを達成し、深夜作業や残業時間の大幅な削減にもつながった。

群像の本文は、HPのカラーインクジェットデジタル輪転印刷機「HP PageWide Web PressT370HD」で印刷を行っている。

 二つ目が、建設DXの事例だ。建設業界では、人手不足や後継者不足、資材価格の高騰、環境対応などさまざまな課題を抱えており、その解決策として既存アセットの活用が注目されている。しかし、紙の図面をCADデータへ変換する作業には膨大な工数が求められ、現場の負担となっているのが実情だ。
 こうした課題に対応するため、日本HPは図面をAIで高精度にベクター化する「HP AIベクタライゼーション」を開発。これにより、紙図面を迅速に使用可能なCADデータへ変換し、作図工程の大幅な効率化を実現した。また、クラウドプラットフォーム「HP Build Workspace」を介してCADデータをアップロードすることで、設計から施工までの情報の一元管理・共有を行うことも可能だ。

日本HP
執行役員
パーソナルシステムズ事業本部長
松浦 徹

 さらに本事業説明会ではFuture of Workを実現するソリューションとして、PC製品も発表された。「2026年は次世代AI PCのラインアップを拡大することに加え、ユニークな製品も展開していきます」と、日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 松浦 徹氏は意気込みを語る。

 法人向けAI PCとして紹介されたのが、14インチAI PC「HP EliteBook X G2i 14 AI PC」だ。本製品は軽量さが特長となっており、2026年4月には最軽量構成で約999gのモデルの販売を開始する予定だ。本体の軽さに加え、付属のACアダプターも小型化によって約67gに抑えられており、携帯性をさらに高めている。軽量でありながら最大約29時間のバッテリー駆動が可能で、モバイルワーカーやハイブリッドワーカーに適した製品だ。

 さらにユニークな製品として、「HP EliteBoard G1a Next Gen AI PC」も紹介された。本製品は、キーボードにデスクトップPCを内蔵したユニークなPCだ。約676gという軽量さに加え、USB4ケーブル1本で給電・映像出力・データ転送を行える。加えて米軍調達基準「MIL-STD-810H」の12項目に準拠した堅牢性も備えている。「こうした特長から、持ち歩けるデスクトップPCとして活用できます。ユーザーの皆さまがオフィスの好きな場所で働けるようにサポートしてくれるでしょう」と松浦氏は本製品の魅力を語った。

HP EliteBook X G2i 14 AI PCは軽量さと長時間のバッテリー駆動を両立している。
一見するとキーボードのように見えるデスクトップPCのHP EliteBoard G1a Next Gen AI PC。