「Adobe Scan」「Adobe Express」「Adobe Acrobat」(以下、Acrobat)など、これまでさまざまなアドビツールの使いこなし術を紹介してきた。今月はその中でも「Acrobat AIアシスタント」を活用することで、実際にどのように業務効率化を実現できるのか、という視点からアドビ マーケティング本部 広報部 執行役員 本部長 鈴木正義氏による“広報業務ハック”について語ってもらった。

意外と知らない?
広報業務の困りごと

アドビ
マーケティング本部
広報部
執行役員 本部長
鈴木正義

鈴木氏_「広報」と聞くとどのような仕事を思い浮かべるでしょうか。実は意外と資料を作成したり、情報を参照したりする仕事が多いんです。例えば決算資料やディスクロージャーを作成して保管することはもちろん、過去のプレスリリースを参照したり、記者会見用の配布資料を作成したりします。記者会見の資料は最近PDFで配布するケースも増えてきましたが、会見直前に社長から「ここを直したい」と要望を受け、その場で慌てて修正をして配布することもあります(笑)

 また、前述した会見や取材の場に同席し、円滑に進むようサポートすることも仕事です。経済誌の記者の方からは「直近5年の平均利益率を教えてください」といった内容を問われることもあり、その内容に対して迅速かつ正確に回答をするためには、正しい情報を素早く探すスキルが求められます。

 こうした広報の業務に非常に役立つのが、当社が提供しているAcrobatの生成AI機能「Acrobat AIアシスタント」(以下、AIアシスタント)です。広報の仕事のみならず、アドビ社内で大活躍しているんですよ。

AIアシスタントのサポートで
広報業務の「Q&A革命」を実現

鈴木氏_経営方針のようなカバー範囲の大きなトピックスの取材対応の準備をする場合、その想定Q&Aを全てスポークスパーソン(取材対応者)が暗記することは現実的ではありません。そのため、まずAIアシスタントに関係しそうな資料を読み込ませた後、その内容を基に1ページ程度のサマリーにまとめてもらう、といったことも即座にできます。スポークスパーソンに話の流れを覚えてもらうのに役立つサマリーは、指定された情報を基に生成されるので、ハルシネーションが起こる心配もありません。

 また取材時の質問に迅速に回答する際にも、AIアシスタントが役に立ちます。例えば取材時に「アドビさんってインドに支社がありますよね。どこの町にあるんですか?」と聞かれて、とっさに回答に詰まることがあります。

 しかし、読み込ませた資料の中にその記述があれば、AIアシスタントに尋ねるだけで公式資料に基づいた回答ができるため安心ですし、記者の方をお待たせすることもありません。「Q&A革命」と言っていいほどに大きな変化です。

 このAIアシスタントに読み込ませる資料は、PDFだけでなくWordやPowerPointなどのあらゆる文書形式に対応しています。また、意外と知られていないことですが、Acrobatはオンライン会議ツールのTeamsやZoomなどと連携可能です。これらのオンライン会議ツールには標準で文字起こし機能が搭載されていますが、Acrobatと連携することでその会議の議事録のファイルもAIアシスタントに読み込ませることが可能になります。オンライン会見で発表した情報などを本機能で学習させれば、より詳しい内容をAIアシスタントに回答してもらえるでしょう。

 アドビ本社では8月20日に英語版がリリースされた「Acrobat Studio」の「PDF Spaces」機能を活用し、プレス向けチャットボットを作る取り組みも進められています。対話型ナレッジハブが作れるPDF Spacesを活用すれば、記者の方自身が検索して問い合わせの回答を即座に得ることが可能になります。

 一方で「AIによる学習で社外秘の情報が漏えいするのでは?」という懸念を抱く人もいるでしょう。当社のAIアシスタントは企業ユースを強く意識していますので、ユーザーの同意なしにデータが保存されることや、AIアシスタントのトレーニングに使用されることはありません。ですので、社外秘の文章なども安心してアップロードできるのです。

 次号では、「実は意外と求められる広報のクリエイティブスキルに対して、どのようなツールで対処しているのか?」といった視点から、広報業務ハック術を紹介していきます。

豊富なテンプレート
鈴木氏 直伝!
Step 1 ►►►
膨大な資料を要約させる
Q&Aに関連しそうなPDFファイルをはじめとした文書ファイルをAIアシスタントに読み込ませる。10ファイル(1ファイル当たり約600ページまで)の上限がある(執筆時点)。読み込ませるとそのファイルの内容を要約してくれて便利だ。
用途に応じてテキスト編集
Step 2 ►►►
膨大な資料から正確に回答
AIアシスタントに質問を投げかけると、読み込んだ膨大な資料から正しく回答してくれる。例えば「アドビの開発拠点はどこですか」といったような内容を、決算資料の中から迅速に回答してくれるのだ。英語の資料も日本語で回答してくれるため、英語ネイティブでないユーザーも使いやすい。
イラストを追加して華やかに
Step 3 ►►►
ハルシネーションも防止
膨大な資料から回答した場合でも、その回答の基となった該当箇所をすぐに参照できる。PDFというファイルフォーマットを開発したアドビが作ったAIアシスタントだからこそ、参照した文章の構造を理解して引用可能だという。
印刷に適したデータに
Step 4 ►►►
PDF Spacesをナレッジハブに
Acrobat StudioのPDF Spaces機能(英語版のみ)を活用することで、プレス向けチャットボットを作る取り組みも進められている。さまざまな最新の広報資料を読み込ませておくことで、記者(プレス)からの質問にいつでも正確に回答できるようになる。

アドオンでQRコードを生成
Point 1 ►►►
資料を基に1枚に要約
取材テーマに基づいた内容の資料をAIアシスタントに読み込ませ、「想定質問項目とその回答をA4用紙1枚程度に要約」と指示すると、取材テーマに沿った内容を、覚えやすいボリュームにまとめてくれる。
コンビニプリントに対応!
Point 2 ►►►
議事録も情報も学習
TeamsやZoomと連携すれば、標準の文字起こし機能を活用して議事録の内容をAIアシスタントに分析させることが可能だ。会議の内容や、オンライン会見の内容を読み込ませることで、AIアシスタントからより精度の高い回答を引き出すことができる。

iPhoneで高品質な動画編集ができる
「Adobe Premiere モバイル版」登場!

2025年9月30日、アドビは動画編集アプリの「Adobe Premiere」のiPhone向けのアプリ「Adobe Premiere モバイル版」をリリースした。

Adobe Premiere モバイル版は外出先でもプロフェッショナル品質の動画編集をサポートするため、無制限のトラック数による高精度な編集や、クリアなナレーションとAIによる適切なタイミングの効果音作成などの機能を備えたオーディオ機能、コンテンツ生成と数百万点の無料のマルチメディア素材にアクセスできる。これらの動画編集に必要な基本機能は、無料で提供される。

Adobe Premiere モバイル版で編集したプロジェクトは、Adobe Premiere デスクトップ版に直接送信して引き継ぐことも可能だ。Adobe Premiere モバイルによって、短編映画、ミュージックビデオ制作、YouTubeやTikTokのコンテンツ制作から編集の制作プロセスをより加速できるという。制作した動画コンテンツはTikTok、YouTubeショート動画、Instagramなど主要なSNSにワンタップでエクスポートできるだけでなく、各SNSに合わせて動画サイズを調整しながら、重要なアクションを常にフレームに収めて配信可能だ。