約30種類のネットワーク製品が登場
2025年6月27日、シスコシステムズは「ネットワーキング新製品・最新ソリューションに関する記者説明会」を開催した。高耐久スイッチやルーターなど、約30種類のネットワーク製品が新たに紹介された。
AI時代のネットワークを包括的に保護
2025年6月8〜12日、シスコシステムズが主催するグローバルイベント「Cisco Live 2025」が米国・サンディエゴで開催された。これを受け、シスコシステムズはCisco Live 2025で発表された新製品を紹介する「ネットワーキング新製品・最新ソリューションに関する記者説明会」を6月27日に行った。説明会では、約30種類のネットワーク製品が紹介された。
生成AIの登場によって
ネットワークの見直し需要が加速
AI時代と呼ばれる今、AI活用を支える重要な役割を担うのが、ネットワークだ。「生成AIの登場と普及によってトラフィック量は、以前の約3倍に増加すると見込まれています。特に、AIのトレーニングやチューニング、高度な推論処理を行うためのアップリンク帯域への需要が急増しています。それに加えて、サイバー攻撃などに備えたネットワークセキュリティの強化も重要です。こうした背景から、多くの企業でネットワークの見直しが始まっており、強固な防御体制や快適なネットワーク運用体制を実現できるネットワーク製品が求められています」とシスコシステムズ 社長執行役員 濱田義之氏は説明する。
AI時代のネットワーク運用に求められるキーワードとして「運用のシンプル化」「拡張可能なデバイス」「セキュリティ」の三つが挙げれるという。シスコシステムズでは、これを実現し、AI時代におけるネットワーク需要のニーズに応えるため、スイッチ、ルーター、ゲートウェイ、Wi-Fiなど多岐にわたる製品を刷新した。「約30種類のネットワーク製品を新たに発表しました。これはここ10年間で最大規模ともいえる数です」と濱田氏は話す。
シスコシステムズのネットワークデバイスの導入数は、3,200万台を超えており、接続しているクライアント数に関しても、10億以上になるという。これからもその数はどんどん増えていくことが予想される。ネットワークデバイスの需要が高まる中で、今の時代に合った製品の展開を進めていく。

社長執行役員
濱田義之 氏

シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャー
セキュアWAN・産業用IoT統括
ヴィカス・ブタネイ 氏
AIがネットワーク運用をサポート
担当者の運用管理がより便利に
本説明会において、大きなトピックの一つとして紹介されたのが、運用管理システムの統合だ。これまで、シスコシステムズのスイッチ、ルーター、Wi-Fiアクセスポイントなどは、オンプレミス型の管理システム「Catalyst Center」で管理するものと、クラウド型の「Meraki ダッシュボード」で管理するものという二つのラインに分かれていた。シスコシステムズでは、ここ数年間でCatalyst CenterとMerakiダッシュボードの画面構成や操作方法といったUXの統一を進めており、この二つのライセンスの統合が今回発表された。両製品で機能に差異があるものの、ユーザーが使いたい機能によって、Catalyst Centerでの管理とMerakiダッシュボードでの管理を自由に選べるようになった。企業のニーズに合わせて、柔軟に対応する。
また、AIを活用したトラブルシューティングが行える「Cisco AI Canvas」も注目すべきトピックとして紹介された。Cisco AI Canvasは、ネットワーク管理における運用をサポートする機能だ。例えば、ネットワーク障害が発生した際に、AIがトラブルシューティングを行い、問題の発生箇所を自動で特定してくれる。ダッシュボード上で一連の操作が行えるため、運用管理の煩わしさもないという。なお、Cisco AI Canvasは、2025年秋にα版の提供を開始する予定だ。
ほかにも、会話型AIアシスタントの「Cisco AI Assistant」が紹介されるなど、シスコシステムズにおいても、さまざまなソリューションにAIを積極的に取り入れていく考えが示された。
「AIの利活用が進む中で、これまで以上に安全なネットワーク環境が求められています。我々はお客さまのネットワーク環境の安全を守ると同時に、ネットワーク運用の簡素化を図るなど管理担当者の利便性の向上にも努めていきます」(濱田氏)


あらゆる拠点規模に対応
セキュリティの強化にも注力
今回発表された製品は、「Cisco IE3500」「Cisco IE3500H」「Cisco IE9300」をはじめとする産業用向けネットワークスイッチ、「Cisco 8000シリーズ セキュアルーター」「Cisco C9350 スマートスイッチ」といったあらゆる拠点規模に対応するルーターやネットワークスイッチなど多岐にわたる。
近年、産業用ネットワークの需要が高まっている。倉庫・配送センターといった小売業での利用、工場などの製造業での利用など、産業分野では幅広い場所でネットワークが使われているのだ。「工場などで使われるDINレールスイッチや、厳しい環境に向けた防塵・防水のIP67スイッチ、ラックマウント型のスイッチなど、さまざまなニーズに合わせた製品を強化しました。産業用ネットワークの需要に応えていきます」とシスコシステムズ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャー セキュアWAN・産業用IoT統括 ヴィカス・ブタネイ氏は説明する。
あらゆる拠点規模に対応するネットワーク製品として展開されるCisco 8000シリーズ セキュアルーターは、小規模向けからデータセンター向けまで柔軟に対応する。本製品は高い拡張性とパフォーマンスに加え、セキュリティ面を強化している。特にセキュリティに注力し、「Quantum-Safe」(耐量子安全性)というポスト量子暗号に対応した。「量子コンピューターが実用化すれば、現在の暗号技術は容易に解読されてしまいます。これを利用するサイバー犯罪として『Harvest Now,Decrypt Later(HNDL)攻撃』(今収集して後で解読)という手法が取られ始めています。現時点では解読できない暗号化データであっても、今のうちに収集しておき、量子計算技術の実用化を待って将来的に解読するという攻撃です。このHNDL攻撃に対応する技術として、量子コンピューターでも解読が困難な『Post-Quantum Cryptography(PQC)』(耐量子計算機暗号)が注目を集めています。当社のCisco 8000シリーズ セキュアルーターはPQCの暗号化を行うためのハードウェア性能を担保しており、PQCに対応したネットワーク環境を用意しておきたいというニーズに応えます」とブタネイ氏はアピールする。
セキュリティに関しては、PQC対応のほかにも、ハードウェア改ざん攻撃やBIOS攻撃、ソフトウェアバイナリ攻撃、ランタイム攻撃などさまざまなサイバー脅威に対抗する機能を実装している。複雑化するサイバー攻撃を不安視する企業は多い。こうした豊富なセキュリティ対策機能は、運用における安心材料となるだろう。
シスコシステムズでは、今回発表したネットワーク製品を含め、あらゆる顧客のネットワーク環境を快適かつ安全に構築するためのソリューション展開を今後も進めていく。

