Security

 MM総研は、国内の民間企業におけるサイバーセキュリティ対策動向を調査した。昨今、サイバーセキュリティの脅威が多様化、複雑化する中、国内企業におけるサイバーセキュリティ分野の人材不足が深刻な状況にある。対応策として、セキュリティ対策を重視する企業を中心に外部の専門ベンダーによる支援を求める動きが高まっている。また、先進企業ではすでにセキュリティ対策にAIを導入しており、今後はさらに広がると予測している。

 同調査によると、約8割の企業がサイバーセキュリティ分野の人材不足を認識している結果となった。特に、過去にインシデントを経験した企業ほど、人材不足を深刻に捉える傾向がある。同時にインシデント経験と経営層のセキュリティ意識にも相関関係が見られ、サイバー攻撃発生後に重要性を認識し、対策を進める現状を示唆している。こうした企業は、不足する専門性・人員数を補うため、外部委託やAI活用を積極的に進めているとMM総研は分析する。

 一方で、インシデントから年数が経過すると経営層の意識が薄れ、対策の継続的な強化が滞るケースも見受けられるという。企業におけるサイバーセキュリティ対策の方針は、外部委託中心が39%、外部委託と内製化を半々とするが28%、内製化中心が33%という内訳となっている。本データから、経営層がセキュリティ対策への意識を高く持っているほど外部委託の比率が高い傾向が見られた。外部の専門家もうまく活用しながら、自社のセキュリティリスクを抑えようとしている状況だ。今後の方針は、外部委託を拡大する企業が26%となっており、すでに外部委託の割合が高い企業では、今後もさらに外部委託を拡大する傾向がある。一方で、内製化中心の企業は内製化を維持または拡大する方針で、両者の間で方針の違いが見られた。

 サイバーセキュリティを外部委託している業務領域は、実務よりも戦略マネジメント業務の割合が高い。「戦略の意思決定」が36%で最も高い割合を占め、次いで「リスク評価・監査」(34%)、「法令順守対応」(30%)、「戦略・企画」(27%)が上位に並んだ。ベンダーには、これら上流工程の専門的な知見が求められている。

セキュリティ意識の高い企業は外部委託を活用

 企業のサイバーセキュリティ対策における主要な課題は、コスト(35%)と専門スキル不足(29%)、人材不足(28%)が上位3項目として挙がった。特に、セキュリティ意識の高さと正の相関を持つ、外部委託比率が高い企業ほどコストへの課題意識も強い。現在、セキュリティ人材の採用コストや外注費用は世界的に高騰している。また、セキュリティ意識が高い企業ほど専門スキルや人材の不足を深刻に捉えている。これを踏まえ、外部委託比率が高い企業は費用面で採用が難しい人材を変動費化しているのではなく、コストとスキルなどのバランスを鑑みて専門性の高い領域を外注しているとMM総研は分析している。

2024年度の電子契約サービス市場は20.7%増

Digital Contract Service

 アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、国内の電子契約サービス市場を調査した。電子契約サービス市場の2024年度の売上金額は295億円、前年度比20.7%増となった。2025年度も同22%増と高い伸びが見込まれる。電子契約サービスは、契約締結から契約管理までの業務効率向上、郵送代や印紙代などのコスト削減、契約業務フローの可視化およびガバナンス強化などの有効性から、企業の導入が進んでいる。従来はBtoB向けが中心だったが外食産業などでの雇用契約の電子化といったBtoC分野での利用が進み、導入企業や利用用途の裾野が広がっている状況だ。上記を踏まえ、2024〜2029年度の同市場の年平均成長率は11.3%で、2029年度には500億円を突破すると予測している。

 ITRのプリンシパル・アナリストである三浦竜樹氏は、次のようにコメントしている。「コロナ禍で急速に拡大した同市場は、大企業での導入が一巡し、受発注や検収などの契約周辺業務との連携や、顧客との対面でのタブレット署名や本人確認プロセスとの統合など、電子契約サービスの適用業務が広がっており、高度化したニーズの顕在化によりアップセルが継続すると予測します。また、中堅・中小企業では、部門や業務単位での契約書の電子化から、全社展開へと拡大する見込みであり、市場規模の拡大が予測されます」

※ベンダーの売上金額を対象とし、3月期ベースで換算。2025年度以降は予測値。

2024年度のSaaS管理・運用・開発ツール市場は295億円

SaaS Management

 デロイト トーマツ ミック経済研究所はSaaS管理・運用・開発ツール市場を調査した。2024年度のSaaS管理・運用・開発ツール市場は前年比135.9%の295億円となり、各分野で順調に拡大した。市場成長の背景として、広告強化による露出拡大でサービスブランドの認知度向上と、企業の経営層への訴求が浸透したことがある。そうした中で部門トライヤルから全社採用などの大型案件が増加し、市場成長が加速したとデロイト トーマツ ミック経済研究所は分析している。SaaS利用企業においては、SaaSは導入数に比例してアカウントの作成・削除や権限設定、ID・アクセス管理などが煩雑で従業員の入退社や異動時の負担が大きく、入力ミスや掌握漏れを防ぐためにもExcelベースからの脱却が急務となっている。一方SaaS事業者では、カスタマーサクセスに向けて継続的に契約や解約、顧客情報、請求管理など多くの管理業務が生じ、常に最新機能を提供するためのリソース確保が欠かせない状況だ。

 コロナ禍明け以降はIT投資が本格化しており、2025年度のSaaS 管理・運用・開発ツール市場は前年比140.3%の414億円が見込まれる。企業は、少子高齢化によって労働生産性向上に向けデジタル化への迅速な取り組みを求められている。その中で、自律的に行動しタスクを実行するAIエージェント採用の本格化が見込まれ、大阪・関西万博を経て2026年に同市場は602億円を突破するとみている。2029年度の同市場は年平均成長率39.6%、1,565億円に拡大すると予測した。