1988年にPCレンタル事業からスタートしたパシフィックネット。現在では「企業のIT支援を通し、『人々』『社会』を幸せにしたい。」という経営理念の下、IT機器のレンタル、運用管理、クラウドサービス、データ消去、リユース・リサイクルといった幅広いサービスを展開している。その中でデータ消去やリユース・リサイクルなどを包括的に行っているのがITAD事業だ。
HDDとSSDで異なるデータ消去
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「当社のITAD事業で取引のあるお客さまは、従業員数が1,000名前後の大企業が中心です。しかし、こういった大企業の情報システム部門の担当者の方でも意外と認識されていないのが、データ消去の重要性です」と語るのは、パシフィックネット 執行役員 ITAD事業部長の濱崎友裕氏。
濱崎氏いわく、古いPCを処分する際、その端末のデータ消去方法は前任者から引き継いだ内容のままとなっているケースが多いという。しかし、HDDとSSDでは記憶媒体の構造が異なるため、従来のHDD向け消去手法ではSSDのデータを完全に消去することは困難だ。「一部の企業の担当者などは、ただPCをフォーマットしたりするだけだったり、物理的に破壊したりといった手段でPCの処分を行っているようです。しかし、フォーマットしたPCは簡単に復旧できます。物理的に破壊すれば情報漏えいのリスクはありませんが環境リスクに対する配慮に欠けています。セキュリティと環境の両面に配慮したデータ消去の重要性を認識してほしいと思います。意外と見落とされがちですが、IT資産を安全に処分するためにはコストがかかりますので、その重要性を理解してほしいと思います」と濱崎氏は指摘する。
パシフィックネットのITAD事業では、セキュアでサステナブルなIT機器の処分を企業に提供している。同社では回収、仕分け・検査、データ消去、リユース・リサイクルの選別、リファビッシュ、法人向けリユースPCの販売といったサイクルをトータルで手がけ、ゼロエミッションを推進している。またIT機器の適正処分に当たっては、機器の回収段階から高い水準のセキュリティを確保している。
パシフィックネットは全国に7カ所のテクニカルセンターを設けている。それぞれの拠点から発注元の企業に直接IT機器の引き取りに向かい、テクニカルセンターに運搬する。濱崎氏は「当社の回収スタッフはIT機器の取り扱いに関する専門教育を受けています。また回収する機器はさまざまなデータが保存されている情報機器ですので、そうしたIT機器をきちんと取り扱える運送会社をパートナーとしています」と情報の取り扱いに対する配慮を語る。
仕分け作業後のデータ消去では、NISTのガイドラインに準拠したデータ消去作業を行うほか、複数の記憶媒体が搭載可能な機器に対してはソフトウェアで認識されない可能性も想定し筐体内部の確認を行っている。またデータ消去後の情報漏えいにも留意し、機器に貼られた管理番号などのシール類の剥離も行う。データ消去作業は全てパシフィックネットのテクニカルセンター内で行い、従業員や部外者による持ち出し防止体制を徹底しているという。「機密情報を扱う機器を社内から持ち出せないという場合は、オンサイトによるデータ消去にも対応しています。最近はこのオンサイトでのデータ消去の需要が増えています」と濱崎氏。
データ消去後の端末は、リユース品とリサイクル品に仕分けされる。リユース品は40項目以上のチェックを行い、OSの再インストールなどのリファビッシュを行った上で法人企業へ販売する。「Windows 10のEOS(サポート終了)に伴ってPCのリプレースを進めた企業も多くありますが、一方でPCの価格が以前よりも上昇しているため、中古PCの購入ニーズが高まっています。当社でも法人向けの再生PC販売は注力している分野です」(濱崎氏)

パシフィックネット 執行役員 ITAD事業部長 濱崎友裕 氏
パシフィックネット 取締役 未来戦略部担当 杉 研也 氏
GIGAスクール端末
処分専用窓口を開設
スマホやタブレット向けのデータ消去サービスも提供している。パシフィックネット 取締役 未来戦略部担当 杉 研也氏は「スマホやタブレットにはOS標準のデータ消去ツールがあるため、企業内でデータ消去を行うことは可能です。しかし、データ消去に対するエビデンスが得られません。当社ではデータ消去ソフト『Blancco』での消去後、データ消去証明書を発行できます。またスマホやタブレットは社外に持ち出すため、MDMによる管理が行われています。これはデータを消去しただけでは登録が解除されません。当社ではこのMDM解除代行も対応しています」と語る。
2025年は、GIGAスクール構想第1期で導入された学習者用端末のリプレースが進んだ年でもある。パシフィックネットでは「GIGAスクール端末向けデータ消去サービス」も提供しており、端末回収から証明書発行までをトータルで提供している。「学校現場で使われているこれらの学習者用端末は、児童生徒の名前がシールで貼られて管理されているケースも多いため、記憶媒体だけではなく筐体全体の取り扱いに配慮する必要があります。運送中のデータ漏えいリスクも存在するため、きちんとした業者に予算を確保して端末の処分を依頼してほしいのですが、その予算を確保していない市区町村も多いですし、一部の自治体では小型家電リサイクル法の認定事業者に限定して入札をかけているケースもあります。当社は小型家電リサイクル法の認定事業者ではないため、ご依頼いただくケースは少ない状態です」と杉氏は語る。パシフィックネットでは、これらの学習者用端末の相談に対応するための専用窓口「GIGAスクール端末処分相談センター」も2025年4月9日に開設しており「学習者用端末の処分で困っていることがあれば是非問い合わせをしてほしい」と訴える。

調達から適正処分まで対応する
LCMサービスでIT資産管理を効率化
2025年10月にサポート終了を迎えたWindows 10のEOSに伴い、駆け込みでPCのリプレースを進めた企業もある。リプレースした新しいPCを稼働させつつも、古い端末を保管し何かしら問題が発生したときに対応できるようにしている企業も多いという。濱崎氏は「Windows 10端末の処分に関する需要は、今年の年末から来年の3月あたりにピークを迎えると予想しています」と指摘しており、ITADサービスの需要は今後さらに増加しそうだ。
パシフィックネットが提供するITADサービスの優位性について、濱崎氏は「当社では端末の引き取りを行う際に、貸与した端末がなかなか返却されなかったり、返却された端末が異なったりする場合は従業員に督促を行うような対応も行います。また大企業の場合、回収するPCの数も膨大になるため、当社スタッフがオフィスに回収窓口を設け、PC返却に対応しながら、新しいPCの引き渡しを同時に行うケースもあります。当社はITAD事業のほか、PCなどのレンタルを行うITサブスクリプション事業も展開していますので、IT資産の調達から適正処分までを一気通貫でサポートする『PC-LCMフルアウトソース』も提供しています。特定の業務を外部委託することなくワンストップで対応しますので、セキュアな環境下でお客さまの情報資産を守れますし、IT資産の運用コストも抑えられます」と語る。
杉氏は「当社はITAD業界で唯一の上場企業ですので、その信頼性から大企業のIT資産を取り扱うことが非常に多くあります。そのため今後は、当社がリユース・リサイクルを行うことで削減するCO2などをクレジット化する『カーボンクレジット』の分野への取り組みも進めていきたいと考えています。単純にデータを消去するだけでなく、PCのLCMにおけるセキュリティをきちんと担保しながら、お客さまへの信頼性の高いサービスの提供を続けていきます」と締めくくった。






