今月のテーマは……
Gemini がもたらす
「 Google フォーム 」の新しい未来

「 Google Workspace 」は、私たちの働き方をよりスマートで効率的なものへと変革し続けています。その中核を担うAIアシスタント「 Gemini 」は、これまで「 Google ドキュメント 」「 Google スプレッドシート 」
「 Google スライド 」「 Gmail 」といった主要なアプリケーションに搭載され、文章の作成、要約、分析といった多岐にわたる機能でユーザーをサポートしてきました。そして今、その波はついに「 Google フォーム 」にもやってきました。今号は、Google フォーム に新たに搭載された機能(執筆時点では、日本語未対応)と、それらがもたらす具体的なメリットについて、詳しく解説していきます。

アイデアを瞬時に形に

「 Googleフォーム 」は、誰でも手軽にオンラインのアンケートやクイズ、申込フォームなどを作成できる画期的なツールです。そんな Googleフォーム にAIアシスタント「 Gemini 」が搭載され、アンケートやクイズの作成、そして回答の分析などの機能に革命をもたらそうとしています。それでは一体どのような機能が追加されたのか、詳細を見ていきましょう。

「こんなアンケートを作りたい」という漠然としたアイデアはあっても、それを具体的な質問項目に落とし込んでいく作業は、意外と骨が折れるものです。どのような質問を、どのような順番で、どのような形式で尋ねるべきか、頭を悩ませた経験は誰にでもあるでしょう。

 この課題を解決するのが、「 Help me create a form(フォーム作成を手伝って)」機能です。ユーザーが作りたいフォームの概要を文章(プロンプト)で入力するだけで、Gemini がその内容を解釈し、適切な質問項目を備えたフォームのドラフトを自動で生成します。さらに、関連するドキュメント、スプレッドシート、スライド、PDFファイルを指定すればその内容も踏まえて、より精度の高いフォームを作成することが可能です。

 例えば「来月の社内イベントの出欠確認と参加希望のワークショップを調査するフォーム」と入力するだけで、氏名や所属部署の質問に加え、「イベントへの参加・不参加」「希望するワークショップの選択肢」といった項目が自動で設定されたフォームが完成します。生成されたドラフトは、もちろん後から自由にカスタマイズ可能です。たたき台があることで、フォームの作成にかかる時間が劇的に短縮され、より質の高いアンケート設計に集中できるようになります。

Help me create a form 機能でフォームの作成を依頼している画面。作りたいフォームの概要を文章(プロンプト)で入力するだけで、Gemini がその内容を解釈し、適切な質問項目を備えたフォームのドラフトを自動で生成してくれる。
回答が3件以上集まるとSummarize responses機能が利用できる。ユーザーは短時間で回答全体の傾向を把握し、素早く意見をまとめられる。数百、数千といった大量の回答も、時間をかけずに集計作業が行えるようになる。

文脈に応じた質問を提案

 フォームを作成していると「他にどんな質問を追加すれば、より有益な情報が得られるだろうか?」と手が止まってしまうことがあります。特に、多角的な視点から意見を収集したい場合、質問の抜け漏れは避けたいところです。

 新たに追加された「 Suggest questions(質問を提案)」機能は、こうした場面で大きな力を発揮します。この機能はフォームに二つ以上の質問が入力されると、ボタンが有効になります。クリックすると、Gemini が既存の質問内容の文脈を理解し、関連性の高い新たな質問を二〜四つ提案してくれます。

 例えば、製品の満足度に関する質問の後に「製品の改善点」や「競合製品との比較」といった、ユーザーが次に尋ねるべき質問を先回りして提案してくれます。これにより、作成者は自分では思いつかなかったような新たな視点や気付きを得られ、より網羅的で洞察に満ちたフォームを設計することが可能になります。質問のアイデア出しにかかる時間を節約できるだけでなく、回答者にとっても論理的で分かりやすいアンケート構成になるというメリットもあります。

膨大なデータからインサイトを抽出

 アンケートを実施した後、自由記述式の回答を一つひとつ読み解き、全体の傾向を把握するのは非常に時間と労力のかかる作業でした。特に、数百、数千といった大量の回答が集まった場合、その負担は計り知れません。しかし、Gemini によりこの悩みは過去のものとなります。

 それを可能にするのが、フォームの「回答」タブに追加された「 Summarize responses(回答を要約)」というオプション機能です。これをクリックするだけで、Gemini がフォームのタイトル、説明、質問内容、そして集まった全ての回答を総合的に分析し、主要なテーマや重要なポイントをまとめたサマリーを自動で生成します。これにより、ユーザーは短時間で回答全体の傾向を把握し、次のアクションへとつながる貴重なインサイトを得ることが可能になります。

 例えば、顧客満足度調査の自由記述欄に寄せられた多種多様な意見も、Gemini が「価格」「機能」「サポート」といったテーマごとに整理し、それぞれのポジティブ/ネガティブな意見を要約してくれます。作成されたサマリーはワンクリックでコピーでき、報告書やプレゼンテーション資料にそのまま活用可能です。分析から報告までの一連のプロセスを大幅に効率化します。

 Google フォーム への Gemini の統合は、単なる作業の効率化にとどまりません。これまで専門的な知識や多くの時間が必要だったデータ分析やアンケート設計といった業務のハードルを大きく下げ、誰もが当たり前のようにデータを活用できる新しいスタンダードを築きつつあります。

 フォームの自動作成機能と質問の提案機能は、創造的なプロセスを加速させ、より本質的な課題解決に時間を注ぐことを可能にしてくれます。そして回答の要約機能によって、私たちは迅速に意見の収集が行えるようになり、的確な意思決定を下せるようになるでしょう。

 Google Workspace と共に進化を続ける Gemini が、今後私たちの働き方をどのように変えていくのか、その可能性から目が離せません。


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