複雑化する企業のITインフラ管理を支援

2025年6月17日、Broadcomはモダンプライベートクラウド向けプラットフォームの最新版である「VMware Cloud Foundation 9.0」(VCF9.0)の提供開始を発表した。これに伴って6月20日、VCF 9.0に関する記者説明会が開催された。説明会では、VCF 9.0が企業にどのようなメリットをもたらすのか、詳細が明かされた。

モダンプライベートクラウドの実現で
複雑化する企業のITインフラ管理を支援

2025年6月17日、Broadcomはモダンプライベートクラウド向けプラットフォームの最新版である「VMware Cloud Foundation 9.0」(VCF9.0)の提供開始を発表した。これに伴って6月20日、VCFプラットフォームやVCF 9.0に関する記者説明会が開催された。VCF 9.0は、BroadcomによるVMware買収後の初めてのメジャーバージョンアップとなる。説明会では、VCF 9.0が企業にどのようなメリットをもたらすのか、詳細が明かされた。

 近年、プライベートクラウドへの需要が着実に高まっている。Broadcomが1,800人の上級ITリーダーを対象に行ったグローバル調査によると、回答企業の53%が今後3年間の優先事項にプライベートクラウドでの新しいワークロードの構築を挙げている。加えて、69%がクラウドネイティブアプリケーションを含むワークロードをパブリッククラウドからプライベートクラウドへ移行すると回答した。

 ヴイエムウェア カントリーマネージャ 山内 光氏は、「コスト管理の面で、パブリッククラウドへの支出に懸念を示している企業が多いようです。また、昨今では、生成AIの本格的な活用が進んでおり、セキュリティやコンプライアンスの観点から、プライベートクラウドを選択する企業が増えています」と説明する。

 その一方で、プライベートクラウドにも課題があるという。「プライベートクラウドを運用するに当たって障壁の一つになっているのが、ITのサイロ化です。80%以上の企業が課題として挙げており、これを解消するためのプラットフォームが検討されています」と山内氏は語る。

 また、日本を取り巻く現状として、企業は「不確実な経済」「労働人口の減少」「経済安全保障の強化」といったさまざまな課題に直面しているという。山内氏は、「こうした課題が浮上している今だからこそ、ITインフラストラクチャの再定義が必要です。当社では、こうした課題に対応するITインフラストラクチャとして、“モダンプライベートクラウド”を掲げています」と話す。

 モダンプライベートクラウドとは、パブリッククラウドとデータセンターの長所を融合したものだ。俊敏性、スケーラビリティなどのメリットを持つパブリッククラウドと、セキュリティやレジリエンスなどに強みを持つデータセンターのメリットを組み合わせている。

 このモダンプライベートクラウドを実現する製品として、Broadcomが提供するのが、「VMware Cloud Foundation」(VCF)の最新版となる「VMware Cloud Foundation 9.0」(VCF 9.0)だ。

ヴイエムウェア
カントリーマネージャ
山内 光
ヴイエムウェア
執行役員 パートナー技術本部 本部長
名倉丈雄
Broadcom
VCF部門 製品担当 バイスプレジデント
ポール・ターナー

インターフェースを統一
運用管理の作業を簡素化

 VCFは、サーバー仮想化の「VMware vSphere」、ストレージ仮想化の「VMware vSAN」、ネットワーク仮想化の「VMware NSX」などを統合した仮想化インフラプラットフォームだ。オンプレミスやパブリッククラウドのマネージドサービス、エッジなど多様な環境において、一貫した方法でプライベートクラウドを構築・管理できる。

 VMwareは、2023年に「VCF 5.0」を提供している。今回のVCF 9.0は、BroadcomによるVMware買収後の初めてのメジャーバージョンアップとなる。前バージョンのVCF 5.0から9.0に繰り上げているのは、vSphereの現行バージョン「vSphere 8」の後継かつフラッグシップ製品として位置付ける意味合いがあるのだという。

 米国本社からオンラインで参加した、Broadcom VCF部門 製品担当 バイスプレジデント ポール・ターナー氏は「VCF 9.0は、15カ月間の継続的な開発を行い、数百万時間もの工数をかけました。我々がこれまでに行った最も重要なリリースとなります。オンプレミスのデータセンター、プライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジといったさまざまなプラットフォームを一元的かつ簡素に統合運用できます。開発者や運用管理者、エンドユーザーに最適な環境を提供します」とアピールする。

 VCF 9.0は、従来型アプリケーション、モダンアプリケーション、AIアプリケーションを問わず、全てのアプリケーションをプライベートクラウド環境全体にわたって一貫して運用できる統合プラットフォームだ。VCF 9.0では、新たにクラウド管理者向けに統合されたインターフェース「VCF Operations コンソール」を搭載した。全体の運用状況を包括的に把握できるようになり、運用効率の向上につなげられる。

 また、VCF 9.0は「vSphere Kubernetes Service」(VKS)があらかじめ組み込まれているため、仮想マシンとコンテナをネイティブに実行できることも特長だ。これにより、Kubernetesと仮想化ワークロードを同時に構築・デプロイ・実行できる。複雑なDevOpsスタックや統合作業が不要になるという。

セキュリティやレジリエンス面でも強化
多様な企業ニーズに柔軟に対応

 VCF 9.0は、マルウェア対策や障害復旧などのセキュリティ、レジリエンス面での強化も施されている。例えば、アプリケーション単位でネットワークをセグメント化し、マルウェアの拡散を防止するファイアウォール機能「VMware vDefend」や、オンプレミス上に隔離されたクリーンルーム環境を設け、スナップショットを用いて大規模障害やランサムウェア被害から迅速に復旧する「VMware Live Recovery」などがある。高度なセキュリティ機能によって、企業のITプラットフォーム運用をサポートする。

 Broadcomでは今後、製造、金融、通信、公共といった分野を中心に、国内市場に向けてVCF 9.0の導入を進めていく方針だ。ヴイエムウェア 執行役員 パートナー技術本部 本部長 名倉丈雄氏は「VCF 9.0のリリースを受けて、国内でもすでに多くのお客さまから問い合わせをいただいています。急速に進化するテクノロジーへの柔軟な対応、運用効率の向上や運用の安全性などさまざまな企業ニーズがある中で、VCF 9.0はそうした全ての要望に柔軟に応えていきます」とアピールした。

米国からオンラインで参加したBroadcomのポール・ターナー氏は、VCF 9.0について「さまざまなプラットフォームを一元的かつ簡素に統合運用でき、開発者や運用管理者、エンドユーザーに最適な環境を提供します」とアピールした。