2025年9月29日にアサヒグループホールディングス、10月19日にアスクルがランサムウェア攻撃の被害を受けるなど、サイバー攻撃の被害が相次いでいる。こうした状況を踏まえると、企業にとってセキュリティ対策はもはや避けて通れない課題だ。そこで今回は、サイバー攻撃への備えとして役立つセキュリティ関連書籍を紹介する。

ランサムウエア攻撃との戦い方

勝村幸博
3,190円(税込)
日経BP

 本書は、昨今被害が増加しているランサムウェア攻撃に焦点を当てた一冊だ。著者が執筆に至った背景には、ランサムウェアが大企業だけでなく、業種・規模を問わずあらゆる組織を標的にしている状況がある。それにもかかわらず、ランサムウェア攻撃とは何か、どのように備えるべきかを俯瞰的にまとめた情報は少ない。さらに多くの組織では「何かあったらセキュリティベンダーに頼れば大丈夫」といった考えがまん延している。しかし、実際は「何かあった」時点で、すでに壊滅的な被害を受けている可能性が高い。それ故、組織自らが必要な対策を講じることが重要だ。加えて、セキュリティベンダーに対応を依頼する場合であっても、何をどのように依頼すべきか、対応が妥当かどうかを判断する力が求められる。そのためには、ランサムウェア攻撃に関する網羅的な知識が欠かせない。本書では、ランサムウェアの現状(第1章)から手口(第2章)、事例(第3章)、対応(第4章)、対策(第5章)、歴史(第6章)までを、体系的に解説している。平易な文章と豊富な図版を用いているため、現場のセキュリティ担当者やCISOなどの専門家はもちろん、経営陣、セキュリティ担当者を目指す人、さらにはセキュリティに関心を持つ一般読者にも分かりやすい一冊だ。

中堅・中小企業のための
サイバーセキュリティ対策の新常識

那須慎二
2,200円(税込)
東洋経済新報社

 中堅・中小企業において、サイバー攻撃に対して具体的な対策まで踏み込めている企業は少ない。対策が不十分であるにもかかわらず、十分な備えができていると誤認しているケースや、ITに対する苦手意識からセキュリティへの関心を持てない、あるいは日々の業務に追われて対策に手が回らないといった経営者も少なくない。こうした現状に対し、「被害に遭わない企業を一社でも多く増やしたい」という強い思いの下、著者は本書を執筆した。本書では、サイバー被害が増加する背景や必要な対策、事故発生後の対応、そして今後の動向までを体系的に解説している。特に第1章では、実際に発生したサイバー被害の事例を物語調で紹介しており、読者が被害の実態を具体的にイメージしやすい構成となっている。

セキュリティ1年生

上野 宣
2,420円(税込)
翔泳社

 本書は、セキュリティについて何も知らない初心者に向けて、基礎知識から仕組みまでを分かりやすく解説した入門書だ。近年、サイバー攻撃の脅威が増す中で、セキュリティ対策の必要性は高まっている。しかし、「セキュリティ対策とは具体的に何をすればよいのか」と戸惑う人も多い。そうした初心者に向けて、本書では「せん先生」と「おっちょさん」というキャラクターが登場し、セキュリティの重要性や基礎知識を対話形式で学べる構成となっている。平易な文章と豊富なイラストを用いているため、専門知識がなくても理解しやすい。また、各章にはクイズが設けられており、学習内容を定着させる工夫も施されている。セキュリティの重要性や基礎知識に加え、事故への対策、セキュリティインシデント発生時の対処方法など、実務に直結する知識を体系的に解説しており、新入社員の教育用としても有用だ。