ビジネス向けミーティングボードが商業やスポーツの学びにも効果を発揮する

鹿児島県の大隅半島の中央に位置する鹿屋市にある前田学園 鹿屋中央高等学校(以下、鹿屋中央高校)。同校は1968年に鹿屋商業高等学校として創立した私立学校だ。その後、1983年に現在の鹿屋中央高校に校名を変更している。同校では人間科学科という一つの科の中に六つのコースを設置しており、それぞれ特色ある学びを実践している。その学びを支えているICT環境を見ていこう。

六つの多様なコースで学ぶ

 鹿屋中央高校が設置する六つのコースでは、それぞれ特色のある学びが行われている。医学部や薬学部、歯学部への合格を目指す「文理コース」、国公立大学進学を目指す「進学コース」のほか、学業とスポーツを両立する「体育コース」、会計やITのスペシャリストを目指す「教養コース」、卒業と同時に調理師免許の取得を目指す「調理コース」「食物コース」など学ぶ内容は実に多彩だ。鹿屋中央高校 副理事長 前田 悠氏は「もともと本校は商業高校を前身としていますので、教養コースではITパスポート試験や日商簿記検定などの資格取得を目指す商業教育に力を入れています。また調理コースや食物コースでは、大隅地域で唯一卒業と同時に調理師免許の資格が取得できます。調理師免許というのは国家資格のため、本来であれば実地経験などいくつかの要件が存在しますが、本校ではそれらの要件を3年間のカリキュラムの中で実施しています」と語る。なお、調理コースは男子生徒が、食物コースは女子生徒が在籍しているが、カリキュラムに違いはないという。

 このようなさまざまなコースを設置し、多様な生徒が学ぶ鹿屋中央高校でICT環境を導入する契機となったのはコロナ禍だった。感染症拡大防止のため全国一斉休校となった当時、まだ鹿屋中央高校ではICTの環境整備が進んでおらず、休校期間中の生徒への課題はプリントを配布することで対応していたという。「その光景に、本校のICT化の遅れを痛感しました。私は当時、まだ副事務長でしたが、しっかりとコストをかけてICT化を進めていくべく、学校全体で取り組むことを決めました」と前田氏は当時を振り返る。

 現在の鹿屋中央高校にはWi-Fiが完備されているほか、教員には指導者用のiPadが整備されている。勤怠管理ツールや、教員間の伝達が行えるチャットツールなども導入されており、校務のICT化も進められている。

 こうしたICT整備の中で、特に特長的といえるのが大型提示装置の整備だ。鹿屋中央高校ではMAXHUBのミーティングボード「All in One Meeting Board」シリーズを特別教室を含めた全ての教室に導入している。前田氏は「3〜4年ほどかけて段階的に整備を進め、現在は約30台を運用しています。本校ではもともと大型提示装置として2〜3台のプロジェクターを共有して使っていましたが、教材を投映するに当たって設置に時間を要したり、限られた台数のため使いたい時に使えなかったりという課題がありました。据え置きのAll in One Meeting Boardを全教室に整備したことで、これらの課題が解消されました。また本校では電子黒板と呼んでいますが、このAll in One Meeting Boardはもともとオフィスの会議で使われているミーティングボードです。ビジネス向けに設計されている製品を学校で使うという点に面白さを感じましたし、Windows OSが内蔵されているため教員にとっても使いやすいというメリットもありました」と語る。

鹿屋中央高校では2025年度入学の1年生から学習者用端末にiPadを導入し、授業で活用している。
全教室に整備されたAll in One Meeting Boardは授業で積極的に活用されている。Web会議でも快適に使えるため、デジタル教材での英単語音声の再生もクリアに聞こえる。

授業から集会まで活用広がる

 All in One Meeting Boardは、鹿屋中央高校でどのように活用されているのだろうか。最も多いのが授業での教材投映だ。PowerPointなどで作成した教材を表示したり、教科書会社から提供されているデジタル教材の動画を視聴したりするような活用がされている。All in One Meeting Boardは発色が良く、画面も明るいため、教室の後方の席からでも良く画面が見えると評判が良いという。また鹿屋中央高校では「Google Workspace for Education」も活用しているため、Web会議ツールの「Google Meet」で画面共有を行うような使い方もしているという。

 前田氏は「今年の1年生からは学習者用端末としてiPadを導入し、授業で活用しています。Meetでの画面共有はAll in One Meeting Boardのほか、生徒の手元にあるiPadにも表示できますので、グループワークなど協働学習を行う場面でも板書内容が参照しやすいようです。また教員にとっては、授業ごとに黒板にチョークで板書する時間が短縮されたため、非常に負担が減ったと聞いています」と語る。

 コースごとに特色ある活用もされている。例えば教養コースでは、簿記の授業で決算書の書き方などを学ぶが、その書き方を黒板への板書でなくデジタルで表示できるようになった点が教員の負担軽減につながっているという。調理コース、食物コースでは調理手順など動画で見せる方が効果的な場面も多く、All in One Meeting Boardでそうした動画教材やYouTube動画を見せることで理解を深めているのだ。

 授業以外の場面でもAll in One Meeting Boardは積極的に活用されている。鹿屋中央高校では毎朝、体育館で全校集会を実施しているが、今年は猛暑のためAll in One Meeting Boardを活用し、各教室をオンラインでつなげた擬似的な全校集会を実施した。また、昨今では大学や企業とWeb面接を行うケースも増えており、その面接でAll in One Meeting Boardを使うことで、よりクリアな音声と映像で印象の良い面接を実現させている。

 鹿屋中央高校ではこれらの電子機器を生徒にも開放しており、休み時間には生徒がAll in One Meeting Boardを使って音楽を流したり、体育コースの生徒などは野球やサッカーの試合を視聴したりしているという。

「生徒が自由に使える環境にすることに対して『学習に関係のないコンテンツにアクセスしてしまうのでは』という懸念を示す教員もいました。しかし昨今の教育現場は、先生たちが一方的に学習を与えて、生徒たちが座って学ぶという講義型のスタイルではなく、教員と生徒がリアルタイムにコミュニケーションを取りながら学ぶ双方向型のスタイルにシフトしています。使うことを一方的に禁止するのではなく、どう使うかというラインを主体的に学んでほしいと考え、このような運用にしています。教員にも、まずはAll in One Meeting Boardを使ってもらう、面白がってもらうことを第一目標にしており、これはすでに達成しています。次のステップでは教員の技術力向上を実現するため、定期的な研修や事例の共有を校内で実施するなどの取り組みも視野に入れています」と前田氏は語る。鹿屋中央高校は今回のAll in One Meeting BoardをICT化の“エンジン”に位置付け、さらなる変革を進めていく。