キングジムの電子メモパッド「ブギーボード BB-21」(以下、BB-21)は、同社が長年手がけてきた電子メモパッドシリーズ「ブギーボード」の最新モデルだ。これまでのモデルにはなかった画面を覆うカバーが付き、書いた内容を保護できるようになっている。ユーザーの要望から生まれたBB-21は、今までにはなかった使い方を実現していく。進化を続けるブギーボードの魅力を探っていこう。
text by 田中 亘
キングジム
ブギーボード BB-21

意図しない線から画面を保護

デジタルプロダクツ開発部
デジタルプロダクツ課
リーダー 小島沙織 氏
(右)キングジム 開発本部
デジタルプロダクツ開発部
デジタルプロダクツ課
陳 嘉儀 氏
キングジムのブギーボードシリーズは最新モデルの「BB-21」を含めて、全部で9製品をラインアップしている(2025年11月時点)。製品の多くは10インチ前後のモデルとなっており、付属のペンで書いた内容を瞬時に消せる便利さから、ビジネスの現場ではサービスカウンターにおける顧客情報の記載や、コールセンターのメモなどで活用されている。
大画面モデルが接客やサービスの窓口で普及する一方、小型モデルはビジネスパーソン個人を中心に使用されてきた。例えば3.9インチの「BB-12」は、付箋の代わりに使われることを意識して本体背面にマグネットを搭載し、金属面へ貼り付けが行えるのだ。
そして最新モデルのBB-21は、BB-12に寄せられたレビューを基に開発が進んだとキングジム 開発本部 デジタルプロダクツ開発部 デジタルプロダクツ課 リーダー 小島沙織氏は語る。「BB-12は皆さまから好評の声をいただき、本製品によってブギーボードを持ち歩くユーザーが増えてきました。そうした中でレビューを分析していくと、『画面に意図しない書き込みが付いてしまう』といった課題や、『持ち運びの際に画面を保護したい』という需要があることが分かりました。そこで当社は、カバー付きのブギーボードの開発に至りました」
ブギーボードに共通した魅力として、滑らかな書き心地とワンタッチで記入内容を消せる手軽さがある。BB-21や、BB-21と同時に発表された「BB-20」、加えて従来製品の「BB-9」「BB-16」には、書いた内容を消去する「消去ボタン」のほかに、不用意な消去を防ぐ「消去ロック」が搭載されている。つまり書いた内容を消えないようにする機能はあったが、書き込みを防ぐ機能はなかったのだ。そのため移動中のかばんやポケットの中で画面が擦れた際に、意図しない線が引かれてしまうことがあった。
そこで同社は、上質な風合いのカバーを付けたBB-21を開発したのだ。ブギーボードシリーズの基本機能を損なうことなく画面の保護を実現し、ポケットへ入れても問題なく持ち運べるようになった。この新発想は、ブギーボードシリーズの活用シーンを進化させるものだといえる。
“デジアナ文具”の手軽な使用感

ブギーボードのようなガジェットは、デジタルの利便性とアナログの簡便性をかけ合わせた「デジアナ文具」と呼ばれることがある。BB-21のデジアナ文具としてのメリットは、手帳のように使える手軽さにある。例えばスマートフォンやタブレットでも専用のスタイラスペンを使えば手書きができるが、いちいちペンを取り出したり、手書きが行えるアプリを立ち上げなければならなかったりするため、手軽さの面では課題が残ってしまう。それに対してBB-21は、紙の手帳のようにサッと出してサッとメモを書けるのだ。その便利さを経験してしまうと手放せなくなる。これを踏まえると、ブギーボードを愛用してきたユーザーが画面の保護を求めた背景も納得できる。そしてデジアナ文具としての使い勝手を追求してきた同社だからこそ、BB-21の商品化が行えたのだろう。
そしてカバーについても、ユーザーに使用してもらう上でのこだわりがあると、キングジム 開発本部 デジタルプロダクツ開発部 デジタルプロダクツ課 陳 嘉儀氏は話す。「BB-21は個人で使う自己表現ツールの一つになると考えたため、革小物のような高級感のあるものにしたいと思いました。本体カラーはブルー、ブラック、キャメル、グレーを用意しているのですが、このカラー展開もデザイン担当者がハイブランドの店舗などを調査した上で、最近はやっている色を選択しています」
あらゆるビジネス現場でのメモに
小島氏は、BB-21の特長的な活用シーンについて「スマートフォンで電話をしながら、ちょっとしたメモを取りたいときに使えます」と話す。
スマートフォンをメモ代わりに使用している人でも、電話中にメモを取るときは紙やペンを探すのではないだろうか。BB-21をビジネス向けのデジアナ文具として提案するならば、どのような場面で手書きの手帳を使いたくなるかを想像するとよい。営業や接客だけでなく、保守や管理といった業務でもメモを取るシーンは多い。メモの潜在的なニーズは、あらゆるビジネスの現場にあると考えられる。
さらにBB-21は、個人で買って便利だと実感できるだけに、ギフトで贈られてもうれしいガジェットになるのだ。ペーパーレス化やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目指す顧客に対して、紙の手帳や筆記具の贈答を控えたいときもあるだろう。そうしたときにBB-21ならば、スマートな贈答品のデジアナ文具として注目されるはずだ。

