Microsoft 365に足りない「日本文化」という名のピース

「Microsoft 365」は、その多岐にわたる機能で企業の生産性を大きく向上させてきた。メール、カレンダー、文書作成、チームコラボレーションまで、すべての業務をクラウド上で完結できる利便性は、多くの企業に受け入れられている。

しかし、その機能性の高さとは裏腹に、導入企業の中には「日本の商習慣に合わない」といった、使いづらさを感じている声も少なくない。稟議書の決裁フロー、チームメンバーの予定をひと目で確認できるカレンダー、地震発生時の迅速な安否確認など、日本独自の文化や商習慣に対応しきれていないことがその原因だ。

このような課題を解決するのが、Microsoft 365の機能を拡張する「アドオン」サービスである。アドオンは、標準機能とのギャップを埋め、日本の企業文化に寄り添った最適なソリューションを提供してくれる。今回は、長年にわたりグループウェアのアドオンサービスを提供してきたネクストセットの代表取締役 別所貴英氏に、日本企業が抱える課題と、そのソリューションについてお話をうかがった。

技術力とニーズで築かれたアドオンビジネス

お話を伺ったのはネクストセットの代表取締役 別所貴英氏

ネクストセットは、もともと「Google Workspace」のアドオンサービスを提供していたサテライトオフィスから独立した会社だ。

「1998年にベイテックシステムズという会社を設立し、当時の「Google Apps(G Suite)」の正規代理店としてライセンス販売をしていました。しかし、Google Appsはそのままだと日本の企業では使いづらいと感じる部分があり、それを改善するアドオンを自社開発して販売したのが、アドオンビジネスの始まりです」と別所氏が当時を振り返る。

その後、クラウド事業に特化することをきっかけにサテライトオフィスへ社名変更したのが2011年のこと。2013年にマイクロソフトから「Office 365(現在のMicrosoft 365)」がリリースされ、「取り扱わないか」という問い合わせがあり、Googleのイメージが強かったサテライトオフィスから独立し、Office 365のアドオン事業に特化したネクストセットという別会社を設立して今に至る。

ビジネススキームはサテライトオフィスと同じで、Microsoft 365をより便利に、安全に使うためのアドオンサービスを提供。Google製品とMicrosoft製品の大きな違いについて別所氏は、「Googleの商流がパートナーとの結びつきが強くないのに対し、日本マイクロソフトは既存の販売店と販売網が既に存在しており、販売店を育てていくところにあります」と語る。そこでネクストセットは自社のライセンス販売だけでなく、パートナーである販売店を通じてアドオンを提供することで、日本マイクロソフトの商流を支援する戦略をとっている。

このビジネスモデルにより、販売店はネクストセットのアドオンを組み合わせることで、顧客の多様な要件を満たす「100点の提案」が可能となる。

「かゆいところに手が届く」ネクストセットのアドオン

ネクストセットのアドオンは、多種多様あり、必要なアドオンを導入すればよい

Microsoft 365は非常に多機能だが、日本企業の文化や商習慣に合わない部分があることを、別所氏は指摘する。

「やはり日本の企業は、日本独特の文化や商習慣があり、良し悪しではありませんが、日本人が好むUIや機能というものがあります」と、日本市場特有のニーズが存在することを強調した。

ネクストセットは、こうした課題を解決するアドオンを豊富に提供している。その中から人気の高いアドオンをいくつか紹介する。

ワークフロー

稟議書や見積書、報告書といった申請・承認業務は、どの企業にも存在する。しかし、日本の「ハンコ文化」のような業務フローは、Microsoft 365の標準機能にはなく、「Power Automate」を使えば実現可能だが、ロジックが複雑で誰もが簡単に作れるものではない。ネクストセットの「ワークフロー」アドオンは、このギャップを埋め、日本企業に特化した承認業務を実現する。

承認業務もハンコ文化を利用できる

組織&グループカレンダー

国産グループウェアのカレンダー機能は、縦軸に人、横軸に日付を配置した階層構造で表示できる形式が一般的で、日本人はこの見せ方に慣れ親しんでいる。一方、Microsoft 365(Googleも同様)のカレンダーは、予定ごとに色分けされ、誰の予定かが見づらいことがある。ネクストセットの「組織&グループカレンダー」アドオンは、Microsoft 365のデータを活用しつつ見慣れた表示形式を採用し、会議室の空き状況も簡単に確認できる。

顔写真入りで予定がわかりやすいグループカレンダー

Myポータルガジェット

国産グループウェアのポータルサイトは、サインインしたユーザー個人の予定やタスク、新着メールなどを表示する「One-to-One」が主流だ。しかし、Microsoft 365でポータルサイトを作る場合、情報共有が目的の「SharePoint」を利用するため、誰が見ても同じ情報が表示される「One-to-Many」になりがちである。ネクストセットの「Myポータルガジェット」アドオンを使えば、SharePointの情報を活用しながらユーザー個人の情報を表示できるようになり、「以前利用していたポータルサイトの方が良かった」という顧客の不満を解消できる。

SharePointの画面で、カスタマイズされた自分用のポータル画面を構成できる

安否確認

地震が多い日本において、安否確認は重要な機能だ。このアドオンでは、メールを自動送信する震度を設定したり、地震が起きた地域の従業員にのみ安否確認メールを送ったりするなど、日本独自のニーズに応える。

安否確認では、従業員がどこにいるかも確認できる

これらのアドオンは、Microsoft 365のデータを活用しつつ、日本企業が求める利便性を補う。特に、長くMicrosoft 365を利用してきた顧客からは、「こんな機能が欲しかった」「諦めていたことが実現できた」と喜びの声が聞かれているという。

導入はコスト削減にもつながる

ネクストセットのアドオン導入は、機能性の向上だけでなく、コスト削減にも貢献する。例えば、IP制御やデバイス制御が可能なシングルサインオン機能は、Microsoft 365の上位プランである「ビジネスプレミアムプラン」でも利用できる。しかし、そのプランは月額3298円と高価であり、オーバースペックな機能も含まれる。

別所氏は、この点について次のように語る。「最低限のIP制御やアクセス制限などができればいいのであれば、我々のシングルサインオンなら月額200円で実現できます」。

ネクストセットのアドオンサービスは、必要な機能だけを安価に追加でき、1アドオン月額200円。4アドオンまでは100円ずつ加算され、月額600円払えば全てのアドオンが利用できる。企業は無駄なコストをかけずにMicrosoft 365を最適化できるのだ。「安否確認は普段はあまり使わない機能ですが、『どうせ全部使えるのなら、利用したい』という顧客の潜在的なニーズに応えていると考えています」と別所氏は語った。

アドオンの開発は、基本的に顧客からの要望を起点としている。

「我々のようなITのプロは、使い方に慣れてしまい、柔軟な発想ができないことがあります。お客さまは様々なサービスを利用しているため、多様な情報が集まってきます。そこから『こういうものがあったらいいよね』というニーズを汲み取り、開発することが多くなっています」と別所氏は言う。

現在の累計利用者数は、Google版も含めた全サービスで約8万社、約2300万アカウントに上る。中でも、シングルサインオンは約8000社、400万アカウント近く、組織&グループカレンダーは約1万1000社、約260万アカウントに利用されており、フラッグシップ製品となっている。

日本企業にマッチしたAIの活用と地方市場の開拓

ネクストセットのアドオンサービスは、大企業から中小企業まで、あらゆる規模の企業に対応している。大企業はかつてのロータス「ノーツ」を利用しているところがまだ多く、Microsoft 365に移行したいという要望は多いという。しかし、そのまま移行しようとすると、実現できない要件が多い。ネクストセットのアドオンサービスは、こうした要件をクリアし、円滑な移行を支援する強力なツールとなっている。

今後の展望として、別所氏はAI技術の活用を挙げる。Microsoft 365のCopilotは現状高価で、まだ「特定の業務でAIを使いたい」という具体的なものではなく、「AIを導入したいが、どんなことができるか教えてほしい」といった漠然としたニーズがほとんどだ。

別所氏は「AIの波が突然来た後に、波が引いた後にここに穴が空いているみたいな部分が出てくるはずなので、そういったところにマッチするアドオンを開発していきたいと考えています」と、ニッチなニーズを捉えていく方針だ。

また、地域的な展開も重要視している。現在、顧客は東京に集中しているが、今後は九州や東北、北海道といった地方市場の開拓にも力を入れていく。全国に支店がないため、販売店と協力しながら、範囲を広げていきたいと別所氏は意気込んでいた。

Microsoft 365の導入・運用に課題を感じているのであれば、ネクストセットのアドオンサービスは、その解決策となり得るだろう。別所氏は、Microsoft 365は日本の文化とギャップが生じるため、そこにニーズがあることを強調する。ネクストセットは、顧客の声に耳を傾け、そのギャップを埋めるアドオンを提供することで、日本企業に最適なグループウェア環境を構築することを目指している。

製品情報

Microsoft 365アドオン

Microsoft 365の機能に日本の文化や商習慣にマッチした機能をアドオンすることで、より使いやすいグループウェアを実現する。シングルサインオンや組織アドレス、組織化レンター、ワークフロー、ポータルサイト、安否確認、勤怠管理など豊富なアドオンのなかから好きな組み合わせで導入可能。複数導入しても安価なのでコスト削減にもつながる。

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