オフィス改革とGaroon活用の相乗効果で
“昭和な働き方”からの脱却

2022年11月10〜11日、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2022」が幕張メッセで開催された。kintoneをはじめとしたクラウド製品の活用法や、DX、働き方改革などをテーマにした最新情報を40以上の講演と、80以上の展示で紹介する総合イベントだ。今回は、「昭和な働き方からの脱却 地方の役所が取り組んだオフィス改革とGaroonの活用」と題して愛媛県西予市役所が行ったイベント講演の内容を取り上げる。

生産性向上を目指した改革

愛媛県西予市
愛媛県南部に位置する人口3万5,405人(2022年9月30日時点)の市。豊かな緑に覆われた美しい山々、青く広がる海、広大な大地が存在する多彩な自然に恵まれている。日本で最も古い地層の一つ「黒瀬川構造帯」があり、市の全域が「四国西予ジオパーク」に認定されている。約4億年前の縦じまの地層が観察できる「須崎海岸」や、四国カルストの一部「大野ヶ原」などが有名で、地質学の研究者や専門家が数多く訪れる。

 人口減少や少子高齢化は多くの地方自治体が抱える悩みの一つである。愛媛県南部に位置する西予市もまた、そうした悩みを抱えている自治体だ。「人口減少によって、財政の悪化や職員数の減少といった影響が生じていました。こうした厳しい状況の中でも、多様化する市民サービスに対応していかなければなりません。そのためには生産性向上が必要であると考えたのが、オフィス改革の始まりです」と西予市 政策企画部 政策推進課 情報推進室 室長 上甲宏之氏は話す。

 オフィス改革に取り組む前の西予市役所は、島型オフィスと呼ばれる固定席を設けたデスク配置、紙資料が前提の業務、インターネットの環境は有線LANのみ、といったいわゆる“昭和な働き方”だった。「デスクトップPCを使用していたため、PCを持ち歩けず、自席でないと業務ができません。会議の資料は紙に印刷したものを配布、申請業務も紙で行うなど、自席には紙の書類が積まれている状況でした。ほかにも、会議や打ち合わせを行う際に、関係者とのスケジュール調整や会議室の空き状況の確認に時間がかかってしまい、スピード感を持った対応が行えないなど、業務効率の悪さが問題視されていました」(上甲氏)

 そうした問題の解決に向けて西予市役所が行ったのが、業務プロセス全体の改善だ。職員が自由に仕事できる環境を目指し、ノートPCやデュアルモニターの配布、Wi-Fiの整備、フリーアドレス制の導入など、少しずつ実践できるところから環境を整備したという。そして、コミュニケーション活性化のために導入したのが、サイボウズのグループウェア「Garoon」だ。

業務に必要な情報をGaroonに集約

オフィス改革を行う前は自席に設置されたデスクトップPCを使用していたが、業務改善のためノートPCを導入。Garoonを活用し、庁外からでも情報が確認できる環境が確立されている。

 Garoonは、スケジュール、掲示板、スペース、メッセージ、ワークフロー、施設予約、ファイル管理、ポータルなど、業務に必要な機能がそろったグループウェアである。クラウド版とパッケージ版を用意しており、西予市役所ではクラウド版を使用している。西予市役所が日々の業務の中で特に利用しているのが、以下の機能だという。

・スケジュール
職員の予定の共有、打ち合わせの事前情報や資料の共有
・掲示板
災害時の情報共有、職員への通達
・スペース/メッセージ
プロジェクトの情報共有、職員同士のコミュニケーション
・ワークフロー
庁内の申請業務

 スケジュールでは、市長を含めて庁内の職員全員がスケジュールを共有している。空き時間が一覧で確認できるため、会議や打ち合わせの調整が素早く行える。ファイル添付も可能で、事前に会議資料などの情報を共有することでスムーズに会議を進められる。

 掲示板は、災害時の情報共有や職員への通達などに利用している。Garoon導入前は、職員同士の情報共有が不足してしまうこともあったが、掲示板を活用することで、職員全員で最新の災害情報を共有できるようになった。自宅にいながらでも被害状況の確認が行えるため、初動の迅速化につながっているという。

 スペースは、プロジェクトの情報共有、職員同士のコミュニケーションに活用している。電話や対面の対応では、「言った・言わない」や「忘れた」というような問題も起きやすい。「スペース機能を使ってテキストで記録を残すことで、共有したい情報が確実に伝えられて便利です。また、メッセージは、職員同士の連絡に利用しています。メールは外部との連絡、メッセージは庁内と分けることで、メールの誤送信も防げます」(上甲氏)

 庁内の申請業務は紙からワークフローへと切り替えた。従来までは、申請書を紙で印刷して印鑑を押し、持参またはファクスで送信する方法を取っていた。Garoonのワークフローを活用することで、手続きの高速化、担当者の手間も省けている。

コピー枚数約65万枚の削減

 Garoonの導入効果について、上甲氏は「スケジュールのファイル添付を利用した会議資料の共有や、ワークフローを活用した申請などによってペーパーレス化が進んでいます。年間の複合機出力枚数は、2020年と2021年を比較すると、約65万枚の削減に成功しました。職員が朝に出勤し、PCを立ち上げると自動的にGaroonが起動するようになっており、Garoonから1日が始まると言っても過言ではないくらい今では重要な存在です」と話す。

 そして今後の展望について「西予市は、オフィス改革による働く場所の変革と、Garoonの情報共有によるデジタル化の相乗効果によって、昭和な働き方の脱却を進めています。今後も働き方や業務を見直し、新しい手法を開拓しながら、生産性を向上させ、持続可能な自治体の確立を目指していきたいと考えています」と上甲氏は話した。