Amazon Alexaの法人向けサービスが登場
熊本市で地域活性化に向けた実証を開始

2023年12月4日、アマゾンジャパンはパーソナルAIアシスタント「Amazon Alexa」を活用した法人向けソリューション「Alexa Smart Properties」の国内提供を開始することを発表した。高齢者施設、ホテル、マンション、地方自治体の公的サービスなどにおいて、Amazon Alexaによる音声エージェントサービスが利用できるようになる。今回はサービス提供に当たり、アマゾンジャパン本社オフィスで実施された記者説明会の内容をリポートする。記者説明会では、Alexa Smart Propertiesを活用した実証実験に取り組む熊本市の登壇も行われた。

Amazon Alexaの法人向け
新ソリューションに関する記者説明会

2023年12月4日に東京都内のアマゾンジャパン本社オフィスで開かれた「Amazon Alexaの法人向け新ソリューションに関する記者説明会」の様子。新ソリューションについて説明をするAmazon.com Alexa Smart Properties担当ディレクター ブラム・ドゥカブナイ氏。

ニーズに合わせてカスタマイズ可能

「Amazon Alexa」は、2014年11月にリリースされて以来、80を超える国や地域で利用されているAmazonが開発したパーソナルAIアシスタントだ。「Amazon Alexaは“必要なときはユーザーのために働くが、必要でないときは背景に溶け込む”という『アンビエントインテリジェンス』と呼ばれるコンセプトの基、これまで約10年間にわたって家庭市場に向けてテクノロジーを提供してきました。日本では2017年に展開を開始して以来、Amazon Alexaを搭載したデバイスの売り上げが2019年から2022年にかけて3倍に上がるなど成功を収めています」とAmazon.comでAlexa Smart Properties担当ディレクターを務めるブラム・ドゥカブナイ氏は説明する。

 そんなAmazon Alexaを活用した法人向けソリューション「Alexa Smart Properties」が2023年12月4日から国内において提供開始となった。「Alexa Smart Propertiesは、米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの世界7カ国ですでに提供を始めています。高齢者施設やホテルなどで活用されており、利用者の体験価値の向上に貢献しています。日本においてもAlexa Smart Propertiesを通じて、高齢者の方々の暮らしがより快適になり、地域社会とつながりを持てるようにサポートしたり、ホテルのゲストがシームレスにサービスや情報にアクセスするための手助けをしたりすることが可能になります。Alexa Smart Propertiesを日本のビジネスや地方自治体に提供できることをうれしく思います」(ドゥカブナイ氏)

 コンシューマー向けのAmazon Alexaと法人向けのAlexa Smart Propertiesにはどのような違いがあるのだろうか。アマゾンジャパン Alexaインターナショナル事業開発本部 本部長 澤田大輔氏は次のように話す。「『使用するアカウント』『デバイスの設定と管理』『ホーム画面やホームカード』『Alexaスキルの起動』『プライバシーやセキュリティ』などにおいて違いがあります。コンシューマー向けのAmazon Alexaは、各ユーザーの個人アカウントを使って利用します。ユーザー自身でEchoデバイスの設定と管理を行い、プライバシーやセキュリティも自身で管理する必要があります。一方、Alexa Smart Propertiesは、匿名化された法人アカウントを用いて、企業や地方自治体がEchoデバイスの設定と集中管理を行います。Amazon Alexaの個人アカウントを使用しないため、プライバシーやセキュリティの管理を意識する必要はありません。Amazonが提供するAlexa Smart Properties専用のAPIやあらかじめ設定されたEchoデバイスを活用し、個々のビジネスのニーズに即して、Alexaを活用したソリューションやサービスを実装できます」

地域課題の解決を目指す実証

 Alexa Smart Propertiesは、原則として同社が提携するソリューションプロバイダーを通して提供される。日本におけるソリューションプロバイダーは、NTTデータ、TradFit、アクセルラボ、mui Lab、NTTビジネスソリューションズの5社(2023年12月4日時点)だ。説明会では、Alexa Smart Propertiesのユースケースとして、NTTデータと連携するニチイケアパレスの高齢者施設での事例、TradFitと連携する東急ホテルズ&リゾーツのホテルでの事例、アクセルラボと連携するインヴァランスのマンションでの事例、mui Labと連携する大阪ガスの実験集合住宅の事例などが各企業の登壇者から紹介された。そして、NTTビジネスソリューションズと連携し、実証実験を行う地方自治体での取り組みとして登壇したのが熊本市だ。

 熊本市においてAlexa Smart Propertiesを活用した実証実験を行う経緯について、熊本市 都市建設局 都市政策部 市街地整備課 課長 三池史子氏は「人口減少と少子高齢化の進行に伴う担い手不足や地域交通の縮小、シニア世代を中心とした地域コミュニケーションの希薄化などが喫緊の課題となっています。こうした地域課題を解決し、誰もが快適で利便性の高い暮らしを実現できる持続可能な街をつくるために、今回の実証実験に取り組むことになりました」と語る。

QOLの向上や業務負担を軽減

 熊本市での実証実験は、2023年12月20日~2024年3月19日の期間に行われる予定だ。高齢者宅、地域包括支援センター、民生委員の自宅に「Amazon Echo Show 8」を設置して、Amazon Alexaによる対面でのビデオ通話、地域路線バスの運行情報の提供、イベントやレクリエーションなどのお知らせ配信といった各種機能が、高齢者のQOL向上に有効であるかを検証する。地域包括支援センターや民生委員は、悪天候時や人手不足などにより困難であった高齢者宅への訪問をAlexaを通してビデオ通話で行えるため、業務負担の軽減にもつながる。

 また、こうした官民連携の取り組みをほかの分野にも展開し、

・公共交通やAIオンデマンドの利便性の向上
・オンラインによる自治体からのイベント情報の提供といったコミュニティ活動の促進
・避難警報の通知や避難確認などの防災対策

などの実現を目指していくという。「実証実験の結果を基に改善を重ね、高齢者や障害のある方、子育て世帯、外国の方など一人でも多くの人々の快適な生活を実現するための支援と持続可能な地域社会の創造に挑戦し続けていきます」(三池氏)