土木や建築などの各種工事では、その進捗状況を正確に把握し記録するために写真撮影が行われている。一般的には、着工前、基礎工事、躯体工事、仕上げ工事などの各工程において、撮影日や工事名、工種、部位といった情報を記載した「黒板」と一緒に現場を撮影する。撮影される現場の状況は工種によって違いはあるが、黒板は共通して使われる。ワイズの工事写真管理システム「PhotoManager 20 AI」は、そうした黒板に記載された情報をAIで解析することで、膨大な量の工事写真に関連する管理業務を69.9%短縮してくれる。

工事写真の記録に必要な黒板の役割

 映画のメイキングシーンで、撮影の直前に拍子木に小さなボードがついたカチンコと呼ばれる道具を鳴らす様子を目にしたことはあるだろうか。カチンコは映像と音を同期するためにカチンと音を鳴らすのだが、ボードに書かれたシーンやカット番号も記録されるので、編集作業に必須の記録情報となる。映画のカチンコと同じように、工事現場でも現場の様子を正確に記録するために「黒板」を使っている。

 黒板には「工事名」「工種」「測点」という項目を書き込む欄があり、補足事項も自由に記載できる。最近ではスマートフォンのアプリで利用可能な電子黒板もある。アプリを活用すると黒板を工事現場に持ち込まなくても記録撮影はできるが、多くの現場では手書きの黒板を活用している。

 工事によって撮影する写真の枚数は異なるが、一般的には毎日100~200枚の画像が記録される。例えば道路などの土木工事では、道路の幅が分かるように巻き尺を置いて黒板と一緒に撮影する。撮影された工事写真は、工事の進捗を管理する責任者が事務所などに持ち帰ってPCで整理する。この撮影後の工事写真の整理にかかる時間が、これまで管理者の業務負担を大きくしていた。これを解決するのが、ワイズが提供する工事写真管理システム「PhotoManager 20 AI」だ。

建設現場の生産性を向上する技術

 PhotoManager 20 AIは、AIを活用することで工事写真に写っている黒板の内容を自動で解析する。そしてその情報を基に、工事写真を自動的に分類して整理する。また、解析した内容を施工管理値として表や文字データに変換できる。国土交通省が2018年に発表した報道資料によれば、PhotoManager 20 AIを活用することで手作業や目視による仕分け作業に比べて、69.9%の工数削減を実現したという。時間的な目安としては、平均で1.73日ほどかかる手作業が、0.52日で処理できるようになる。こうした実績からPhotoManager 20 AIは、国土交通省「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に選定されている。

 PhotoManager 20 AIはPC上のローカル環境で完結するため、インターネット接続は不要だ。PCとデジタルカメラをUSBケーブルで接続したり、SDカードをPCに挿入したりして、撮影した工事写真をPCに取り込み、PhotoManager 20 AIで処理する。建築現場など通信環境が不安定な場所でも安心して利用できる。さらにクラウドストレージに保存された工事写真も処理可能だ。「Box」や「Microsoft OneDrive」などで工事写真を共有すれば、離れたオフィスからでもPhotoManager 20 AIによる画像ファイルの自動仕分けが行える。

 加えて同社が提供しているスマートフォン・タブレット向けのアプリ「電子小黒板PhotoManager」で撮影した工事写真の取り込みにも対応している。電子小黒板PhotoManagerでは手書きの黒板に加えて、電子小黒板も利用でき、工事写真の撮影にかかる負担を軽減可能だ。

 PhotoManager 20 AIと一般的な画像管理アプリの異なる点としては、画像ファイルを管理するための「工事」を作成する段階で、工種や工法に場所情報を登録することだ。場所情報は、2002年3月まで採用されていた日本独自の「日本測地系」や2011年9月まで採用されていた国際基準に合わせた「日本測地系2000」、東日本大震災による地殻変動を反映した「日本測地系2011」などを管理基準に合わせて選択できる。加えて、施設情報なども入力可能だ。またPhotoManager 20 AIで読み込んだ工事写真は、大分類の工事フォルダーを起点として、出来形管理写真や舗装工、アスファルト舗装工、表層などの工種や種別ごとに階層化されたフォルダーに分類できる。

PhotoManager 20 AIが対応する工事管理は一般土木工事と一般建築工事で、主に以下の基準にのっとっている。

・国土交通省 工事完成図書の電子納品等要領
・国土交通省 土木設計業務等の電子納品要領
・農林水産省 工事完成図書の電子納品要領(案)
・農林水産省 設計業務等の電子納品要領(案)

そして写真管理の基準は以下になる。

・国土交通省 デジタル写真管理情報基準
・農林水産省 電子化写真データの作成要領(案)

 さらに、東・中・西日本高速道路の工事記録写真等撮影要領と日本道路公団の工事記録写真等撮影要領(工事編・施設編)にも対応している。これらの基準や要領に則した工事記録を実践している建設土木関係の事業者であれば、PhotoManager 20 AIを商材として提案できる。

管理者の新しい働き方を支援

 工事現場で進捗状況を確認し画像を管理する立場の管理者は、それほど多くはない。しかし小規模な建設現場などでは工事の監督者が、職人として働いているケースもある。PhotoManager 20 AIは、大手ゼネコンから数名規模の工務店まで、幅広い建設業に対応している。工事と管理を並行して行う管理者にとってPhotoManager 20 AIによる工事画像の自動仕分けは、大きな業務工数の削減につながる。

 PhotoManager 20 AIは、1年間無料で使えるフリー版がある。フリー版でも機能は製品版と同等なので、実際にどのくらい管理工数が削減可能なのかを実感できる。建築や土木関係の顧客に向けて、手軽に導入できるワークスタイル変革の商材として提案することが可能だ。