
Windows 10 EOS後を見据えたビジネスの三本柱
2025年は法人向けPCビジネスが大いに盛り上がる年だ。その大きな要因は言うまでもなく今年10月に迫ったWindows 10のサポート終了(EOS)に伴うPCのリプレース需要だ。
日本マイクロソフトはWindows 10 EOSへの前倒しの対応を呼びかけてきたが、期限まで4カ月に迫った現在も対応が進んでいない企業があり、決して小さくないビジネスチャンスが残っている。
さらにWindows 10 EOS後に向けて、法人向けPCビジネスを再加速させることもできるのだ。
法人向けデバイスビジネスを
三つの柱で伸ばしていく

業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 小澤拓史 氏
日本マイクロソフトでは今年7月より新たな会計年度が始まる。その新たな会計年度の最初の大イベントが今年10月のWindows 10 EOSとなる。国内の法人向けデバイスビジネスの展開について、同社の業務執行役員でデバイスパートナーセールス事業本部の事業本部長を務める小澤拓史氏は三つの柱でビジネスを伸ばしていくと強調する。
その三つの柱について小澤氏は「一つ目の柱は今年10月に迎えるWindows 10 EOSに向けて、取りこぼしのないようにしっかりとWindows 11への移行を実施していただく取り組みを徹底して行っていくことです」と話す。
Windows 10 EOSに関しては日本マイクロソフトがWindows 11への早期移行を呼びかけてきたこともあり、Windows 7 EOSの際のWindows 10への移行のペースと比較して、半年ほど前倒しでWindows 11への移行が進んでいるという成果を得ているという。
ただしこの成果の多くは大企業が占めており、中堅中小企業をはじめ大企業のグループ会社であっても中小規模の企業では現在もWindows 10が使われているケースが見られるという。Windows 10 EOSの期限まで4カ月を切っている現在、Windows 11への移行に伴うPCリプレース需要はピークを超えたと見る向きもあるが、実際は決して小さくはない需要が市場に潜在しているのだ。
現時点でWindows 11への移行計画が進んでいない企業があることについて小澤氏は「ごく一部ですがWindows 10 EOSを知らないというお客さまもいらっしゃいます。一方でWindows 10 EOSを把握しているにもかかわらず、Windows 11への移行に着手していない企業が数多く残っているのも事実です。こうしたお客さまがいらっしゃることを踏まえて、改めてWindows 10 EOSの周知を図るとともに、Windows 10 EOS後のセキュリティリスクを正しく理解していただく取り組みに引き続き力を入れていきます」と説明する。
今回のEOSは前回と異なる
PCをリプレースする必然性
Windows 10 EOSの期限である今年10月14日までに企業や組織で稼働しているWindows 10搭載PCの全てがWindows 11に移行を完了するのは難しい。Windows 7 EOSの際のWindows 10への移行時も、一定数のWindows 7搭載PCがEOS後も稼働を続けて徐々にWindows 10に移行していった。これと同じように今年10月のEOS後も企業や組織で稼働を続けるWindows 10搭載PCが残るものとみられる。しかし今回のEOSは前回のEOSとは事情が大きく異なるという。
小澤氏は「前回のEOSではセキュリティパッチの提供が終了することで、以前のOSを使い続けるとセキュリティリスクが高くなることが最大の問題でした。もちろん今回のEOSでも以前のOSを使い続けることによるセキュリティリスクは、前回のEOS以上に深刻な問題となります。さらに今回のEOSでWindows 11への移行が遅れると、業務効率の低下やコストの増加、競争力の低下などにつながる問題もはらんでいます」と指摘する。
小澤氏が指摘する問題の要因は既存のPCのパフォーマンスに起因する。現在も稼働中のWindows 10搭載PCの中には、Windows 11が要求するハードウェア要件を満たしていないPCも少なくない。そうしたPCを使い続けるとWindows 11に移行できないばかりではなく、アプリケーションの動作やデータ処理が遅く、業務に時間がかかるというデメリットをもたらす。
早々にWindows 11に移行した企業では単なるPCのリプレースにとどまらず、AIの活用を見据えたPCを選ぶことでWindows 11への移行を契機に業務効率の改善やユーザーの生産性向上を図り、成果を得ている事例が多数報告されている。こうした観点が冒頭の三つの柱の二つ目となる。
小澤氏は「業種業態、規模を問わず、今後はビジネスにおいてAIの活用が必須となります。AIの活用に適したPCとして、AI処理専用の半導体であるNPUを搭載した『AI PC』が各PCメーカーから販売されていますが、AI PCの中で現在最も高性能なPCが『Copilot+ PC』です。Windows 10 EOSに伴うPCのリプレース需要にCopilot+ PCを提案するのはもちろんのこと、Windows 10 EOS後もCopilot+ PCを提案することでPCのリプレース需要を喚起できます」と強調する。
Copilot+ PCはAI専用ではない
通常のPCとしてもメリット大
法人向けデバイスビジネスの二つ目の柱となるCopilot+ PCを顧客に提案する際に、留意すべき重要なポイントがある。それはCopilot+ PCおよびAI PCがAI利用専用のPCではないということだ。Copilot+ PCおよびAI PCはいずれもAI処理に優れたPCであることは間違いない。しかしAI専用PCというわけではない。いずれも通常のPCとしても非常に高い性能を備えており、アプリケーションの動作やデータの処理が高速に行われ業務効率や生産性向上に寄与する。
さらにCopilot+ PCはAI PCの中でもより高いレベルの性能要件を満たしており、通常のPCとしても、AI PCとしてもトップレベルのパフォーマンスを発揮する。しかもハードウェアレベルのセキュリティ機能も搭載しており、安全性においてもトップレベルの環境を実現する。
さらにCopilot+ PCはCPUとNPU、そしてGPUのそれぞれの電力効率が高く、三つの半導体を組み合わせて処理に応じて効率良く使い分ける仕組みも搭載されており、高いパフォーマンスと長時間のバッテリーライフも両立できるメリットももたらす。
小澤氏は「少子高齢化が進む日本において人手不足に対処するにはAIを活用する以外選択肢はありません。AIを活用することが生産性向上とコスト削減につながることは周知の通りです。今後はAIをいち早く活用し始めることが競争力の強化につながります。PCのリプレースのサイクルは3年から5年ですが、例えばこれから3年間、AI活用を見据えていない従来のPCを使い続けることが得策でしょうか。AI活用を見据えたPCを今導入して、いつでもAIを活用できる準備を整えておくことがトータルで投資効果が高いのではないでしょうか」と問いかける。
Windows 10 EOS後の法人向けデバイスビジネスを伸ばす三つ目の柱がサービスだ。AI活用を見据えたCopilot+ PCに、その真価を生かすMicrosoft 365でライセンスを追加できるMicrosoft 365 Copilotを活用することで、業務の効率化および仕事の生産性が大幅に改善できる。
またWindows 11への移行時にPCをユーザーにゼロタッチで効率よく展開できるWindows Autopilotを活用する際も、Microsoft 365で提供されるMicrosoft Entra IDやデバイス管理のMicrosoft Intuneが役立つ。
小澤氏は「お客さまがWindows 11へ移行する、あるいはWindows 11搭載PCを導入する際にMicrosoft 365を販売することで、Windows Autopilotの利用がスムーズになるほか、Windows 10 EOS後のデバイスのライフサイクル管理をマネージドサービスで請け負えるなど、サービスの販売に付帯したさまざまなビジネスを伸ばすことができます。またCopilot+ PCでは、Copilot+ PCでしか実現できないAI体験をお客さまに提供することもできます」と三つの柱のビジネスの広がりをアピールする。

