今月のテーマは……
「Google I/O 2025」で発表された
Google Workspace が拓く仕事の未来
2025年5月20〜21日に米国・マウンテンビューで「 Google I/O 2025 」が開催されました。Google I/Oは、Googleが毎年開催している開発者向けのイベントで、Googleの最新技術や新しい製品、サービスのアップデートが発表される場となっています。Google I/O 2025では、AIとイノベーションを核とした「 Google Workspace 」の新たな進化が発表され、私たちの働き方を大きく変革する可能性を示しました。今号では、Google I/O 2025 で発表された「 Google Meet 」に関する内容を中心に紹介していきます。

庄司大助(Dandy) 氏
所属:グーグル・クラウド・ジャパン
パートナーエンジニアリング本部
役職:パートナーエンジニア
経歴:大学卒業後、日系の中堅企業のIT部門で、ITインフラ担当者として入社後、自動車系IT企業にて、ネットワークエンジニアを経験。その後、マイクロソフトにて、10年以上にわたり、オンプレミスからクラウドまで幅広くプリセールス活動に従事。現職に至る。
言語の壁を越えたコミュニケーション
「 Google I/O 2025 」の目玉の一つとなったのが「 Google Meet 」の進化です。Google Meet は単なるWeb会議ツールを超え、より没入感と生産性の高いコラボレーションを実現するプラットフォームへと変貌を遂げていきます。今回発表された Google Meet に関する内容の中で最も注目すべきは、AIを活用した画期的な「リアルタイム音声翻訳」機能の搭載です。
リアルタイム音声翻訳機能は名前の通りほぼリアルタイムで、話者の声、トーン、さらには表情まで一致させながら言語を翻訳します。これによって、異なる言語を話す人々がまるで吹き替え映画を見ているかのように、自然で流暢な会話が可能になります。
今までの Google Meet にも翻訳機能はありましたが、映画の字幕のようにテキスト文字で確認できるだけです。しかし、それが今回「翻訳された内容も音声で伝えられるようになった」ということが大きなポイントです。
これまでの Google Meet の翻訳では、画面下部に字幕が表示されましたが、これに加えて、音声で翻訳された内容も確認できます。声色も本人に近づけて再現しています。Google I/O 2025 で発表された活用例では、デスクを前にしてPCを使った会議シーンでしたが、デバイスの小型化やモバイルデバイスの活用にも今後進展していくことは想像できると思います。
リアルタイム音声翻訳機能は、まずは英語とスペイン語でのベータ版がコンシューマー向けのプランである「 Google AI Pro 」および「 Google AI Ultra 」ユーザー向けに提供を開始し、今後数週間以内にさらに多くの言語が追加される予定です。ビジネスユーザーには、年内に早期アクセスが提供されるとのことです。これにより、グローバルチーム間のコミュニケーションや多言語環境での会議が格段にスムーズになることが期待できます。
ここから先は空想の話になりますが、デバイスが小型化して、ウェアラブル化されてくると、バーチャル会議だけではなく、リアルに対面で会話しながら、イヤホンからは翻訳された相手の声が聞こえてくるということもできそうな気がします。5年、10年後には言語の壁など今ほど大きな課題ではなくなっているかもしれません。そんな期待と可能性を感じさせてくれる今回の Google Meet についての発表でした。


まるで次世代の会議システム
Google Meet に関連するそのほかの先進技術として、3Dビデオ会議システム「 Google Beam 」の発表もありました。これは、2021年に発表した3D動画技術「 Project Starline 」を製品化したものです。
AIを中核に据え、2Dビデオストリームを臨場感あふれる3D体験に変換して表示します。複数のカメラとAIを使ってビデオストリームを結合し、3Dライトフィールドディスプレイにレンダリングすることで、自然で没入感のある会話体験を実現します。
HPなどと協力し、初の Google Beam デバイスが2025年後半に一部の顧客向けに提供される予定です。遠隔地での会議なのに、まるで全員が同じ部屋にいるかのような新たな体験ができるでしょう。
Google I/O 2025 では、「 Google Workspace with Gemini 」の進化についても発表がありました。以下はその一例です。
・「 スマート リプライ 」のパーソナライズ:「 Gmail 」に搭載されている スマート リプライ 機能に新たな進化が加わります。ユーザーに寄り添うパーソナライズされた機能です。ユーザーの過去のメールや「 Google ドライブ 」ファイルを参照し、より文脈に即した、そしてユーザーのトーンやスタイルに合わせた返信文を生成できるようになります。これにより、日々のメール対応の効率が飛躍的に向上します。
・「 Google スライド 」「 Google Vids 」の「背景除去」機能の多言語対応:昨年発表された Google スライド の画像の背景除去機能が、Google Vids でも利用可能になりました。さらに20以上の言語に対応します。これによって、より多くのユーザーが簡単にプロフェッショナルなコンテンツを作成できるようになります。
・「 Google フォーム 」におけるフォーム所有者へのフィードバック機能:Google フォーム に新たな設定が追加され、回答者がフォーム所有者に直接連絡を取れるようになります。これによって、フォームに関する問題報告や質問が容易になり、よりスムーズな連携が実現します。
Geminiのさらなる進化に期待
Google I/O 2025 では、Google Workspace の進化が発表され、AIが仕事の在り方を再定義する「Geminiの時代」の到来を明確に示しました。特に注目すべきは、Google Meet のリアルタイム音声翻訳や Google Beam といった技術です。これらは場所や言語の壁を越え、より自然で効果的なコラボレーションを可能にする未来を切り拓きます。
Google が得意とするマルチモーダルなAI機能の進化が、私たちの日常業務をどのように効率化してくれるのか。さらには、どのような新しい働き方を生み出すのか。ぜひ、今後の展開にご注目ください。
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