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Chrome OSの大型アップデート「M89」の強化ポイントを探る

Chrome OSの大型アップデート「M89」の強化ポイントを探る

2021年10月20日更新

Chromebook誕生10周年を記念した
Chrome OSの大型アップデート「M89」

Chromebookは、2021年の3月で誕生から10周年を迎えた。それを記念して、GoogleはChrome OSの大型アップデートを行った。「M89」と呼ばれるChrome OSの10周年記念バージョンは、通常の定期アップデートよりも多くの機能強化が図られている。その強化ポイントを探っていくと、Chromebookのビジネス利用の広がりも見えてくる。M89から最新となるM92までの流れを追っていこう。

三つの領域でアップデート

 Chromebookのアップデートは、厳密には三つの領域に分かれる。M89に関する更新内容について、Googleから得られた回答は、以下のようになる(一部抜粋)。

Chrome OS
・自動更新を行わない時間帯の適用範囲を拡大
・QRコードのスキャンをサポート
・スイッチ アクセスの設定を改善
・スクリーン キャプチャ機能を改善
・Wi-Fiの同期を改善
・MultiPaste: 視覚的なクリップボード履歴
・トート: 最近使ったファイルに素早くアクセス
・メディアコントロールを改善
・アプリアイコンを刷新
・失読症のユーザーをサポートする「選択して読み上げ」機能を強化

Chromeブラウザー
・開かれているタブの検索で情報を素早く探す
・ユーザーまたはアカウントを分離するためにプロファイルを改善
・自己ホスト型の拡張機能とアプリのバージョン固定
・デフォルトで HTTPS サイトにアクセス

Chrome管理コンソール
・アプリと拡張機能の使用状況レポート
・Reports API
・追加されたポリシー

 つまり、デバイスを制御するためのコアとなるChrome OSに、そのOS上で実行されるChromeブラウザーと、クラウド経由でChromebookを管理するChrome管理コンソールという三つの領域で、それぞれアップデートが行われている。これらの項目を見ると、どこが10周年なのかと思われるが、この三つの領域から外れた大型アップデートが、「スマートフォン ハブ」と呼ばれるAndroidスマートフォンとの連携になる。

 スマートフォン ハブは、Chrome OSで使用しているGoogleアカウントでログインしているAndroidスマートフォンとChromebookを同期させる新機能。同期後は、ChromebookからAndroidスマートフォンの通信状況やバッテリー残量を確認できる。また、スマートフォンに届いたメッセージの確認や返信もChromebookから操作できるようになる。iPhoneとMacBookの連携のような機能だが、実際に使ってみるととても便利だ。また、「Nearby Share」(ニアバイシェア)というAirDropのAndroid版にも対応した。Wi-FiやBlutoothを経由して、AndroidデバイスとChromebookでファイルが共有できる。

自動更新で常に最新状態を維持

 2021年3月のM89から、原稿を執筆している9月までに、Chrome OS、Chromeブラウザー、Chrome管理コンソールは3回のバージョンアップを行っている。現在は、7月20日から配布が始まった「M92」が最新となる。それは、Chromebookに限ったことではなく、Chromeブラウザー全般に共通した対応でもある。WindowsやmacOS版のChromeブラウザーも、ほぼ同じタイミングで更新されており、現在はM92が最新となっている。ただ、この「更新」という作業が、Chromebook以外では意外な落とし穴になっている。

 WindowsやmacOS版のChromeブラウザーは、OSと連動していない。そのため、更新は手動で確認するか、Chromeブラウザーを実行している間に、自動更新が行われるのを待たなければならない。結果として、WindowsやmacOS版のChromeブラウザーは、更新が後手に回ることがある。

 それに対して、ChromebookはOSとブラウザーが一体化しているので、ネットワークに接続されている間に、バックグラウンドで自動的に更新作業が行われる。そして、必要があれば「再起動」を求めてくる。この「再起動」も、Chromebookは苦にならないほど早い。正直、HDDを搭載したPCでWindowsやmacOSを使っていると、更新のたびに発生する再起動で、作業が大幅に中断してしまう。それに対して、Chromebookの起動は高速なので、セキュリティ対策のための更新も快適に実行できるのだ。

ランサムウェアからの被害を防ぐ

 海外を中心にChromebookのビジネス利用が加速している背景には、テレワークで広がったセキュリティ被害に対する安全性の確保がある。

 ランサムウェアは、身代金を要求するために、侵入した端末やネットワーク内のサーバーに保管されているファイルを暗号化しようとする。しかし、Chrome OSは読み取り専用のOSとして設計されており、Chromebookに保存したファイルは、クラウドストレージであるGoogleドライブにある。このGoogleドライブは、Googleによって強固に守られているので、ランサムウェアの攻撃に遭うリスクは低い。

 そもそも、Chromebookではサンドボックス化により、各プロセスが分離されているので、悪意のあるアプリケーションが実行されても、攻撃の範囲が限定される。加えて、IT管理者はGoogle管理コンソールからChromebookのセキュリティを厳格に管理できる。

 常にOSを最新に更新するセキュリティ対策と、IT管理者がクラウドから全てのデバイスを統合的に管理できる安全性により、テレワーク環境でも、安全に業務が行える。Chromebookは、ビジネスの最前線で実力を発揮できるデバイスなのだ。

田中 亘(Wataru Tanaka)
東京生まれ。CM制作、PC販売、ソフト開発&サポートを経て独立。クラウドからスマートデバイス、ゲームからエンタープライズ系ITまで、広範囲に執筆。代表著書:『できる Windows 95』、『できる Word』全シリーズ、『できる Word& Excel 2010』など。

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