AIエージェントがPCの使い方を変革する
生成AIによってPCと対話するという新しい使い方が生まれた。
さらにAIエージェントによって、PCの使い方が大きく変わろうとしている。
2025年11月に米国サンフランシスコで開催された「Microsoft Ignite 2025」では、現在のコンピューティングを変革する数多くのテクノロジーが紹介された。
今回はそれらのテクノロジーの中からAIエージェントが引き起こすコンピューティングの変革に着目し、その展望を開いていく。
AIエージェントの現在地は
フェーズ2に向かいつつある

教えてくれる人
日本マイクロソフト
デバイスパートナー
セールス事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows
戦略部長
仲西和彦 氏
MOEKO●今日は2026年最初にふさわしい話題として、これからのコンピューティングの進歩について見通しを教えてください。
仲西さん●昨年末に開催されたマイクロソフトの年次テクノロジーカンファレンス「Microsoft Ignite 2025」では400以上ものセッションやデモが行われ、たくさんの情報が発信されましたが、注目したいのはAIエージェントの進歩が引き起こす変革です。
結論から話してしまうと、AIエージェントが普及することで、あらゆる業務でのPCの使い方が、これまでと全く違うスタイルに変わります。
AIエージェントの役割は進化していくのですが、Microsoft Ignite 2025ではその過程において、対話で指示を仰ぐ生成AIの利用をフェーズ1、AIエージェントをデジタルワーカーとしてユーザーが監督する使い方をフェーズ2と位置付けています。
海外の先進国ではフェーズ2を実践している企業が増えており、さらにこれから説明するフェーズ3に進んでいる企業も出てきています。日本では一部の先進的な企業がフェーズ2を実践している段階だと思われます。
MOEKO●フェーズ2でもすごいのに、フェーズ3になるとどんな世界が実現されるのか想像もつきません。
仲西さん●フェーズ3ではAIエージェントが特定の一続きの業務を遂行してくれるだけではなく、その仕事に関わる一連のワークフローやビジネスプロセス全体を、ほかのユーザーやほかのAIエージェントと連携しながら実行してくれるようになります。
以前ここで説明した「エージェンティックAI」を思い出してください。エージェンティックAIは異なる機能を持った複数のAIエージェントがクラウド上で連携し、一つのチームのように複雑な作業を自律的に行うことでユーザーの目的にふさわしい結果を出力します。この概念をマイクロソフトは「エージェンティックWeb」と言っていますが、これがフェーズ3の世界です。
例えば商品企画チームがAIエージェントを利用して市場ニーズなどのデータから新商品のコンセプトを組み立てます。その業務に商品開発チームのAIエージェントが連携し、具体的な商品化を進めていきます。同時に生産や流通、プロモーション、そして経営管理部門など、ビジネスプロセスに関わるそれぞれのAIエージェントが連携して全社規模で業務連携を自動化、円滑化するとともに、ユーザーの目的に対して最善の結果を自動的に出力してくれるというイメージです。
PCのアプリケーションは
AIエージェントに置き換わる

教えてもらう人
MOEKOさん
ダイワボウ情報システム(DIS)に勤める入社2年目の営業職。顧客の課題に親身になって向き合う姿勢が評価されている伸び盛りの若手社員。次々と出てくる新しいテクノロジーの理解に苦戦している。
MOEKO●AIエージェントが使えるようになったら、一日中AIエージェントに頼りっぱなしになりそうです。
仲西さん●そうなるとPCの使い方が変わると思いませんか。
MOEKO●確かにそう思います。今はPCでアプリケーションを使って作業をしていますが、AIエージェントが使えるようになったらアプリケーションを立ち上げなくてもAIエージェントがユーザーに代わって操作してくれますよね。
仲西さん●その通りです。AIエージェントが普及するとユーザーがPC上でアプリケーションを使うのではなく、ユーザーがAIエージェントへの指示を通じて目的を達成するためにPCを使うようになります。アプリケーションの位置付けが変わっていくと想像できます。同時にユーザーは複数のAIエージェントを同時並行的に走らせながら業務を進める姿も想像できますね。
すでにAIエージェント時代に向けてWindows 11に「Agents on Windows taskbar」という新機能がプレビュー公開されています。この画面(別掲画面を参照)ではWindows 11の画面下部にあるタスクバーの右側四つにAIエージェントのアイコンが表示されています。これまでは起動中のアプリケーションが並んでいたタスクバーに、同じような位置付けで稼働中のAIエージェントが表示されて、ユーザーはマルチタスクでアプリケーションを切り替える要領で複数のAIエージェントを利用できるようになるでしょう。
MOEKO●日々の仕事を振り返ると、一つの目的を達成するのにアプリケーションを立ち上げてメニューから機能を探し出して編集したり加工したりして保存して、さらに別のアプリケーションで別の作業をするということを繰り返していますね。これがAIエージェントなら1回の操作で目的が達成できるというわけですね。
仲西さん●1回の操作は言い過ぎですが、最小限の操作で目的が達成され、これまで費やしていた時間が大幅に短縮されます。もっと分かりやすく説明すると、例えば画面キャプチャーするとき、アプリケーションを立ち上げてキャプチャーして保存先やファイル名、ファイル形式を指定して保存しますよね。画面をキャプチャーするというだけで、これだけの手間と時間がかかります。
このような“ちょっとした”作業がワンアクションでできることで削減可能な時間や手数は1日、1週間、1カ月、1年、さらに人数というふうに積み重ねていくと、非常に大きな効率化が図れます。
Copilot+ PCによって
任せられる仕事が増える
仲西さん●AIエージェントの浸透によってPCの役割がさらに重要になります。AI機能や生成AI、そしてAIエージェントはNPUを搭載しない非AI PCでも、Windows 11を搭載するPCであればクラウド上で利用可能です。しかしAIエージェントの恩恵を最大限に受けるには、AIエージェントをローカルでも利用できるCopilot+ PCがベストです。
AIエージェントをローカルで利用するとクラウドに対して通信や処理待ちの遅延が減らせ、通信コストも抑えられます。また社外に出せない重要なデータもローカルなら安心して利用できます。Copilot+ PCならばクラウドとローカルのAIエージェントを使い分けたり、連携させたりしてハイブリッドで柔軟に利用できるため、AIエージェントに任せられる仕事が増え、競争力の強化や人材不足への対応で有利になります。
MOEKO●Copilot+ PCはこれからのAIエージェント時代にベストなPCということですね。
仲西さん●これからではなく、今すぐにCopilot+ PCを導入するべきです。生成AIもあっという間に普及しました。AIエージェントの普及も想像以上に速いでしょう。テクノロジーの革新が激しい現在、AIエージェントが使えるようになってから環境を整えるという対応では競合に置き去りにされてしまいます。
ChatGPTが登場したのが2022年末ですよね。今から約3年前です。3年でここまで普及したのですから、今から3年後には現在のインターネットのように使うことが当たり前になっているでしょう。
一方で一般的な法人PCの買い替えサイクルは3年から5年です。ということは今から買うPCは「3年後の当たり前」をこなせるPCを買っておく必要があると思います。
Copilot+ PCには最新のプロセッサーなど常に最新テクノロジーが満載されるため、AI以外の処理性能も高く、セキュリティやバッテリー駆動時間においてもビジネス利用に大きなメリットがあります。
Copilot+ PCへの投資で得られるリターンは非AI PCや通常のAI PCとは比較にならないほど大きく、その点を加味するとトータルコストパフォーマンスは圧倒的に高いと言えます。
まだAIを活用していなくても、これからのAIエージェント時代に向けてWindows 11搭載AI PCはベター、Copilot+ PCがベストな選択であり、最もリターンの大きな投資となります。
MOEKO●ありがとうございました。早くAIエージェントに仕事を任せられるようになってほしいです。

タスクバーの右側四つのアイコンがAIエージェントだ。


